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脳筋霊媒師vs因習村  作者: 結城 からく


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2/2

後編

 東雲が全力疾走する。

 音速を超える突進が、肉噛村の住民に容赦なく迫る。


「呪符タックル!」


 理不尽な筋肉との衝突により、村人達は肉片となった。

 血煙が大地を染め上げ、衝撃波が家屋を木っ端微塵に破壊する。

 東雲の残像が村中を駆け回る。

 一部の村人が猟銃で彼を狙うも、そんなものが当たるはずもなかった。


「呪符キーック!」


 青空に響き渡る技名。

 東雲のドロップキックが炸裂し、猟銃を持つ村人が滅茶苦茶に爆散した。


 ものの十秒足らずで視界内の村人を殺した東雲は村の奥へと進む。

 そこには麻袋を被り、チェーンソーを持った男が佇んでいた。

 急ブレーキをかけて止まった東雲は、不敵な笑みを湛えて対峙する。


「ほう、なかなかの筋肉だな。悪くない」


「あはははははははは!」


 無邪気に笑う男がチェーンソーで攻撃を仕掛けた。

 高速回転する刃が肩に触れて火花を散らす。

 道着がズタズタに引き裂かれているが、その下の筋肉は無傷だった。

 薄皮一枚も切れておらず、艶やかな輝きを帯びている。


「ただの金属が、鍛え上げた筋肉を凌駕するはずないだろう」


 東雲が右手の指を揃えて掲げた。

 愛する筋肉を躍動させて彼は叫ぶ。


「呪符チョップ!」


 無慈悲な一撃が、男の脳天に叩き込まれた。

 麻袋を被った頭部が潰れ、そのまま首にめり込んで鎖骨を砕きながら陥没する。

 身長が四十センチほど縮んだ男は、手足を痙攣させながら倒れて死んだ。


 東雲は意気揚々と村の最奥まで進む。

 そこには古びた祭壇があった。

 祭壇の前には、巫女服を着た若い女が跪いている。

 振り返った女は、東雲を見て微笑んだ。


「あら、妙な人間ね。生贄にちょうどよさそう――」


「呪符パンチ!」


 会話を拒絶した東雲が、問答無用で拳を打ち込む。

 彼の攻撃は巫女服の女――ではなく、その背後に浮かぶ靄のような物体を捉えた。

 派手にひしゃげた靄が地面を転がった後、甲高い声を発して狼狽する。


「えっ、あ、なぜ霊体を殴れるの? そもそも視認できないはずで」


「呪符パンチ! 呪符パンチ! 呪符パンチ! 呪符パンチ!」


 東雲は靄を袋叩きにする。

 マッハ10を突破した拳のラッシュは、靄をぐちゃぐちゃに打ち砕く。

 やがて彼は残骸を拾い上げ、持参していたプロテインシェイカーに入れた。

 毎秒七万回の高速シェイクでとどめを刺した後、一気に飲み干す。


「ははは、これにて一件落着!」


「この人が怪異じゃん……」


 ようやく追いついた田浦は、呆れた様子で呟く。

 狂気に支配された住民が死に絶えて、元凶の土着神も滅びた。

 こうして肉噛村の因習に終止符が打たれたのだった。

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― 新着の感想 ―
すげぇ、何一つ村の背景とか成り立ちとか分からないうちに、全部解決した。 こういう作品を待ってました!
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