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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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秘密の会談!

「さてと……これはどうするかな……」


 フィオスが時を操る力を持つ信者を獲得したことはひとまず置いておく。

 セクメルはフィオス様にお仕えいたしますといって、生活拠点を移すために元の生活拠点の方に行ってしまった。


 自分の呪いを解くために王城から聖杯を盗み出そうとするほどの行動力はダテじゃない。

 今のところの問題は聖杯である。


 王城に置いてあったものは偽物だった。

 そしてジケの手元にあるものが聖杯である確率が非常に高い。


 王城が保有している聖杯でなくとも、神がもたらす代償の呪いを解いてしまうほどの力を持ったものであることは間違いない。

 だが今回においては、ジケの持っている聖杯が実は王様のものだったのではないかと疑いもある。


「パルンサン……なんてことしてくれたんだ……」


 確かに王城の宝物庫から盗んだのだとしたら、かなりのお宝である。

 パルンサンの宝物庫には色々なものがあって、どれも貴重な品で盗むのも大変なものばかりだった。


 聖杯だけは経緯が分かっていなかったが、王城から盗んだとしたらあそこに保管していたのも納得である。


「返すべき……だよな? そもそもこんなもの置いとけないよ」


 仮に聖杯なら国に帰すべきである。

 そうでなくともそんな貴重なもの適当に放置しておくわけにもいかない。


「とりあえず話聞いてみようかな……」


 いきなり聖杯ですと持ち込むわけにもいかない。

 今はセクメルが聖杯を盗んだせいで王城内もゴタゴタとしているらしいし、ここは慎重に話を進めねばならないとジケは思った。


 ーーーーー


「急に会いたいと連絡してすいません」


 こんな時、持つべきものはツテである。

 流石に王様に会わせてくれなんて言えるほどのツテはないが、国のお偉いさんに繋がる縁は持っている。


 ジケが今回連絡を取ったのは宰相であるシードン。

 王様に会えるほどのツテはないけど、宰相だって簡単に会えるような人ではない。


 ほぼほぼ王様に会うぐらいのレベルの人である。

 武闘大会に、聖杯窃盗事件と宰相も忙しいだろうに、ジケが連絡を取ると予定を空けてくれた。


「いえ、他でもないあなたですからね」


 またしてもレストランを貸し切りでシードンと会うことになった。

 他の人ならいざ知らず、ジケが会いたいというのなら国に関わることな可能性があるとシードンは考えていた。


 そうでなくともジケが裏で何をしているのか宰相たるシードンは知っている。

 本人が望まないのでそうしていないというだけで、本来ならば国を挙げてジケのことを保護していてもおかしくないレベルなのだ。


 王様もアユインもジケのことは気に入っているし、何かがあれば手を貸してやれと特別に言いつけられてもいた。

 シードンとしてもジケに声をかけられると無視できないのだ。


「それで今日は何のご用で?」


 ジケの話は重要なものである可能性がある。

 なので連絡をもらった時点ではあまり細かくは聞かなかった。


「実は……少し聞きにくいことがあって」


「聞きにくいことですか? 私の答えられる範囲でよければお答えしますので、ご遠慮なく聞いてください」


 困ったような顔をするジケに対して、シードンは柔らかな笑みを浮かべる。


「じゃあ……国で保管している聖杯について聞きたいんです」


「聖杯……についてですか?」


 想像もしていなかった言葉にシードンの顔が凍りつく。

 盗まれた後にこんなふうに聖杯について聞かれたらそりゃ、動揺するだろうなとジケも思う。


「……聖杯の何についてお聞きになられたいのですか?」


 流石のシードンは一瞬で動揺を隠してみせる。


「王城にある聖杯って……偽物、じゃないですよね……?」


 回りくどく聞いても話がややこしくなってしまう。

 ジケはストレートに用件をぶつける。


 再びシードンの表情が凍りつく。


「それは……その……どうして……」


 流石に答えられない。

 しかしジケがこんなことを聞くということはある程度何かを知っているのかもしれない。


 シードンの頭の中で考えが巡る。

 ジケがどこまで、何を知っているのかシードンでも分からない。


 ただシードンとしても簡単に聖杯が偽物だと認めるわけにはいかないのだ。


「もし仮に……本物の聖杯があると言ったら?」


「なんですと?」


 シードンの目が驚きに見開かれる。


「その前に、王城の聖杯が偽物かどうか聞かせてもらえますか?」


「…………ううむ」


 シードンは眉間にシワを寄せる。

 シワの深さがシードンの悩みの深さを表しているようだ。


「申し訳ありません。今この場で判断してお答えすることはできません」


 シードンは深いため息と共に答えた。

 たとえ宰相といえど、聖杯について軽々しく言及はできない。


 言ってしまえば国家機密にも匹敵する内容なのである。


「非常に興味深い内容ではありますが、今日のところはこのお話持ち帰らせていただいても?」


「もちろんです」


 実際はあんまり聖杯を家に置いておきたくないのでさっさと話しちゃいたいところではある。

 でも相手の事情もあるのでそこらへんは仕方ない。


「ご連絡いただいた時点で簡単な話ではないと思っていましたが……毎度私の想像を超えてきますね」


 シードンは軽くため息をついた。

 気軽に話せるようにとレストランを貸し切ったが、これなら王城に招待すれば良かったかもしれないと思った。


「今日は私が持ちますので好きに食べてください」


「ありがとうございます」


「……それにしても色々なことをやっているようですね。それだけ活動的にできる秘訣をお聞きしても?」


「別に何か秘訣なんて……俺としては巻き込まれてるだけですよ」


 ジケは困ったように笑う。

 シードンからしてみれば、ジケは四六時中監視したとしても何をしているの把握しきれないような相手である。


 ジケとしても、のんびり過ごしたいのになと思ってはいる。

 とりあえず聖杯については話を進めて処理してしまおうと考えているのだった。

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