第十話……魔女退治!?
「……はぁ、掃除ってめんどいな」
リアルの世界の掃除も面倒くさいが、ゲーム内で与えられた借家の敷地の草抜きも面倒くさい。
そんな独り言を自分の敷地でブツブツと言っていると……。
「……あ、あんたがロバートさんかい?」
唐突に客が来た。
それは白髪の老人だった。
「ええ、そうですけど。何か御用ですか?」
「実は、ウチの集落に魔女がでましてね……」
「魔女ですか!?」
この老人、近くの集落の長だという。
名前はジムさん。
なにやら、役をしてる集落に魔女が住み着いたという。
「退治したらいいんですか?」
「あんた、魔女を信じるのかい?」
……そうきたか。
なにしろこの世界では、自分の他に魔法を使うものを見たことが無い。
よって、自分が魔法を使うのを、他人には易々と見せないよう努力しているのだ。
こういう環境下で、魔女を信じるか信じないかは、結構重たい問題であったのだ。
人類は歴史上、罪のない人々を魔女として裁いた歴史がある。
それを知っている自分が魔女を易々と裁くのは、まさに罪深い行為であったのだ……。
……そもそも、その魔女は悪人なのだろうか?
「……見てみないと分かりませんね!」
私は少し考えた後、慎重にこう返した。
すると、老人は、
「……では、早く来て下せぇ!! 早く! 早く!」
こうして、老人にせっつかれるように、私はその集落へと向かったのだった……。
☆★☆★☆
私は老人の後を、荷馬を連れて歩いていく。
最近はこの荷馬に、スコットという愛称をつけた。
これは、とある野球ゲームで、フォークボールが得意な好きな選手の名前だった。
夕日が傾くころに、私たちは集落に着く。
「明日の晩に案内しますから、今夜は家に泊ってください!」
「ありがとうございます!」
私は礼を言い、老人の伴侶からささやかな歓待に与った。
温かい粥と、噛み応えのあるパンを食し、その晩は眠ったのだった。
「ロバートさん、起きてくださぇ!」
私は老人に起こされ、はやい朝食を摂った。
「こっちでさぁ……」
老人についていくと、さびれた店のようなものがあり、老婆が薬を売っていた。
「いらっしゃいませ! 何をお探しですか?」
……!?
一体、何が魔女なのだろうか?
私には単なる薬売りの老婆にしか見えなかった。
「このお婆さんがどうかしたのですか?」
そう老人に問うと、
「この老婆が魔女なんでさぁ……」
……と、小声で返してきた。
「で、なにか被害が出たんですか?」
と老人に聞いてみると、驚いたことに、
「……なにも出ていやせん。出ていたら、領主様に訴えていますだ!」
……あ、そうか。
対処が難しいから、便利屋と思しき私のところに来たのだ。
この前、利水の案件で名を売ったのが仇になったらしい……。
「で、この老婆をどうしろと?」
「この集落から追い払ってくだせぇ……」
詳しく話を聞くと、この老婆が売っている傷薬はよく効くらしい。
最初、それは良いことだと皆は思ったらしいのだが、お金を受け取らないなど不審な点がいくつも出て来たらしい。
それと同時に集落では流行病が流行り始め、この老婆のせいだということになったらしいのだ……。
「……な、馬鹿な!?」
「馬鹿いうなや!」
私は老人に怒られる。
迷信深いこの世界において、流行病は大事だった。
それに対し、馬鹿と言った無配慮な私の失点であった。
「他所者のあんたに何が分かるんじゃ! 頼んだことをやってくれるかどうかを聞いたんじゃよ!」
「……むぅ」
まぁ、つまるところ、この老人をはじめ、この集落の人々は何が何でもこの老婆を集落から追い出したいらしい。
私が追い出せねば、若い衆が老婆に乱暴しかねないといった状況らしかった。
怪しきは罰するということか?
それは如何なものだろうか……。
……だが、
「これだけあればいいか?」
私の手に、銀貨がたくさん入った革袋を手渡す老人。
……しまった。
私の大好物だ!!
「わかりました。なんとかします」
……嗚呼、言ってしまった!
お馬鹿な話なのだが、ゲームの世界での私はお金に弱い。
お金があれば沢山のレア装備が買えるのだ。
といっても、この世界にレア装備があるのかどうか不明だが……。
なにはともあれ、私は銀貨が放つ鈍い光沢に負けたのだった。
私は集落の人たちが畑に出払う時間帯を見て、老婆に話しかけた。
「お婆さんって魔女なんです!?」
……!!
しまった。
明らかに直球過ぎたか!?
「そんなわけはないでしょう? 面白いお方じゃ、お暇なら中に入っていきなさらんか?」
老婆は薄暗い店の中へと案内してくれる。
「あ、お邪魔します!」
そう言って中に入った途端。
後ろのドアがばたんと閉まる。
そして、老婆が振り返り、こちらに凄い形相を見せてきた。
「……な、なんでバレたのじゃぁあああ!?」
口が耳まで裂けた形相。
腹の底から出たような低い声。
皺は深く、目は怪しく光っていた。
それはまさしく、魔女といった形相だったのだ。
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