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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-3 血によりて

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97.クオリッサ社長

 事故の状況とイヴァンの遺言書を共有し、ロダンとフローラ、エミリアはブラックパール船舶の事務所に向かった。

 被害にあった事務所とは別、港のもっと手前にある本社事務所である。


(……ここが)


 本社事務所は黒塗りの光沢ある、5階建ての建物だ。

 イセルナーレ魔術ギルドと同じような雰囲気だとエミリアが感じた。


(でも活気はなく、沈んでる……)


 事故が起きた翌朝なので当然ではあった。

 痛ましさにエミリアが目を伏せる。


 まさか、こんなことになるなんて。


 3人が通されたのは、最上階の広々とした会議室であった。

 そこで待っていたのは白くなりかけた金髪の老女だ。


「どうぞ、おかけになって」


 足腰が悪いのか、ずっと杖を使っている。


 後ろに束ねられた金髪と厳粛な紺色の服。

 しかし目元には柔らかさがある。


(イヴァンによく似ていらっしゃる……)


 彼女がブラックパール船舶株式会社の社長、クオリッサ・ロンダートである。


 挨拶もそこそこに彼女は頭を下げる。


 エミリアはその所作にぎょっとしてしまった。

 息子と従業員が爆発事故に巻き込まれ、辛いのは彼女のはずなのに。


 とても気丈な女性だとエミリアは思った。

 自分ならとても平静ではいられないのに。


 クオリッサの声はわずかに震えていた。


「申し訳ないわ。弊社の倉庫でこんな事故が起こって……」

「どうかお気になさらず」


 応えたのはロダンであった。


 この場にいる者の序列で言えば、彼がトップである。

 その次にフローラ、最後にエミリアだろうか。


 ロダンの言葉は普段よりも優しげに、痛ましく聞こえる。


「ロンダート男爵と従業員の皆さんの、一刻も早い回復を王都守護騎士団もお祈りしております」

「ありがとう……」


 クオリッサが息を吐く。


 イヴァンの状態は正直、良くない。

 彼だけが爆発の中心部近くにいたからだ。

 即死は免れたが、意識不明の重体。生還するかは彼の生命力次第……。


 被害にあった他の従業員は命に別状はないという。

 しかし、爆発現場に近い者ほど傷は深い――すぐに話を聞ける状態ではない。


「イヴァンの残した文書のことは、皆様もうご存じね?」

「しっかりと。法的に有効だと認められます」


 ロダンは法務官でもある。

 その彼が認めている以上、口を挟む余地はない。


「私も亡き夫やイヴァンから、ブラックパール号については何度も聞いておりました。私自身も……あの船には並々ならぬ想いがあります」


 クオリッサがぎゅっと杖の柄に力を込める。

 夫と息子にとって、ブラックパール号は恐らく忘れられない船に違いない。


 九死に一生を得た嵐の日。

 岩壁に衝突し、沈んでいった……。


「弊社としては、イヴァンの意思を尊重したく思います。作業はイヴァンの作った資料と経験豊富な従業員でカバー可能なはず……。どうか、このまま継続して作業を請け負って頂けないでしょうか?」


 クオリッサの真摯な言葉。

 もちろん、エミリアとしては何としても完遂させたい。


 ロダンは即答せず、フローラを見やった。


「……王都守護騎士団としてはすでに許諾を出した事業だ。痛ましい事故が起きたとはいえ、作業自体には問題がないと考える」


 フローラも覚悟を決めていた。

 自分たちの作業に誤りはなく、手を引く理由はない。


「魔術ギルドも作業続行に異存はありません。こちらの担当は――」


 全員の視線がエミリアに集まる。


 エミリアの結論は決まっていた。

 この事故がどういう経緯で起きたのか――。

 

 あの倉庫で起きたのは、本当に事故なのだろうか。

 経験豊富なブラックパール船舶がこんなミスをするのだろうか……。


 そして、ロダンの母マルテの残した言葉。

 あまりにタイミングが良すぎる……。


 だが、ロダンは完遂する方針のようだ。

 であるならば……。


「私も最後までやり抜きたいと思います」


 エミリアははっきりとそう答えた。

 瞬間、クオリッサの目に涙が浮かぶ。


「どうか、よろしくお願いいたします」

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