表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
1-5 心機一転

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/308

45.セリスの芯

 オルドン公爵が打ちひしがれながら連れていかれる。

 彼が行くのはモーガン修道院だ。


 絶海の孤島にある、イセルナーレの収容施設。

 世間からは徹底的に隔離され、入れば二度と出ることは許されない。


「はぁ……」


 セリスが青白い顔をして、近くのテーブルに手をつく。

 終わってみると嵐のようだった。


 セリスの心情は察するに余りある。


「……大丈夫?」

「ええ、はい……はぁ、終わったんですよね……?」

「そうね、とりあえずは」


 離婚劇は終わったが、どのように広がるかはまだわからない。


 ロダンは万全を尽くす。それは信頼している。

 でもイセルナーレとしても300年振りの措置なのだ。


 それにエミリアとフォードの生活はこれからも続く。


 元夫がどうなるか……その詳細はエミリアも知らないし、知りたくもない。

 あんな男の行く末に興味を持つほど暇ではないのだから。


「……改めて、セリスさん。あなたに謝罪します」

「ああっ!? いえ、そんな……セリスでいいですし、謝らないでください!」


 セリスが精一杯の笑顔を浮かべる。

 疲労の色はあったが、この笑みは嘘ではない。


 憂鬱で、鉄道から身投げしようと思っていた結婚がなくなったのだ。

 先行きの不安はあっても、不服はない。


「正直、とてもびっくりしていますけれど……あの人との結婚、全然乗り気じゃなかったので。このほうが良かったのだと思います」

「そう言ってもらえれば、私も気が楽だわ」


 ウォリスの貴族、魔術師、年齢も21歳と16歳でそこまで離れていない。

 エミリアとセリスの間には奇妙な連帯感があった。


「もし、本当に良かったらだけど……しばらくイセルナーレで暮らさない? 力になるわ」

「……そう、ですね」


 セリスは静かに考えた。


 このままウォリスに戻って、父であるデレンバーグ大公が喜ぶはずがない。

 戻っても……同じような、ろくでなしにまた嫁がされる可能性もある。


 あんな思いをするのはもうごめんだ。


 それに比べたら、イセルナーレにそのまま住むというのは魅力的だった。

 少なくとも自由がある。自分の人生を選べる。


 10年……いや、20年ぐらいすれば父の考えも国の風向きも変わるだろう。

 悪くない選択肢のように思える。


「やっていけるでしょうか、私」

「大丈夫よ」


 その点についてだけはエミリアは胸を張れた。


「この国は、とってもいいところだから……!」


 



 後事(こうじ)を引き継ぎ、エミリアとセリスはロダンに馬車で送られることになった。

 シャレスや他の高級官僚には仕事がたくさんある。


 もちろん、今回の顛末について――その経緯はセリスに知ってもらわなければいけない。


 最初から今日までのことをかいつまんで説明する。

 馬車に揺られていたセリスは、話を聞き終えて吐き捨てた。


「ほんとーに屑ですね……あの男は」

「まぁ、否定はしないわ」

「イケイケの公爵家に生まれるとああなるのでしょうか? 父もその気配はかなりありますけれど……」


(思ったよりも結構ズケズケ言うわね)


 最後に会ったのは4年以上前。

 その時の印象に比べると、セリスはかなりタフで芯があった。


(前世の記憶が戻る前の私よりも、しっかり自分がありそう……)


 この性格で魔力も豊富だ。


 魔力量で言えば、エミリアとロダンがほぼ同格。

 その次にセリス――でも魔力は生涯を通じて成長する。

 

 魔力は5歳前後で急激に伸び、その後は身体とともに魔力も成長する。

 20歳前後で成長はとても緩やかになるが、例外もある。


 これならばイセルナーレで魔術師としての職を得るのは難しくないだろう。

 セリスの持って生まれ、今まで努力したことは無駄にはならない。


「……デレンバーグ大公がどう出るか、だな」

「ロダン様、父は豪快なようでいて打算的です。貴国からちょっとキツめの書状を送れば、大きな動きはしないかと」

「ふむ、シャレス外務大臣と協議して善処しよう」


 ロダンの瞳もどこかほっとしているように感じる。

 エミリアはもちろんだが、セリスの前向きさがそうさせるのだ。


「……はぁ、にしてもお腹が空いてきました。この数日、ご飯が喉を通らなかったんですけど、今なら食べられると思います」


 セリスがぽつりと呟く。

 その気持ちはエミリアもよくわかる。


 ろくでもない男と縁が切れるとお腹が空くのだ。


「じゃあ、市街地で何か食べる? あ、私の息子が一緒だけれど……」


 この馬車が向かっているのはイセルナーレ魔術ギルド。

 預けているフォードとルルを引き取らなければ。


「ああ、いいですね……でも私にはちょっと手持ちが」

「その程度は俺が出す」

「本当ですか!? では、食べたい物があります!」


 空腹感を自覚できるようになったセリスが声を張り上げる。


 なんとなくだが、エミリアには次の台詞が予想できた。

 まさか……しかし……でもウォリス人なら……。

 何を食べたいと思うだろうか。


「イセルナーレなら、やっぱりカニですよね!」

(V) (O ww O) (V)

ウォリス人の選ぶイセルナーレ食材ランキング、堂々1位……!


【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
王様の側近「ふはははは!公爵ひとりの生贄で外交問題が全て解決したわ! 他国であれば無礼を咎め多額の賠償請求と領土割譲を求めるところだが、無能な公爵1人を病気療養の名目で差し出すだけで満足するとはのぉ・…
直前まで、列車から飛び降り自殺をしそうなくらい追い込まれていたセリス…回復が早過ぎるww 最後のセリスの問題 デレンバーグ大公ですが、時間が解決してくれるかもしれませんね 20年も経てば、大公は身罷っ…
(V) (O ww O) (V)(V) (O ww O) (V)(V)o¥o(V)(V) (O ww O) (V) (;´∀`)いや、カニカニ聞いていた物ですから… >「もし、本当に良かったらだけど……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ