第七話……ババヴの集落
……ピピピ
朝、私は目覚まし時計で起きる。
会社が休みなのだが、たまにリモートワークで会議がはいる。
あいにく今日は、そのリモートワークの日であった。
……。
「失礼します」
会議が終わり、背伸びをする。
コンビニで食料を買い出し、パソコンの電源を入れた。
……すると、電子メールが入っており、開いて読むと、ゲーム『黒い王城』は正式サービスを打ち切るという知らせだった。
……えぇぇえ!?
青天の霹靂だ。
折角VRカプセルも買ったのに……。
新しいアップデートがされないだけで、ゲーム世界に入ることは出来ると書いてあったが、かなりの衝撃を受けたのも事実だった。
ゲームの世界に入ると、ユーザーの接続数がめちゃくちゃ減っていた。
無理もない話だ……。
ひょっとして、『real』チャンネルも無くなるのだろうか?
折角面白くなってきたというのに……。
私は暗い気持ちで『real』チャンネルに接続した。
VRカプセルに入り、中から赤いボタンを押すと、意識はすぐにゲームの中へと飛び去ったのだった。
☆★☆★☆
「出でよ、魔界の徒! 我を助け給え!」
夜半、ジェスターの街の郊外で巻物を広げ、ダークロードのガウを召喚する。
気の抜けた鈍い音がしたあと、小さな魔物が現れた。
「……ガウ!?」
本物は6mに達しようとする巨人族のはずだが、現れたのは僅か全高60cmの小さな魔物。
この世界に来ると、全てのモノがスケールダウンするらしい。
「ガウガウ……、オ前ガ、我チカラガ欲シイノカ?」
「は、はい!」
私はあわてて返事をする。
……これは魔力に関しても期待外れかな?
筋肉質だが愛らしい姿の小さな魔物に、金貨3枚も払ったことに後悔の念が浮かぶ……。
しかしながら、私は契約を済まし、この二体目の召喚獣を手にしたのだった。
この魔物の能力は、憑依してもらうことによって、術者の身体能力を上げることのはずであった。
以前のチャンネルだと、凄まじい力を手にできた能力であったのだが……。
……あまり期待しないでおこう。
☆★☆★☆
――翌朝。
「おい、ロバート!」
「なんですか? ケインズさん」
私は宿の自室でケインズに呼ばれる。
「実はな、領主のジェスター男爵様からの要請でな、近くの種落を襲った賊を退治して欲しいのだそうな……。報酬は銀貨200枚だ!」
「ご領主様の? 相手は山賊ですか?」
「それがな、少数の賊としか分からない。もし相手の人数が多ければ、増援を呼んで欲しいとのことだ!」
「へぇ……」
私は同席したアインとハティの顔を見渡す。
二人ともやる気に満ちた顔をしていた。
ここは断るのは悪いだろう……。
「やりましょう!」
「そうか、そうか。正直言って、怪しげな術を使える人間が加勢してくれて嬉しいよ!」
怪しげな術とは、きっとタヌキのポコの召喚だろう。
ちなみに銀貨一枚は、現代価値になおして千円くらいであった。
私達、無頼の傭兵には悪い額では無かった。
「じゃあ、皆、用意をしてくれ! 今晩にも出発するぞ!」
「はい!」
私達、ケインズ一行4名は、村を襲った賊を退治しに、夜分にジェスターの街を出たのだった。
☆★☆★☆
――翌朝。
私達はババヴの集落に着いた。
「ひでえな……」
集落は既に焼き討ちされ、6軒の家は全て焼け落ち、住人はどこかへ逃げ去った後だった……。
納屋も略奪の痕が残り、家畜も根こそぎ奪われていた。。
「ロバート、その……、怪しげな術で盗賊の逃げた方向はわかんねぇか?」
「ええ、なんとかなると思いますよ!」
私は木陰で、魔法陣が描かれた巻物を広げ、召喚の言葉を唱えた。
「出でよ、魔界の徒! 我を助け給え!」
鈍い音と共に煙が上がり、煙の中から小さなタヌキが姿を現す。
「ポコ!?」
「ポコ、この集落を襲った賊を探してくれ!」
「ポコ!」
ケインズ達は不可思議なものを見ている様な面持ちだが、ポコと私はすぐに仕事にとりかかった。
昼過ぎには賊の逃げ出した方向が判明し、夕方にはアジトの割り出しに成功した。
「ありがとう、ポコ! エサをあげるね!」
「ぽこ~♪」
私はポコにヤモリの黒焼きを与える。
ポコは何故かカエルや爬虫類が大好きだったのだ……。
賊のアジトは小川の畔。
山に挟まれた渓谷で、自然の要害といった趣であった。
「おい、ロバート。どうしたもんかな?」
「夜が更けてから襲ったら、面白いかも知れませんね!」
「それはそうだな! まさか自分たちが夜にねぐらを襲われるとは思うまい!」
「……だね!」
ケインズのみならず、アインもハティも笑顔で頷いた。
私達は既に沈みかけた太陽を背に休息し、夜が更けるのを食事をしながらじっと待ったのであった……。
……ホウホウ!
フクロウの眼が輝き、蝙蝠が飛び交う。
陽はどっぷりと暮れ、頭上にあるのは、雲がかった三日月のみだった。
「みんな、行くぞ!」
「おう!」
私達はケインズを先頭に、小川の脇を遡る。
賊のアジトには小さな焚火が見え、逆光で見張りの姿もはっきりと見える。
それは、まるで襲ってくださいと言わんばかりの状況であった。
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