第二話……盗賊の襲来
私は今月のゲーム代をコンビニで支払う。
その額、一か月で三千円。
もっと課金したら限定品の衣装とかが手に入るらしいが、私はこの額でのサービスに満足していた。
もっとも、今やVRの世界においてもソーシャルゲームが席巻しており、そちらを満足に遊ぶには、月額数万円が必要との話も聞く。
私はコンビニで買ったカップ麺を啜りながら、PC画面でrealチャンネルでの自分のキャラのデータを見ていた。
【キャラクター名】ロバート
【戦闘スキル】
・剣術……熟練(レベル3)
・弓術……専門(レベル4)
・槍術……初級(レベル1)
【魔法】
・地属性……中級(レベル2)
・火属性……初級(レベル1)
・自動治癒……初級(レベル1)
・召喚術……初級(レベル1)
元居たチャンネルでのキャラクターの1割ほどの強さのマイキャラだが、何故か可愛く思える。
更に、以前遊んでいたチャンネルから幾ばくかの銀貨を持ってきて、粗末な柄にも装備を整えてみた。
通貨を他所のチャンネルに移すのにも、1/10ルールが適応するため、元のチャンネルでの銀貨10枚が1枚になるのだ。
よって、あまり多くの銀貨は持ち込めないでいた。
何しろ、元のチャンネルで遊ぶこともあるのだ。
☆★☆★☆
……だが、二週間もたつと、私はrealチャンネルの虜になっていた。
魔物もモンスターもいないが、その名の通り凄くリアルな世界が広がっていたのだ。
私は得意の弓術で獣を仕留めたり、釣りをしたりして、手にした食材を町や村で売ることを生業とした。
今で言う猟師みたいな感じだろうか。
ちなみに、この世界で能力を上げるのは容易ではない。
何しろ倒すべき魔物がいないのだ。
よって、強くなりたければ、以前いたチャンネルでレベル上げをする必要があった。
まぁ、それも1/10の成果になってしまうのだが……。
「親父、今日はキジを仕留めてきたぞ!」
「おお! 流石はロバートの旦那! 高値で買い取らせて貰いますよ!」
獲ってきたキジを見せると、宿屋の親父の顔がほころぶ。
現実社会の自分は、こんなに人に頼りにされることはなかった。
☆★☆★☆
それからというもの。
私はゲームらしいチャンネルで仲間と遊んだり、リアルさ重視のチャンネルで遊んだりして、遊ぶチャンネルを使い分け楽しんだ。
……だが、
realというチャンネルの存在は、他のゲーム仲間には話さないでいた。
それは、自分だけの大切な秘密基地といった感じだった。
獲物をとって来ては喜んでくれる人たちの笑顔を、独り占めしたい気分だったのだ。
……しかし、一度だけ話題にしたことはあった。
だが、
「そんな夢みたいな話があるもんか! だいたい魔物がいない世界ってどうやって生活するんだ!?」
と言われてしまった。
確かに、一般的なVRMMOの世界において、お金や経験値を生み出す魔物の存在は欠かせない。
それがいない世界は、キャラクターの成長が望めないのだ。
それはそれでつまらない世界なのかもしれなかった。
☆★☆★☆
「ロバートさん、いつも助かりますわ!」
「いえいえ! こっちも楽しいです!」
今日の私はリアルの方のゲームチャンネルで、村人の畑仕事を手伝っていた。
夕日が傾く中、麦の刈り入れ作業だ。
温かい土の感覚が嬉しい。
この世界は魔物もモンスターも出ないが、私にとってはとても楽しいレジャー用の世界だった。
NPCとは思えない村人たちや町の人たちの笑顔が嬉しい。
都会暮らしの私には、土の香りや豊かな緑の景色も、心にとてもやさしい世界であった。
刈り入れを終え、村人と村に帰る私。
その晩はささやかな収穫祭といった具合で、少し上等な夕餉にありつけたのだった。
「まぁ、ロバート。お前も飲め!」
「あ、有難うございます!」
収穫祭に喜ぶ村人に、安い葡萄酒を注がれる。
それを村人たちと飲み干すことは、現実の世界での飲み会より全然楽しかった。
☆★☆★☆
翌日、現実社会の会社にて。
「おい高橋!」
「はい、課長なんでしょう?」
「折からの感染症対策でな、この営業所は二週間ほど閉める。お前も自宅待機だ!」
「わかりました!」
最近流行っている感染症の為、会社が二週間休みとなったのだ。
……これはしばらくゲーム三昧できるぞ!
私はホクホク顔で帰りの電車に乗り込み、ルンルン気分で家路についたのだった。
コンビニ飯を食べ終わった後。
おもむろにPCに接続したVRカプセルの電源を入れる。
今日選択するゲームチャンネルは、私だけのリアルな方。
いそいそと体全体をカプセルに入れ、中から赤いボタンを押せば、10秒後には意識はゲームの中へ飛んだ。
「……ぇ!?」
ゲームの中へ入り込むと、昨日収穫祭を祝った村が焼け野原であった。
「ロバートさん、助けてください」
傷を負った村長が駆け寄ってきた。
急いで応急手当を施し、横になって休んでもらう。
「一体どうしたんですか!?」
「盗賊が、盗賊が襲って来たんです! 村人が攫われてしまいました……」
この焼け野原の犯人は盗賊。
村人を救出したいものだが、私一人で何とかなるのだろうか?
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