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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-2 残されたモノ

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85.弁明とサラダ

 夕方、エミリアの自宅にセリスがやってきた。

 料理を学ぶため兼フォードとの留守番のためである。


(夜にフォードとルルを残すのは、やっぱりね)


 セリスが引き受けて夜もいてくれるなら、エミリアとしては大いに安心だ。

 それとセットで料理を教えるわけであるが……料理実習の前に、エミリアはさきほどのランチの件をセリスへと謝った。


「ごめんなさいね、雨の中に置いてきてしまって……」

「いいえ! 全然……精霊カモメくんとイワシを頂きましたし」


 うん……?

 イワシというと、あの作業現場に置いてあったやつだろうか。

 ほとんど意味のない験担(げんかつ)ぎのイワシ缶……。


 怪訝な顔が伝わったのか、セリスが急いで弁明する。


「雨が降ってきて、さすがにイワシ缶もしまうってなって――それでは私が頂きますということで、その場で食べたんです。イセルナーレの缶詰めってやっぱりウォリスより断然おいしいですよね。小腹が良い感じに満たせました」

「そ、それで後半部分のほうは……?」

「結界の外に小さな精霊カモメくんがいたので、精霊魔術で呼んで一緒にイワシを食べたのですが……マズかったですか?」


 多分、エミリアが先日呼び寄せた精霊カモメだ。

 まだあの辺を飛んでいたのか。


「60メトロ以下なら合法でいいかな、と……」

「まぁ、そうね……」


 精霊カモメと並んでイワシを食べるセリス。

 ブラックパール船舶の作業員は驚いたと思う……。


 マニュアルの発動にはならなかったのだろうか?

 まぁ、誰が呼んだのかは明白な状況ではあったのだろうけど。


「精霊魔術をいきなり使うとびっくりさせてしまうかも」

「むむっ、確かに……一般の方は精霊魔術を見る機会が少ないかもです。気をつけます」


 ウォリスでは精霊を呼ぶことは結構気軽な行為だ。

 貴族のほとんどが精霊魔術を使えるのだから、そうなるのだが。


 しかしあの夜の港での反応を見る限り、イセルナーレの一般人全員が同じとは思えなかった。

 セリスも理解してくれて話が終わる。


 次は料理の実習のほうだ。

 まずは野菜の切り方――とりあえずはレタスだ。


 精緻な切り方もあるが、これはざっくりとでオッケー。

 まずは包丁に慣れることから……。


「きゅーいきゅい! きゅいきゅい!」

「んふー……」


 フォードはテーブルに顔を乗せて、ルルのサンドバッグになっている。


 ぺしぺしぺし……。

 羽の運動で摂取した栄養をきっと消費してくれるだろう。

 ぺしぺしされたほうも幸せになる一石二鳥の方策だ。


 力の入りやすいセリスをなだめつつ、エミリアは料理の基礎を教えていく。

 これらはまだ基礎のひとつでしかなく、まだまだ時間はかかるだろうが。


「パスタを茹でる時は水に対して1%の塩を入れて……」


 塩の量については諸説あるが……。

 2%のほうがいいという人もかなりいる。


 とはいえ、まずは基本から。

 沸騰した鍋のお湯をセリスがじっと見つめる。


「……パスタは折っちゃいけないんですよね?」

「イセルナーレで折った形は珍しいわ。料理本にも『絶対に折るな。罪に値する』って書いてあるし」


 パスタをどう出すか、これはもう国次第だ。


 イセルナーレのレストランで折られたパスタが出ることはない。 

 ウォリスではぱきぱきに折って出てくるのだが……。


 そんなことを話しながら、貝のスパゲッティーと酢漬けのイカとレタスのサラダ、トマトスープを作り上げる。


「んー、貝のスパゲッティー、おいしいー」

「きゅーい!」


 フォードとルルは好き嫌いがないので作り甲斐がある。

 ルルは酢漬けのイカをよく噛み噛みしていた。


 セリスはサラダを食べて唸っている。


「うーん、サラダもトッピングで味が大きく変わりますね」

「漬けられた水産物やハーブ類は結構、お手軽に変化が楽しめるわね」

「食料品店でチェックしてみます……!」


 サラダには酢漬けのイカ、それに少量のハーブも入れていた。

 適度な酢や発酵と香辛料は野菜の旨さを引き立たせてくれる。

 

 まだまだセリスから目は離せないけれど、教えられたことの吸収速度は早い。

 数か月で形になるのではないだろうか。


 皆で夕食を食べた後、セリスにフォードとルルを任せ、エミリアは夜の街に出る。

 待ち合わせの時間に間に合うように。


 身体のアルコールはすっかり消えている。

 夜空は昼の雨が嘘のように星で輝いていた。

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― 新着の感想 ―
3周目〜。 エミリアさん、現在、お母さんに職人に師匠に……とお忙しい毎日。なので恋愛の入る余地は無いのだ!!
イセルナーレは砂漠でパスタ茹でそうなことを。 雄鶏は潰さず調理するみたいな各国の料理ルールもありそうですね。
イワシの缶詰を、その場で…… 精霊へのお供えに置いてあった物だから、フォークとかピックとか無かったですよね? ということは、手掴みですね! ちょっと見ないうちに、ずいぶんワイルドになったものです。 …
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