第十四話……砦の建築!?
「おう、ロバート。大した出世だな!」
「ええ、お陰様で!」
以前に騎士になったケインズに、街の酒場で話しかけられる私。
私はアルゴン帝国との度重なる小競り合いの功績により、傭兵隊長に昇進。
さらに、ジェスター男爵から新しい地域への砦を建築するよう仰せつかったのだ。
建築だけなら美味しい仕事では無かったが、無事に建築出来たなら、その砦の長にしてもらえるとの約束だった。
「一城の主様になる前に、酒でも奢っとかないとな!」
「いやいや、まだとらぬ狸のなんとやらですよ!」
ケインズは私が出世するのでは、と期待しているらしい。
出世するかどうかは別として、期待されるのはまんざら悪くない。
彼がなみなみと注ぐ葡萄酒はとても美味しかった。
「……で、砦はどこに築くんだ?」
笑うケインズに地図を見せてやった。
本当は秘密事項で、教えてはいけないことだったが。
「このあたりなんだよ」
私は指で地図を示す。
「お前、馬鹿か!? 敵との係争地のど真ん中じゃないか? 死ぬ気か?」
「いやいや、あまり価値がないところに築いても意味がないんじゃないか? ここに砦を作れば味方の4つの集落を守れるんだ!」
「それはそうだが……、無茶が過ぎるな」
ケインズは思ったより私のことを心配してくれているようで嬉しい。
しかし、私が砦を築こうとする地域は、アルゴン帝国の襲来が頻繁で、よく略奪対象にされている集落が集まったところであった。
民を守れずして何が男爵だ、何が騎士だ。
……あ、私はよく考えたら、ただの傭兵であったのだが。
翌朝、私は建築予定地域に出発した。
☆★☆★☆
「隊長さん、有難うございます!」
「砦建築応援しています!」
「ありがとう!」
近くに防御用の砦を築くと聞き、予定地近くの農民に御礼を言われる。
彼等生活の防波堤として砦は作られるという事情を考慮しても、応援してもらえるというのは嬉しかった。
「道案内しますじゃ!」
「お願いします!」
私は馬上で、集落の年長者の道案内を受ける。
農地や林、うっそうとした茂みを通り抜けた先に予定地があった。
「……ありがたいんですけど、本当にこんなところに砦が築けるんですかい?」
年長者は私の予定地に懐疑的だった。
なにしろそこは小さな小川に挟まれた中州で、材木や石材を運ぶのが難しい地であったのだ。
「だけど、出来たら強そうじゃない?」
「……出来たらですよね? 出来ないから帝国も放置しているんでさぁ」
もし中州に砦を築ければ、強固な防御力を発揮できることは、だれの目からも疑いない。
しかし、その工事中に相手の襲撃をどうにか凌がねばならないのだ。
なにしろこの地は、帝国が三度にわたり砦を築こうとして、その三度ともジェスター男爵の軍勢によって失敗していたのだ。
その邪魔する作戦には私も従事していたので、工事の難しさはとてもわかっていた。
「……では、またです!」
「頼みますぞ!」
私は一通り説明を受けた後。
遠眼鏡をしまい、年長者と別れ、街への帰路についた。
「そろそろ、雨が降るな!? 急ごう!」
私は逞しい軍馬となったスコットを促し、街道を駆けた。
……この地域の雨季の季節の到来だった。
それから数日、雷雨が続くことになる……。
☆★☆★☆
――六日後。
一夜で砦は出来上がった。
「本当に出来たんべか!?」
「凄いな!」
私は完成した砦の塀の上で、対岸でたまげる農民の声を聞いた。
子供がこちらを指さして驚いている様子が微笑ましい。
そして、しばらく後に、お礼を言いに来た集落の人々を砦に招き入れた。
「有難うございますじゃ! お陰で村々が助かりまする!」
「いえいえ、私にも利益があるんで……」
「……でもどうやって、一日で砦を作ったので!?」
「それはですね、こうやったのですよ……」
私は地図を指し示しながら、人々に説明した。
私が砦を作った手順はこうだった。
……五日前から、小川の上流の森に傭兵を入れ、木や石材を切る。
石材は私が得意の土魔法を使った。
作業の音は雷雨が隠した。
木材はすぐに組み立てられる様、切り目や加工を予め施しておいた。
さらに切った木を筏に組み、石材などの建材を乗せたまま小川を下った。
普段は筏の行き足に不安な水深だったが、今は雨季。
十分な水量があった。
夜間に一気に建材とともに川を下り、中州に着き次第、筏にしていた木材も使って一夜で砦を築いたのだった。
未だ工事中の部分もあり、あまり見栄えのいいものでは無かったが、一夜で作れたにしては上々であった。
「へぇ~、ロバートさん。こんなことを考え着くなんて、あんた天才じゃな!」
「流石、傭兵隊長ともなると違うんですな!」
皆が褒めてくれたが、もちろん私が考えたことではない。
本で知った知識だ。
……だが、歴史とは繰りかえされる模倣でもある。
まんざら私の手柄がないというわけでもなかった。
「……でも、よく雨が続くとわかりましたな!」
「そうですじゃ、天気もわかるんですかい?」
「……あ、ええ、まぁ」
「流石じゃのぉ!」
「流石じゃ!」
……ゴメン。
天気は魔女のナンシーの占いで知りました。
私の手柄にしてすいません。
「隊長! 帝国軍がやってきましたぞ!」
「あら? もう来ちゃった!?」
見張り台に上ると、偵察兵がこちらの砦を見て驚いている様子だ。
こちらの砦は、内部の工事がまだ万全ではなかったのだ。
……バレるとヤバい。
「ジェスターの街へ援軍を頼め!」
「ははっ!」
こうして砦は仮組みされた状態で敵に見つかる。
よって、敵が兵を連れて来るのが早いか、味方の援軍が駆け付けるのが早いか、という競争になっていったのだった。
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