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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-1 沈没船ブラックパール号

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61.演習場にて

ロダン視点です。

 伯父であるレッサムの訪問をロダンは誰にも漏らさなかった。

 ブルースにも、である。


 法務官として、ロダンと王族のブルースは様々なことを相談できる仲だ。

 だが、それはあくまで法務官の範囲の話である。


(イセルナーレの軍は込み入っているからな……)


 本日のロダンは騎士団と陸軍の演習を視察していた。

 これも騎士団の任務のひとつである。


 イセルナーレには大別して3つの軍組織が存在していた。


 ひとつは最大の兵員を擁する陸軍。

 主に平民で構成され、広大な国土の防衛を担う軍隊だ。

 ライフルで武装したイセルナーレ陸軍はおおよそ20万人を数える。


 次がイセルナーレの海軍だ。

 大砲を積んだ艦隊、勇壮なる兵――陸軍に規模は及ばないが約8万の規模である。


 最後にイセルナーレ六大騎士団。

 陸軍、海軍とは別に魔術師のみで構成された軍隊だ。

 ロダンの率いる王都守護騎士団もここに属する。


 この特異な軍組織はイセルナーレの伝統、そして魔術の有用性と脅威から今も存続が認められていた。


 兵力は六大騎士団で総勢数千人ではあるが、その戦力は恐るべきものだ。


 もし広大な平原でイセルナーレ陸軍全体と六大騎士団全体が野戦をすれば、陸軍が勝つだろう。

 だが、もし市街地や森林地帯での戦いなら六大騎士団が勝つとされる。


 それほどまでにルーンの武具で身を固めた魔術師は強力だ。


 砂煙の舞う、荒れたグラウンドの演習場をロダンは巡回する。


 陸軍はライフルと銃剣、騎士団の兵はルーンの武具……互いに致死性のない装備で交戦するのだ。


「団長、考え事ですか?」

「……ああ」


 火薬の爆ぜる音を聞きながら、ロダンは横に立つテリーを見やる。

 今は休憩時間で双方ともに離れて装備を点検していた。


「なんか最近、演習が多くないですか? どこかと戦争するんですか?」

「まさか。ただの予算消化だ」


 実のところ、テリーの懸念は的外れではなかった。


 戦争を仕掛ける予定は()()()()()()()()()()

 だが、今はウォリスの件がある。


 エミリアの離婚劇で軍隊を動かすなど考えられないが、小競り合いが起きる可能性まで排除はできない……。

 結局のところ、他人の愚かな行為を止めることなど不可能だからだ。


「小隊、前へ! 銃器、弾薬確認!」


 陸軍の威勢の良い掛け声が響く。

 ライフルの普及は戦争の形をすっかり変えた。


 だが、ルーンの防具を貫くには至らない。

 強固なルーンと魔力で補助された魔術師を不要とするところまで銃火器は進化してなかった。


「ならいいですけどね。俺は精霊ペンギンや精霊アザラシを野外に連れ出す仕事で満足ですよ」

「ふっ……確かにな」


 ロダンは思わず口角を上げてしまう。

 

 治安維持は警察もやるが、精霊が関わる案件は王都守護騎士団だけの仕事だ。

 だからこそ騎士団が存続しているとも言える――結局、魔術抜きに社会は成立し得ないのだから。


「……そう言えば、俺そろそろ結婚しようかなって」

「なんだと?」


 脈絡のないテリーの言葉にロダンが聞き返す。


「いえね、演習続きで不安が募ったのもちょっとありまして。ゴタつく前に身を固めるのもありかなぁと」

「去年の今頃もそんなことを言っていたな」

「あの時とは別の人です。今度こそいい女性なんですから」


 こめかみを軽く揉むロダン。

 

「一昨年とはさらに別か?」

「ええ、もちろんですよ……」


 テリーは壊滅的に女運が悪い。

 顔も性格も稼ぎも良いのに、なぜだか変な女に引っかかるのだ。


「今回は大丈夫です。彼女、教会通いに熱心ないい人なんですよ。今度、そこの司教さんと俺も話をする予定で」

「はぁ……」

「話を聞く限り、悪い感じは全然ないんですよね。本当に信仰心があるというか」

「……その話、半月ほど止めてみろ」

「えっ?」

「騙されたと思ってそうしろ」

「団長がそう仰るなら……」


 変なところで素直なのが良いのか悪いのか。

 ロダンの言うことは全部聞き入れるので、見捨てられない。


 甲高い笛の音が鳴る。休憩時間の終わりだ。


(普通に考えれば怪しいと思うだろうに。そんなに焦って結婚したいものか……?)

 

 情勢がきな臭くなって、結婚を急ぐものか。

 一般の人間はそうなのかもしれないが。


 その辺りの感覚は全然わからない。

 ロダンに結婚する気はないからだ……少なくとも、まだ。

イセルナーレの人口は4000万人くらいです。


【お願い】

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