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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-2 残されたモノ

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80.第一工程の終わり

 予想通り、分割することによって作業は円滑に進んだ。

 分割後の塊をエミリアとセリスが見て回る。

 

「この塊は思ったよりもルーンがありませんね」

「そうね。さくっと終わらせようかしら」


 3つの塊のうち、ひとつはさほどのルーンもない。

 記録するまでもなく、エミリアとセリスの作業分担でルーンが消えていく。


 これで残りは大きな塊がふたつ……だが、時間はさほどかからないだろう。

 イヴァンが消去の終わった塊を検査していた。


「ふむ……問題はありませんね。これは移動させましょうか」

「あれ? グロッサムさんの検査は……」

「このサイズなら港入り口の、もっと交通の良いところに動かせますので。そちらで検査はお願いしましょう」


 イヴァンはやはりかなりの合理主義者だった。

 彼はそのまた次の工程を考えているらしい。


「2番口なら魔術ギルドからそう遠くもありませんし、鉄鋼工場も近い……。作業長、早速移動させてください」


 イヴァンのてきぱきとした指示が飛ぶ。

 作業員も一糸乱れず、イヴァンの指示通りに動く。


 部下からも信頼されているのだろう。

 仕事のできる男だ……。


「エミリアさんの提案のおかげで、スペースが空きますね。先々の工程まで考慮されるとは……」

「…………いえいえ、私なんかまだまだです」


 イヴァンの混じり気のない称賛にエミリアはすまし顔で答える。


 エミリアはそんなところまで全然考えていない。

 せいぜい自分の工程くらいだが……いい方向に勘違いしてくれている。


 罪悪感がないわけでもないが、その程度の世渡りはできる精神年齢だ。


 そうして作業に戻って、小一時間。

 昼が近くなってきた。相変わらず曇り空なのが気になる。

 否、空はますます暗くなっているような。


 指揮を行うイヴァンは作業現場に出たり入ったり……。

 やはり大きな鉄塊が動くので忙しそうだ。


 だが、イヴァンは疲れた様子を微塵も感じさせない。


「残りのふたつも順調そうですね」

「ええ、この面にはルーンがさほどありませんでしたので。時間にして半日もかからず終わるかと」

「承知いたしました。実は2個めの残骸がまもなく引き上げられ、港に到着します。サイズ的にはこの1個めよりも小さいはずです」


 残骸がないとエミリアの作業もなくなってしまう。

 引き上げも予定通りなのは喜ばしい。


「おおー……わかりました、到着次第そちらも着手いたします」

「ぜひお願いいたします」


 エミリアは仕事をしていたい人間だ。

 次の残骸も来る、となってエミリアはモチベーションが上がってきた。

 

(こうやって次々に処理していけば、夏の間には終わるかな?)


 ルーンの処理速度は恐らく問題ない。

 野外での作業、あとは荒天の時が問題か……。


 空を見上げると、今日の曇りは本当に色濃い。

 風も湿っている。遠くの空は明るいのだが、王都周辺は雨が降って来そうな――。


「あっ」


 ぽつりとエミリアの額に水滴が当たる。

 予想通りというか、なんというか。

 

 大きな雨粒がぽつぽつと港に降ってきた。


「……ふむ、雨が降ってきましたね」

「ですね。さほどの勢いではありませんが」

  

 雨が降っても作業はできる……日傘があるからだ。


 とはいえ、雨の状況下ではルーンの消去は一段と難易度を増す。

 雑音と雨の気配が集中を邪魔をしてくる。


 とはいえ、長雨にはならない。

 作業全体の影響はたかが知れているだろう。


 イヴァンがそっと作業場の傘に入り――ふたりを見渡す。


「降雨の中では作業も難しいでしょう。昼時でもありますし、少し休憩されては?」

「そのほうがいいかも知れませんね」


 エミリアがそう、何の気にもなしに答える。

 確かにもうランチタイム。少々、お腹が減った。


 が、セリスは残骸のそばへ屈み、集中している。


「私はもうちょっと……少しずらします」

「……大丈夫?」

「集中を続けたいので……。それに雨にも慣れたくて」


 その気持ちはよくわかる。

 魔術にはリズムというか、流れがあるのだ。


 セリスにとっては初仕事。

 不意の雨でさえ経験にしたいのだろう。


 イヴァンがふっとエミリアに完全無欠の笑顔を向ける。

 女性を魅了する甘い微笑み――。


 そして仕事先としてはある意味、当然の提案が彼の口から飛び出してきた。


「では、せっかくですから昼食をご馳走いたしましょうか?」

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