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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-3 血によりて

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95.事件の朝

 深夜、帰宅したエミリアはシャワーを浴びて、そっと寝室を見る。

 フォードとセリス、ルルがきちんと一緒になって寝ていた。


 セリスはうつ伏せになって、その頭の上にルルがいるのだが。

 枕とルルのサンドイッチ状態である。


(……どういう寝方なの?)


 だが、寝室出入り口に向けたセリスの顔はだらしなく幸せそうだった。

 まさかあえて、挟まれているのか。その可能性は高そうだった。


 ルルを枕にするのはルルの大きさ的に憚られる。

 だが、枕にされるならたっぷりwin-winの関係で一緒に寝られるのだ。


(もうそんな高度な寝方を実践してるなんて……!)


 恐ろしい。さすがはウォリス貴族学院の首席だ。


「ルルー……」

「きゅぅー」


 そんなセリスの頭の上のルルにフォードは手を伸ばし、撫でている。

 息子は実利重視のフォームだった。


 ぽよぽよ。

 フォードの手が動くたび、ルルも幸せそうだ。


 うーん、いいなぁ……。

 しかしさすがに邪魔はできない。


 エミリアは疲れた頭と身体をリビングのソファーに横たえる。

 色々と考えたいことはあるが、それはまた明日だ。


 とりあえずはすぐにでも寝たい。


(今度、私もマネしてみよう……)


 そんなことを考えながら、エミリアはすぐに眠りに落ちた。


 翌朝、ソファーで眠るエミリアの鼻元にぽよふわっとした感覚が……。


「んんー……?」


 つんつん。

 なんとなく指でつついてみると、指先が毛に吸い込まれるような。


 これは、さすがに……息子ではない。

 眠気の残る頭の上から、元気な鳴き声が聞こえてくる。


「きゅい!」

「ルル……あなただったのね」


 ソファーのふちにルルが立って、お腹をエミリアの顔に押しつけていた。

 エミリアはすりすりとペンギンぼでーの感触を堪能する。


「おはようございますっ」

「おはよう、お母さん」


 エミリアの寝るソファーのそばに、すでに起きていたセリスとフォードがいた。

 目元を擦りながらエミリアはふたりに挨拶する。


「おはよう、みんな……セリスさんも昨日はありがとうね」

「いえいえー、ルルちゃんとフォード君とスヤスヤ眠れましたよ!」


 それなら良かった……まぁ、あの体勢なら気持ち良く寝られもするだろう。


 エミリアはソファーから起きて、身体を伸ばし――玄関の郵便受けから新聞を取る。

 新聞はまだお高めではあるが、時事情報に疎いエミリアには必要経費だった。


 新聞を持ってリビングに戻り、とりあえず一面に目を向ける。

 本格的に読むのではなく見出しだけ――そのつもりだったのだが。


「……え?」





 同じ頃――午前9時、東の港にて。


 猛烈な太陽の日差しが港を焼く。

 陽光に映し出された黒焦げたブラックパール船舶の倉庫と事務所が痛々しい。


 その爆発事故が起こった事務所現場にロダンがいた。


「まさか、こんなことが起こるとはな……」


 最初の爆発は小規模であった。

 しかし火が回った結果、倉庫と事務所がそれぞれ半壊していたのである。


 倉庫と事務所の半分が巻き込まれたが、柱は焼けなかった。

 消火活動は早朝に終わり、そこから現場検証である。


「……ふむ」


 わずかな違和感をロダンは覚える。

 港の倉庫なら、火薬が置かれていても不思議ではない。


 問題は夜半になぜ爆発したかだが――。

 ロダンは隣にいるテリーへ尋ねる。


「魔力の残滓を感じるか?」

「えっ? いいえ、俺はまったく……。消防からもそういった報告はありません」


 今のロダンは寝ずに東の港にいる。

 そして深夜、エミリアとの船の冒険により、ロダンの感覚は研ぎ澄まされていた。


 普段ならロダンさえも見逃すほどの小さなざわめき。

 焦げた粉塵に混じっている、かすかな違和。


「探ってみるか」


 ロダンは半壊した倉庫で意識を集中させた。

 息を吸って、吐く。


 このタイミングでの事件が偶然だろうか。


「団長……」

「……感じるぞ」


 感情と感覚の昂りがロダンの魔力感覚を一時的に引き上げていた。

 

 微細な粉塵に乗った魔力の光が風に乗る。

 残された魔力はほんのわずかだった。


 だが、単純な失火では魔力は残らない。

 当然だが魔力が関わらなければこうはならないのだ。


 恐らく、ロダンと同じほど鋭敏な者でないと感じ取れないだろう。

 王都守護騎士団でも探知できる者は他にいない。


 現場では他に王都守護騎士団と警察、消防が合同で作業を行っていた。

 焼けたものも焼け残ったものもすべて記録し、運び出していく。


「消防の見解も爆発が起きたのは倉庫とのことですが……」

「やはりか。ここにしか魔力の痕跡がない……もう少し消火作業が遅れてたらわからなかったかもな」

「俺らにわからないくらいの、微量な魔力ですよね? 団長くらいじゃないと探知できないなんて……」


 テリーが目を細める。

 彼も騎士として経験を積み、洞察力があった。


 ロダンの感知したモノ次第では事件の様相が大きく変わる。


「従業員の証言でも引火性や爆発性のモノはここになかったようです。しかしひとつだけ――解体作業中の船体が一部保管されていたとか」


 なるほど、とロダンは思った。

 目的はそちらのほうか。


「……ブラックパール号だな」

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― 新着の感想 ―
法治国家の法の外側でなにかしてる感じかなー。 ブラックパール号の調査を止めようとしてた人達が怪しいよね。 ぽよ。ぽよぽよ。ぽよん。ぽよよん。ぽよ。 不安になったときとかにるるちゃんセラピーはきっと効…
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