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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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お祭りの始まり2

「まあチャンスが一番大きいのが今のうち……だもんな」


 時間が経てば経つほど弱い人の札は奪われていくだろう。

 逆を言えば弱い人を狙うなら今のうち。


 早めに札だけサッと集めれば、実力的に劣っていても予選を勝ち抜くことはできるだろう。

 そう簡単に行くかはまた別としてであるが、これから大変そうだなとジケは思った。


「こんな高そうなとこ……いいのか?」


「もちろん」


 戦いが始まる前にとジケが取った宿は、かなりお高めな宿だった。

 人が多いので宿も意外と埋まっている。


 さっさと宿を見つけなきゃ面倒なことになる。

 こんな時に真っ先にお高い宿の部屋を取る人は少数なので空いているだろうと思ったし、何よりお高い宿は部屋に鍵がついているのだ。


 泊まりもしない人がうろつけば警戒もしてくれるし、防犯的な側面でもお高い宿というのはいいのである。


「おっ?」


 ドンドンと音がしてジケたちは宿の窓から空を見上げる。

 火の魔法が打ち上がって破裂している。


 なかなか面白い光景だが、これは札の奪い合いが解禁されたという合図なのであった。


「おー、やってんな……」


 大きな通りを望む宿なので、周りの様子もよく見える。

 通りでは早速殴り合いの喧嘩のようなものが始まっている。


 一カ所だけじゃなくて複数争いが発生していて、始まったなという感じだった。

 単純な物見客もいるが、漁夫の利を狙う人もいて外はかなり混沌としている。


 殴り合う人、剣を抜いて戦う人、逃げる人、逃げる人を追いかける人、追いかける人をさらに追いかける人、殺し合いに発展しないように監視する兵士など様々だ。

 中には参加者だろう子供の姿もある。


「あっ、盗んだな」


 宿の窓、つまりは上から見下ろすようにしていると全体がよく見える。

 対等な殴り合いをしている男たちを見学している参加者らしき男に、フードを目深に被った人がぶつかった。


 その瞬間、サッと手を伸ばして相手の札を抜き取った。

 こうして遠くからじゃないと見逃しちゃうような早技である。


「ようやく気づいたか……」


 殴り合いを制した男に見学していた男が襲いかかる。

 もうすでにフラフラになっていた男はあっさりとやられて、奪い取った札も合わせて二枚を取られた。


 これで三枚だとはところを確認して驚く。

 あるはずの自分の札がないのだ。


 自分の札がすられたのだと気づいた時には、もうぶつかってきた男は近くにはいないのだった。

 男は悔しそうに地団駄を踏んでいる。


 だが悪いのは油断した男の方だ。

 それに面白いのは自分の札を無くしたからと終わりというわけでもないことである。


 自分の札も一枚に過ぎず、自分の札も合わせて三枚あればいいというだけで、他人の札三枚でも構わない。

 要するに一枚奪われたのだから一枚奪えばいいのである。


 いろんな札がいろんな人の手を渡って流れるように移動していく。

 ついでに空を見上げるとやたらと鳥が飛んでいる。


 これは町中を監視する魔獣だ。

 サードアイのような魔法を使って町の状況を常に把握している。


「んじゃ、私は行こうと思うけどジケたちはどうする?」


「こんな中行くのか?」


 ニヤッと笑ったリアーネは剣を手に取る。

 外はひどい状況なのに出ようとするリアーネに、ライナスは信じられないようなものを見る目を向けた。


「こんな状況だから行くんだよ。面白そうだろ?」


 混沌としている状況こそ面白いのだとリアーネは言う。


「女だからって舐めてかかってくる相手、返り討ちにしてやるよ」


 お祭りのような状況は楽しむべきだ。

 今ならリアーネにかかってくる相手もいるだろうとリアーネは部屋を出ていった。


「はぁ……リアーネさん、すっげぇなぁ」


 ワイルドなお姉さんだとライナスは感心してしまう。


「ジケ、俺たちはどうする?」


「うーん、ライナスはどうしたい?」


「俺か? ……難しいとこだな」


 意外だなとジケは思った。

 ライナスならリアーネと一緒ですぐに飛び出していくと思ったのだけど、思いの外慎重である。


「誰でも彼でも戦えばいいってわけでもないからな」


 誰でもいいから戦って札を奪えばいいということでもない。

 どうせ戦うなら強い奴と戦って札を勝ち取った方がいいとライナスは考えていた。


 リアーネとはまたちょっと違った方向でバトルを楽しみたい派閥なのであった。


「あとさ」


「ん?」


「隠してあるやつ、探してみたくね?」


 札は奪い合うだけじゃない。

 町中にも隠してある。


 どうせならそれを探し出すのも面白そうである。


「確かにそれも面白そうだな」


「あとはさ……何だっけ? 一生の親友と出会った場所……なんてのもあるだろ?」


「ああ、そんなのあったな」


「戦わずして札を集める……そんなのもアリかな」


「それも楽しそうだな」


 どうせなら最大限楽しむ。

 みんな今は戦うことに集中しているが、どこかにあるはずの札を探してみるのもいいだろう。


「……なんか、こう話してたら探してみたくなったな」


「じゃあ、行っちゃうか? 俺とお前がいればまず負けることもないしな」


「札はどうする? 宿に置いてくこともできるぞ」


 安全を考えると札を宿のどこかに隠して置いておくということもできる。

 持っていくよりはリスクが低いかもしれない。


「誰に戦い挑まれて札を置いてきたからありませんなんてカッコ悪いだろ? 持ってくよ」


「……それでこそライナスだな」


 安全なんかよりも大切なことがある。

 ジケとライナスは札を持って宿の部屋を出た。

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― 新着の感想 ―
一生の親友か。 普通に考えると魔獣との契約なんだろうけど、国を挙げてやった契約だから、街中にどれくらい該当場所あるんだろうか?
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