表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-1 沈没船ブラックパール号

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/308

64.異質なルーン

 セリスの作業はちょうど、船体の甲板らしき部分だ。

 ひしゃげているので、エミリアも自信はないが。


「見てみましょうか」


 セリスについていき、反対側に回る。

 日傘の影――柵の名残らしき部分が、その変なルーンのある場所らしい。


「こちらです。この曲がっている部分に……」


 高さ的にはエミリアが腰を少し曲げればいい程度だ。

 ふむ……とエミリアは錆だらけの残骸に触れる。


 手で触れてみる。ルーンの魔力がかなり弱い。

 いや、元から他のルーンに比べて弱いのか……?


 さらにルーン自体が走り書きのように思われた。

 他の船体のルーンと明確に違う。


 ルーンの刻み方には様々な流派があるが、そのほとんどは読みやすく構成されている。

 例えるなら明朝体のような……。

 この船体のルーンはまさに工業製品みたく四角ばっている印象だ。


 それが、このルーンは即座にわかる程度には異質である。

 そう、まるで行書体で書かれているような……どんな初心者の魔術師でも混同はしないだろう。

 

「……確かに変ね」


 この船体に刻まれたルーンは画一的だ。

 ルーンが歪んでいるのは、経年劣化と刻まれた土台である船体の破損のせいである。


 恐らく、ひとりの親方の監督でルーンを刻んだはず……なのに、このセリスの指摘したルーンは別人が作業したとしか思えない。


 とりあえずルーンに指を這わせ読み進めて――エミリアの背中が一気に冷たくなった。


「……これ」

「ど、どうかしましたか?」


 セリスの問いかけに即座に返答できない。


 このルーンは言うならば行書体だ。

 刻んだ人間の癖が強く出ている。


 だからだろうか、エミリアの脳裏にひとりの人間が思い浮かぶ……。


(この魔力の質と字は――ロダンだ。彼に一番近い。だけど、そんなはずは……)


 学院時代、エミリアはロダンのルーンを何度も見た。

 もちろん、刻んでいる現場も。

 

 だから見間違えるはずかない。

 このルーンはロダンが刻んだもののように思える。


 でも、そんなことがあるはずない。

 この船が沈んだのは15年前だし、手元のルーンは間違いなく経年劣化している。

 年齢的に彼が刻んだ可能性はない。


(ロダンじゃないとすると、残るのは……)


 頭をフル回転させ、エミリアはなんとか言葉を紡ぐ。


「……ごめんなさい、読み取るのにちょっと集中しないといけないみたい。あなたはこのルーンを読んだのよね?」

「なんとか読めましたが……。適当な文字を刻印しているだけみたいなんですよね。意味のあるルーンなんでしょうか」

「どうかしら……。とりあえず、私のいたところから作業を続けてもらえる?」

「はい……! そちらはお任せいたしますっ!」


 セリスは反対側に回り、エミリアの作業の続きを担当することになった。


 ひとりになったエミリアは必死にルーンを読み取ろうとする。


 ルーンは特定の文字、デザインを刻んで効果を発揮させる魔術だ。

 エミリアの理解ではルーンはプログラム言語のようなもの。


 なので知識さえあれば、他人が刻んだルーンを解読することができる。


 この謎のルーンに特段の効果はなさそうだ。

 防護、航海、錆止め……既存のルーンではない。

 

 いや、それよりもこのルーンを刻んだのは……。

 エミリアの首元に冷や汗が流れる。


(ロダンのお母様……しかいない)


 血縁関係で魔力の質は似る。

 これは魔力を生み出す身体構造そのものが似るからだと言われる。


 そしてルーン文字の筆跡そのものもロダンによく似ている……。

 母親から教えを受けたのだろうか。


 海軍の船長なら、相当な魔術師でも不思議はない。

 エミリアはかすれかけたルーン文字をなぞり続ける。


 だがルーンは混ざり、重なり、無意味な文字列にしか見えない。


(……読めない)


 あえて日本語に直したなら『ぬぬべひらまくのとえとささせになるめ……』などだろうか。

 だが、確信はない。

 暗号かもしれないし、読み間違えているだけかもしれない。

 

 ただ、これが何らかのメッセージなのは明白だ。

 でなければ、こんな甲板に刻むはずがない。効果のないルーンにする必要もない。

 

 しかしエミリアにはルーンは読めても意味がわからなかった。

 セリスも同じだ。これに意味が込められているなら……読める人間を連れてこなければ。


(それはひとりしかいない、よね)

 

 ロダンをこの場に連れてきて、読んでもらうしかない。


 幸い、離婚調停の件で2日後に会う。

 その時に話してみよう。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ