表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/19

第一話……VRカプセル機器の購入

「……さて、今日もゲームに繋ぐか」


 私の名前は高橋遥人。

 冴えないサラリーマンだ。

 毎月の給料は少なく未だ独身。

 安いアパートの一室で暮らしている。


 私の家に帰っての趣味はVRMMO。

 先日に通販で買った、最新鋭の全身用カプセル型のフルダイブ式接続器が届いたのだ。

 早速にPCで設定を行い、すぐさまゲームの世界へとダイブした。


 ゲームの名前は『黒い王城』。

 よくある中世西洋風ファンタジーゲームだ。

 このゲームはVR機器がなくても遊べるが、VR機器を使っての映像は、びっくりするくらい奇麗だった。



「よし! 頑張るぞ!」


 私は仕事から帰ると、夕食をそこそこにゲームに没頭。

 各種収集品集めと、レベル上げに勤しんだ。


 このゲーム世界も例にもれず、最初はゴブリンやスライムといった敵を叩く。

 ダメージを受けた敵は消え、あとにはお金やアイテムなどの戦利品が残る戦闘システムだった。


 彼等から出るアイテムを集め、店を構えるNPCに売って銀貨を稼いだ。

 暫くしてお金が貯まると、魔法の小袋を買った。


 これは内部に27立方メートルほど収容でき、しかも重量無視の優れた道具入れだった。

 もっと高いものになると、冷蔵機能が付いていたり、もっと多くのものが入れられるらしいが、その多くが非売品であり入手困難であった。




☆★☆★☆


――1か月後。

 私はゲームに接続しようと試みる。


 自分のアバターであるキャラクターが存在するチャンネルを選択しようとすると、更に下側に新規のチャンネル、つまり新しいゲーム世界が選べるようになっていた。

 そのチャンネルの名は『real』と書かれていた。


 このゲームは、別の世界であるチャンネルを選択すると、新規にキャラクターを作るか、他のチャンネルでのキャラクターの能力を90%減で使えるとのことだった。


 このチャンネルの接続数は、現在のところ0名。

 今のところ、自分だけの世界が広がっているといってよかった。

 一人だけの世界。

 私はとてもウキウキした気分になった。


 私はそこそこにキャラクターが育っていたので、能力90%減をまよわず選択。

 すぐさま新しいチャンネルへと飛びこんでいった。




☆★☆★☆


「う……、これは凄い!」


 新しいチャンネルに入ると、丁度夕日が沈みかかっていたのだが、その情景は既存のVRゲームに無いほどの高品質だった。

 まさにリアル、まさに現実そのままといった感じだった。


 現在のVRゲームのグラフィックは、どうしても現実の情景には劣ってしまうのが難点だった。

 しかし、このリアルと書かれたチャンネルの世界は、その難点を軽々と排除していたのだ。



「……ようし、狩るぞ!」


 強さが9割減したキャラクターを育てようと、街の郊外でモンスターを探すもいない。

 少なくとも、草原など見晴らしの良いフィールドを歩いている限りでは、一匹のモンスターにも出くわさなかった。

 出くわしたのは穴ウサギなどの小動物だけだった。



 その後、近くの町に帰り、NPCと思しき宿屋の主人に問う。


「親父、魔物やモンスターの類が全くいないのだけど、どうなっているのかな?」


「お客様、何を子供みたいなことを仰っているのです。怪物などが出てくるのはおとぎ話の世界だけじゃないですか!」


 宿屋の親父は、NPCらしからぬ複雑な笑みを浮かべた。


 とりあえず困惑する親父を宥め、お金を払い部屋を借りる。

 VR世界の時間は、現実世界の時間よりゆっくり動いているので、宿屋で休んでも時間は大丈夫なのだ……。



 更に夕食の時間。


 出てきた料理に唖然とした。

 水に浸さないと食べられないほど固いパン。

 もう一つ出されたのは雑穀の粥だった。



「これが晩ご飯!?」


「左様でございます」


 親父の顔は笑っているし、他の客も普通に粥を啜っている。

 どうやら、この世界では当たり前の食事のようだった。


 しかし、一般的なVRMMOの宿屋の晩御飯は、ハンバーグなどの現代的な洋風料理が出てくるのだ。

 最近のゲームユーザーの舌は肥えている。

 雑穀の粥なぞ出したら、サポートセンターが苦情殺到になるのが目に見えていた。


 ……まぁ、今のところ接続者は私一人だしな。


 私は固いパンを粥に浸しながら、チビチビと食べた後、部屋のベッドでゆっくりと休んだのだった。




☆★☆★☆


 翌日、私は再び町の郊外の草原に来た。

 宿屋代を稼ぐべく、モンスターを狩るためだ。


 ……が、しかし、モンスターは一匹も現れなかった。



「……ぁ、痛い!」


 私は草むらの草で手を切ってしまった。

 表皮に滲み出してくる血液。


 ……ぇ!? 血液だって!?


 私は驚いた。


 そもそもVRゲームにおいて出血などのリアルなシーンは、現在においては再現することが禁じられているのだ。

 なぜ私の指から血が出て来るのか、さっぱり見当がつかなかった。




☆★☆★☆


 ――後日。


 ゲームの運営会社へ『real』チャンネルのことを、メールで問い合わせた。

 すると、帰ってきた返事は、


『当方の運営するゲームチャンネルに、現在realというチャンネルは存在致しません』


 とのことだった。


 一体どういうことだ……!?


 私はゲームの運営会社が知らないというチャンネル世界を、どうとらえていいか分からず、その日はなかなか寝付けなかった。

☆★☆


お読みいただき有難うございます。

お気に召しましたら、ブックマークやご採点をいただけると大変嬉しいです。

誤字脱字報告も大変感謝です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、こちらもどうぞ!
↓↓クリック↓↓

i000000
(バナー作:「秋の桜子」様)
4m995efhcisxf3n45atdjngefp6w_1b6w_b4_b4_
(バナー作:「こたかん」様)

i000000
(バナー作:「砂礫零」様)

i000000
(バナー作・「秋の桜子」様)
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い設定ですね。 続きが気になります。 [一言] 彼がここ(real)で活動している間、元の世界の会社とかどうなっているのか、気になります~。
[一言] これは面白い! 普通VRMMOってたくさんのプレイヤーキャラがいるものですが、自分しかプレイヤーがいないというのは斬新ですね!
[良い点] 新連載! まさにリアル! 楽しみですね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ