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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-2 残されたモノ

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89.島の秘密

 ロダンが多層構造の岩の隙間に手を入れる。


 そのままゆっくりと彼は集中して――白い魔力の閃光が放たれた。

 冷たく、月光に似たロダンの魔力だ。


 ロダンが岩の隙間から手を引き抜いた。


 ごごごっ……。


 地鳴りが起こり、船が揺れる。

 思わずエミリアは腰のベルトをぎゅっと掴んだ。


 同時に、岩壁の一部がががっと動き始める。


「うわぁ……っ!」


 岩壁が横に大きく開き、月明かりが島を照らす。

 なんと船が入れるほどの入り口が現れていた。


 確かに鉄道や蒸気船もある世界だ。

 やろうと思えば、こんなことも充分に可能だろうが……。


「こ、こんな仕掛けがあるなんて!」

「まるで大海賊フューラーの物語だな」


 その名前はエミリアも知っている。

 500年以上前、イセルナーレにいたという海賊を題材にした物語だ。


 多分、ノリとしては前世の黒ひげとか大航海時代の海賊なのだろうけど……。

 今の光景はそれに等しい。


 ロダンが岩壁から助走なしで船へと飛び、軽々と戻ってくる。


「ただいま」

「おかえりなさい、大丈夫?」

「問題ない。ふむ……この船のサイズなら入れそうだな」


 岩壁の開口部は船よりもかなり大きい。

 だが、この船の2倍まではなさそう……せいぜい入れるのは小船サイズだ。


「このまま進むぞ」

「うん、わかった……!」


 声が上擦るのをエミリアは必死に抑える。

 ロダンの母の遺言――その足跡を辿るはずが、宝探しみたいになってきた。


 船上のライトが岩壁内部を照らす。


 内部はかなり暗いが、完全な暗闇でもない。

 上部と側面のスポンジ構造がわずかに外の光を取り込んでいるからだ。


 海水が奥まで入り込み、中央に小さな浮島がある。

 

「言うまでもなく、あそこが怪しいな」

「行ってみましょうか」

 

 船を衝突させないよう、ロダンが慎重に船を操作する。

 ゆっくりと船が内部へと入っていく。

 

(ところで精霊の気配は――)


 パプリカみたいな体型の精霊。

 いるならば岩壁の内部のはずだが。

 

「……あ」


 岩壁内部は一部、棚のようになっている。

 そこにすやすやと眠る、精霊アザラシがいた。


「ふきゅ……」


 体長は大人と同じほど。

 しかしかなり太めで、ぺちぺちとヒレを動かしていた。


「……パプリカだな」

「そ、そうね」


 波の音を枕にしているからか、船の侵入にも気づかない……。

 かなりののんびり屋のようだ。


 ロダンが振り返り、開いた岩の扉を見やる。


「岩の扉は上だけか……。潜って入ってきたんだろう」

「なるほど……。でもこれは偶然よね」

「そうとも限らない。母の遺言は優れた魔術師に向けてのものだ。意図された可能性もある……」


 ロダンがぽっかりとドーム状に展開された島の内部を見上げる。

 

「それにこんな仕組みを母が作ったとも考えられない。あまりに大掛かりだ」

「えっ……じゃ、じゃあ誰が?」

「わからん。答えがあるとすれば――」


 船が停止する。

 中央の浮島まで数十メートルの距離だ。


「あの浮島にある。行くぞ」

「……うん、でも私はどうやって?」


 ベルトを外し、エミリアが立ち上がる。


 船から浮島までは普通に飛べる距離ではない。

 ロダンの持っているルーンの装具もエミリアにはなかった。


 となると、できる方法は――。

 エミリアの顔が青ざめる。


「ま、まさか泳げとか!?」

「そんなことをするまでもない」


 言うなり、ロダンがエミリアを軽々とお姫様抱っこする。

 合理的だがあまりに突然のタイミングだった。


「はっ!? こ、これって……!」

「……嫌なら泳ぐか」

「ううっ! 異存はないです……」


 ロダンがエミリアを抱えたまま、船から飛び上がる。

 ふたり分の体重を加味しても跳躍力は損なわれていない。


 衝撃も感じず、ふわりとロダンは着地した。

 そのまますっと浮島で降ろされ、エミリアは息をつく。


「はぁ……ありがと」

「気にするな。しかし……」

「はい?」

「軽すぎる。もう少し君は食事を()ったほうがいいな」


 嘘か本気かわからないロダンの言葉。


 多分、照れ隠しかなとエミリアは直感する。

 切り替えて浮島に向き合ったほうがいいだろう。


 浮島で舞う砂埃と若干の照れをエミリアが手で払う。

 

「ご忠告どうも。……さて、何があるのかしらね」

【お願い】

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