第十七話……領地開発
「クマ太郎! こっちも掘ってね!」
「……人使いが荒いクマね!」
「後でハチミツやるから、頑張って働いてくれ!」
私は集落の水路を拡張を計画。
近くを流れる小川からより多くの水を引いて、畑の収穫を上げる計画だった。
土木事業に従事するのはクマ太郎。
普段は農作業に従事する農民の手は使えないし、鎧クマのクマ太郎は怪力で便利だった。
ちなみに、彼の好物はハチミツである。
「……ここに水車を建てるぞ!」
「あいよ!」
水車を組み立てるのは、配下のジムにアランにキッドにサムの四名の傭兵だった。
彼等は私が給料を払うことによって、今は私に雇われている状態だ。
もし私が給金を払えなくなれば、新たな雇用主をさがせるという柔らかい関係だった。
「水を流しますよ!」
「了解でさぁ!」
新しい水路にザーッっと水が入り込み、水車がギシギシと音を立てゆっくりと動きだす。
ちなみに水車は現実の世界で蒸気機関が発明されていても、村々では現役の動力であったらしい。
よって、早めの水車への設備投資は正しいと言えた。
……こうして戦が無い間。
配下の傭兵たちの雇用を維持しつつ、その労力を有効に活用した。
戦がないからと言って、傭兵の雇用を解除すれば、彼らは野盗と化す。
よって、出来る限り彼等の雇用を継続することが領内安定の肝だったのだ……。
☆★☆★☆
「魚が沢山釣れるポコ~♪」
「ポコ! お魚を殺しちゃだめだよ!」
近くの池で魚を釣り、その魚を活かしたまま、集落の養魚池に放り込む。
養魚池の魚は、とくに氷の張る冬場には貴重な食料になったのだ。
そして余るほど釣れれば、干し物にしていった。
「この分は頂けますので!?」
「はい、ここにある干したものは、もっていってください!」
私はジェスターの街で交友のあった行商人に、作った干し魚を買い取ってもらっていた。
貴重な現金収入源だ。
他には山でとれた果物なども商人に喜ばれた。
又、干し魚を作るのには沢山の塩が必要で、塩は行商人から仕入れた。
尚、乾燥システムは私の魔法で、夜中にコッソリと行っていた。
「木を切って、更に切り株を掘り起こしたいのだけどね?」
「流石に人手が足りませんわ!」
「みんな忙しいポコよ!」
私は集落の西に広がる荒れ地を開墾したかった。
いち早く農地を広げたいとの欲が出たのだ。
……が、ナンシーとポコが反対。
人手が足りないというのだ。
かといって、このまま収穫期までのんびりしていると戦争の季節になる。
大体において、収穫期が終わった農閑期に、人減らしを兼ねて戦が行われるのが常だったのだ……。
「ジェスターの街で人を雇うポコ!?」
「それにはお金が足りないなぁ……」
ポコが新しく傭兵を雇うよう言ってくるが、先立つものがない。
結局荒れ地の開墾は後回しとなり、今ある農地の開発に全力を注ぐことになったのだった。
☆★☆★☆
私はゲームから現実世界に戻る。
ちなみにゲームの世界の時間の進みは現実世界より早い。
……かといって、ゲーム内で何倍速の時間を感じるわけでは無いので、ゲームをしていると沢山の時間を生きている感覚になっていた。
お風呂に入り、電子レンジで弁当を温めていると、PCにメールが届いた。
それはゲーム仲間のハルノブからだった。
彼はゲーム【黒い王城】の正式サービスが終わってからも、ゲームに居続けている。
他のユーザーの多くは、他のゲームに移っているのにも関わらずだ。
私も【Real】チャンネルの存在がなければ、このゲームをさっさとやめていただろう。
きっと彼のゲームへの愛は本物であり、あるいみ才能がある人間なのだろう……。
私は今まで、ゲームの中で先輩であるハルノブと会い、沢山の冒険をともにしてきた。
私が今のチャンネルでなんとか一人でやっていけるのも、ハルノブの教えがあってのことだった。
彼の苦手な面と言えば、彼は対人戦が好きだった。
何度となく付き合ったが、彼の圧倒的な強さを誇る惨殺スタイルは、私には好きになれなかった。
知っている中で、彼は文句なくゲームの中では最強の存在と言えた。
ゲームの中では、一度も勝ったことが無い。
彼に勝ちたくないと言えばウソになるが、それを諦めるくらいに装備もレベルも段違いの存在だったのだ。
☆★☆★☆
――翌日。
私は久しぶりに出社した。
おりからの感染症が猛威を振るっており、出社人数に政府から制限がかかってはいたが、どうしても出社しなければいけない用事はあったのだ。
「……おう、高橋! 最近仕事に熱心だな!」
「はい! 課長。お陰様で!」
課長に休み時間にコーヒーを奢ってもらう。
以前はつまらないと思った仕事だが、ゲームの中で人を雇う立場になって、現実の仕事の有用さに気が付いたのだ。
「課長、ここが分からないのですが……」
「……なになに!? 社会保障のことか?」
「はい!」
課長は50代で、さほど仕事が出来るといったタイプでは無かったが、いろいろなことを知っている温厚な人だった。
とくに、社会の制度システムに明るく、私はゲーム内の領地経営に生かすべく、課長の知識を借りることは多かった。
「お疲れ様でした!」
「お疲れ様!」
私は仕事が終わると、電車に急いで駆け込む。
以前には無い事であった。
それは楽しいゲームの世界が待っているからであり、楽しい仲間たちとの冒険が待っているからであった……。
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