【エース相原編①】変化球禁止令
「おう相原、先輩に変化球投げたら怒るぞコラ」
西新宿高校出身、イ軍エース相原の先輩にあたるサ軍沖留が、半マジ半ギャグで試合前の相原にカマしたものである。
それを聞いた相原、
「は?」
と、声にこそ出さずにいたものの、汚物を見るような目で沖留を睨みつけた。
先輩後輩とは言うものの、年次が5つ離れており、直接の関係は一切無い。単に出身高校が同じだからというだけで、このようなワケの分からない事を言ってくる沖留の古臭い体育会系根性に、相原は嫌悪感情を隠そうともしなかった。
「おい、分かってんだろうな」
相原のあからさまに不満そうな顔に苛ついたか、沖留は更に押し込んで来る。
それに対して、
「はあ…………まあ、分かりました」
侮蔑の表情に、悪意満載の凄まじい笑みを浮かべる相原であった。
その後、相原は確かに直球しか投げなかった――。
立て続けに150kmオーバーのビーンボールを投じ、最後はお約束の外角低め直球で奪三振。
止めに、試合前の沖留とのやり取りをバラし、
「沖留先輩から直球だけで抑えろって課題を出されたんで、何とかそうやってみました。先輩のおかげでレベルアップできました。ありがとうございます」
と、美談仕立てにしてしまい、沖留を反論不能にしてみせたのであった…。




