第十三話……一番乗りと船の購入
「国境の集落に敵が来たぞ!」
早馬がジェスターの街に駆け込む。
そう、このジェスター男爵領はアルゴン帝国との最前線。
そこでさらにその先手を担うのは、我々傭兵たちであった。
「いくぞ!」
私は少し逞しくなった荷馬のスコットに跨り、国境の集落へと向かう。
徒歩の同僚の傭兵たちを置き去りにして、一人で現地に一番乗りを果たした。
集落を襲った相手は、騎乗騎士1名に徒歩の農兵従者が6名。
「相手は一人だぞ! やっちまえ!」
相手の徒歩の農兵たちは、こちらを見るなり一斉に駆け寄ってきた。
一対六。
勝気にはやるのも分かる。
……だが、私はすぐに魔の力を顕在化させた。
「出でよ、魔界の徒。我に力を!」
ダークロードの力が私に憑依する。
怪しげなオーラに包まれ、私の筋肉は滾り、脳は冴えわたった。
「でやぁ!」
私は先頭の一人に鋭い斬撃を浴びせ、さらに足を扱いながら残りを相手にする。
相手の剣を弾き飛ばし、盾を構える者も蹴り飛ばした。
魔の力を従える私にとって、戦い慣れない農兵たちは、たとえ少し数が多くても、子供のようにあしらえたのだった。
「うやぁ! こいつ化け物だ!」
農兵数名相手になら無双できる私に、相手は算を乱して逃げる。
なんだか気分は三国志の豪傑になった気分だった。
「ええい、逃げるな、貴様ら!」
相手の騎士は、馬上から逃げる農兵をしかりつける。
その隙に、私は相手の騎士に素早く近づき、馬から引きずり落とした。
「命まではとらない。降伏しろ!」
私は相手の騎士を地面に組み敷き、首に剣を充てた。
「……わ、わかった。降伏する!」
相手はおとなしくなり、静かに降伏を受諾した。
「ロバートさん、またかぁ!」
相手の騎士を降伏させたところで、味方の傭兵たちが徒歩で駆けつけて来る。
あまりいい事じゃないが、手柄は独り占めだ。
私は騎士の身ぐるみを剥ぎ、その武装を強奪。
良い盾に良い剣、そして上質な鎖帷子を手に入れた。
さらに身柄をジェスター男爵に引き渡し、報奨金の銀貨を受け取ったのだった。
「まぁまぁ、飲んで下さいよ!」
「ぉ? 有難うございます!」
私はそのお金の一部で、同僚の傭兵たちに酒を奢る。
同僚たちは不満を葡萄酒に流してくれた様であった。
なにしろ、鋭い剣とは、必ずしも前から襲ってくるとは決まって無かったからだった。
こうしたことを何件か積み上げていくうち、私は男爵にも傭兵たちにも一目置かれる存在になっていったのだった。
☆★☆★☆
――翌日。
「……釣れないポコね!」
「釣れないね」
私はジェスターの街で釣り竿を購入。
すぐにハリスの漁村に向かい、餌を買付けて釣りを始めた。
……が、釣れない。
眼下には沢山の魚がいるのにだ……。
「あはは、貸してごらんよ!」
それを見ていた村の老人に、餌の付け方を教えてもらった。
どうやら、針が見えないよう餌をつけなければならないようだった。
「……うは、また釣れた!」
「大漁ポコ~♪」
その甲斐あって、私はポコと一緒に沢山の魚を釣り上げた。
その後、餌の付け方を教えてくれた老人に御礼を言って、ジェスターの街へと揚揚と引き上げたのだった。
「こんなにお魚を持って帰ってどうするポコ?」
「干物にするんだよ!」
私は釣ってきた魚を大量に家に持ち込んだ。
一枚ずつ丁寧に火の魔法で燻し、乾燥させていく。
私の炎の魔法は、攻撃に使えるほど強くなかったが、干物をつくるのには適していたのだった。
――翌朝。
「……おお? 良い品だね! 全部買い取るよ!」
「有難うございます!」
プロトン王国の王都から来ていた商人に、昨晩作った干物を全部売る。
……こうして私は、さらに大好きな銀貨を稼いだのだった。
☆★☆★☆
「……ぇ? 船でございますか?」
「はい、一艘ほしいのですが……」
私はハリスの漁村で漁船を一隻購入しようとしていた。
釣りをするなら、より沢山釣れる海に出たかったのだ。
「船は皆の生業の手段ですので、簡単にお売りするわけにはいきませぬが、あれなら構いません」
「あれとは?」
ハリスの村長が案内してくれたのは、古びた老朽船であった。
「これはのれるのですか?」
「修理さえすれば乗れます! これならお売りいたします。お安くしときますよ」
「……わかりました」
私は代金の銀貨の入った袋をハリスの村長に渡し、無事に船を買い付けた。
但し、ボロボロの老朽船ではあったのだが……。
「ボロいポコね」
「旦那様、これをどうなさいますの?」
「皆で修理する!」
「「ぇー!」」
私は苦手とする牛乳瓶底眼鏡の魔女にも頼み込み、修理の手伝いをお願いした。
さらに、修理の資材はジェスターの街に買い出しにでて、修理の工員も臨時で雇った。
修理は三日三晩かかったものの、無事に終わることができた。
「皆でのるぞ~」
「「わーい!」」
私達は釣りというより漁を楽しみ、獲れた魚を干物へと次々に加工。
船の修理費を捻出するため、王都への行商人に売却するを繰り返したのであった。
収支は好転。
人も雇用し、さらに銀貨を稼いでいくことに成功した。
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