第三話……盗賊を襲撃
「出でよ、魔界の徒! 我を助け給え!」
元のチャンネルでは、私の職業はそこそこハイレベルな召喚術師。
巨大な魔物であろうとも使役していた。
……だが、この世界では、小さなタヌキを一匹召喚するだけで精一杯だった。
「ぽこ!」
「ほらほら、餌やるからいうこと聞いてね」
召喚した小さなタヌキを撫でて、言うことを聞いてもらう。
彼の名前はポコ。
やってもらうのは、まずは隣村までの夜の道案内だった。
「はいよぉ!」
借りてきた馬に乗り、隣村まで駆ける。
用件は、盗賊退治の助勢。
やはり私一人では、どうにもならないとの判断だった。
☆★☆★☆
「いいぞ、やってやる!」
「腕が鳴るぜ!」
意外なことに、隣村での反応は上々。
村長や村役をはじめ、多くの若者が加勢してくれることになった。
更に私は、もう一か所ほど村を回り、さらなる加勢を頼んだ。
そうこうして集めた人数は30名。
相手の盗賊は10名と聞いていたので、こちらの戦意は高かった。
「こっちです!」
召喚したタヌキのポコの先導に続き、私が皆を案内する。
山の細道を駆け、急いで林を抜けた。
今まで判らなかった盗賊のアジトが、召喚獣であるポコによってあっさりと暴かれたのだ。
村人たちは今までの復讐とばかり、荒々しい息遣いを纏っていた。
……ついに、盗賊たちのアジトを眼前に捉えた。
「野郎ども、いいか!?」
「「「おうよ!」」」
隣村の村長の掛け声に、若い衆が応じる。
彼等も普段、盗賊には迷惑をこうむっていたのだ。
手にはビッチフォークや粗末な槍といった感じだったが、生活を守る彼等の士気は高かった。
――朝焼けの中。
我々は盗賊のアジトを静かに急襲。
眠っているだろう住み家に、次々と押し入った。
「ぐはっ」
まずは、商売女とお楽しみの最中の族長に、村人たちの槍が突き立てられた。
族長は血を吐き、うめき声をあげて息絶える。
女はどことなく逃げ去った。
「続け! かかれ!」
「おうよ!」
さらに村人たちは、盗賊たちのねぐらに次々に放火。
寝ぼけた様子で出てきた賊には、容赦なく村人たちの槍が突き刺さった。
「参った、降参だ!」
残った盗賊たちは逃げることを諦めて降伏。
村人たちは賊の衣服を取り上げ、裸にして縛り上げた。
「あはは、いい気味だ!」
「ざまあ見やがれ!」
「……くそう」
それは、普段の関係が逆さまになる構図だった。
盗賊たちが農民たちに、その自尊心を次々に踏みにじられる。
しかし、農民たちも普段、野盗除けに自警団を組織していたのだ。
アジトさえバレれば、農民たちが数で盗賊たちを上回るのは必然の理であった。
……本来、領主様がなんとかしてほしい案件であったのだが。
「毎度ありがとうございます!」
翌日、街から来た奴隷商人に、盗賊たちの身柄を売り払う。
もし、少しでも遅ければ、こちら側の村人が売り払われる側だったであろう。
「ロバートさん有難うございますじゃ」
「いえいえ」
捕まっていた村人は助け出され、私は村長に御礼を言われた。
本当は物語みたいにカッコよく、盗賊たちの巣に単騎で乗り込みたかったが、少なくともそれは、今のままでは叶いそうもなかった。
☆★☆★☆
――翌日。
元からあるゲームチャンネルにて。
「ロバート、お前最近レベル上げ熱心だな!」
「……ああ、うん。強くなりたくてね……」
私に話しかけてくるのは、パーティーリーダーの聖騎士のハルノブ。
いつもみんなの壁役をやってくれる頼りがいのある存在だった。
今日はハルノブに付き合って貰い、レベル上げを行う予定だった。
ゲーム内時間にて、半日ほどモンスターを倒した後。
「今日もありがとう! またね!」
「おう、またな!」
レベル上げを手伝ってくれたハルノブに御礼を言い、私はゲームからログアウトする。
まぁ、あちら側へ行けばレベルアップ分は1/10になるのだ。
沢山上げておいて損はなかった。
私はVRカプセルから出た後、コンビニに行きカップ麺を買った。
「いつか英雄と呼ばれたいなぁ……」
私はコンビニの帰り道に、そんな独り言を言う怪しい存在であった。
しかし現実的に、ゲームの世界でさえ、それはなかなかに難しい事であったのだ。
☆★☆★☆
私はrealチャンネルの方で、街から来た商人から武器と防具を揃えていた。
村人救出の際、村長からいくらかの御礼を貰っていたお金を代金に充てた。
「この鎧などはいかがでしょう?」
「少し重いかな?」
「う~ん、……そうですか?」
私は鎖帷子を勧める商人に根負けして、購入を決意。
他に粗末な盾と剣、さらには荷馬を一頭購入したのだった。
「ありがとうございます」
商人はホクホク顔で帰っていった。
買った鎖帷子は、実は中古品であった。
なぜなら新品ならオーダーメイドなはずだからだ。
後で軽い補修が必要な品であった。
装備は揃ったが、これで私は再び文無しに……。
ひとしきり考えた挙句。
「武器も手に入ったし、傭兵でもやってみるかぁ……」
その後、私は傭兵になることを目指し、世話になった村を出て、街へと一人向かったのだった。
頭上の空の青さは果てしなく、私の歩も軽やかだった。
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