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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
1-4 エミリアという母

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37.中央会議室

 イセルナーレの宮殿に到着したエミリア。


(おおー……ウォリスの何倍大きいんだろう? 5倍は大きいような……)


 遠景や本の挿絵としてイセルナーレの宮殿は知っていた。


 しかし、やはりこうして間近に接するとウォリスとの格の違いに圧倒される。

 宮殿で働く人も老若男女、数え切れない。


「こちらだ」


 ロダンに案内され、エミリアは法務省の廊下を進む。


 向かうは中央会議室。

 法務省の中央、最上階に位置するもっとも権威ある一部屋だった。


 法務省の雰囲気は重々しい。

 快活なイセルナーレの市街地とはまるで違う。


 イセルナーレの法と書類主義の中核であることが重厚さを醸し出しているのだろう。

 

 エミリアは襟を直しながら、少し不安になった。


「……私、大丈夫よね?」

「問題ない。全員、良い方々だ。今日会う方々に比べれば、俺のほうが取っつきづらいだろう」

「そ、そう……」


 ロダンがこんなふうにエミリアを励ますなんて。

 学院時代に何回あったことだろうか……。


 逆にプレッシャーがかかったエミリアは軽く呼吸を整える。


 やがてふたりは、中央会議室の前へと到着した。


「行くぞ」

「うん……!」


 頷き合うふたり。ロダンが軽快に扉をノックする。


「ロダンです。依頼人のエミリア嬢とともに参上いたしました」

「ご苦労、入れ」


 間髪入れずに、会議室から声が返ってくる。


「失礼いたします」

「失礼いたします……!」


 ロダンとエミリアは中央会議室に並んで入室した。

 

 会議室はまさに、会議中であった。


 部屋を区切るように長机がふたつ、向かい合うように配置されている。

 左側の机には外務省、右側の机には法務省の人間が座っていた。


(うわっ……テレビで見たやつ!)


 エミリアの席は入り口からほどない、立派な机と椅子だ。

 だが、用意されているのはどう見てもひとり分だけ。


 ロダンの席はない。


 この場のロダンはエミリアの付き添い人。

 そのランクの話し合いなのだ。 


 右側の机の中央に座るブルースがエミリアに微笑みかける。

  

「ご足労、痛み入る。法務省顧問のブルース・イセルナーレだ」

「エミリア・セリドと申します。本日は貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございます」

「なに、本案件はイセルナーレの法と威信に関わるもの。どうぞ座ってください」


 出席者のことは馬車で聞いているとはいえ、緊張する。

 イセルナーレの切れ者王族を前にしているのだから。


 促され、エミリアは用意された席に座った。

 座り心地は極上だった――にこやかなブルースの瞳が全然笑っていないことに気づかなければ、もっと良かっただろうが。


 続けて、左側中央に座する外務大臣のシャレスが言葉を発する。

 スキンヘッド、白髭のシャレスはただ、そこにいるだけで威厳があった。


「イセルナーレ外務大臣のシャレス・ボーゲンだ。本日はよろしく」

「はい……! こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「時間は取らせぬ。……ふむ、魔力の隠匿を止めてもらっていいかね?」


 シャレスが蛇のような目をエミリアに向ける。

 頷いたエミリアが薄く、息を吐いて――魔力を隠すのをやめる。


 人前でやめることはめったにない、魔力の隠匿。

 本能レベルの魔力操作を止める。


 瞬間、膨大な魔力のうねりが会議室に現れた。

 この場の誰よりも大きく、激しい。


 それがエミリアの魔力であった。


 同席した事務方の官僚が目を見開き、視線を交わす。

 その魔力は想像を遥かに超えていたからだ。


「ははっ、これは驚いた」


 ブルースが歯を見せて笑った。


 エミリアの放つ魔力は大きすぎて、ブルースでさえ全容を掴み切れない。

 ただ、彼が知る中でこれほどの魔力の持ち主は5人といなかった。


「ロダンと争ったというウォリスの貴族学院の首席は、これほどか。ウォリス恐るべしだな」

「殿下、エミリア嬢は貴族学院の教師陣も超えるほどの精霊魔術師ですぞ。不思議はないでしょう」

「いいえ、そんな私なんて……!」


 シャレスの言葉をエミリアは手を振って否定する。

 だが、シャレスは小さく肩をすくめた。


「私の聞くところでは、そのような評判だったそうだがね。もっとも、ウォリスの風潮からすれば――仮にそうだとして、君が明らかにするとは思わないが」

「……!」


 それはエミリアの小さな秘密であった。


 実際、何人かの貴族学院教師はエミリアの才覚を認めていた。

 数十年に一度の精霊魔術師かもしれない、と。


 学院時代でさえ、エミリアの能力はその段階に達していたのだ。

 だが、エミリアがそこに価値を見出さなかったのも確かだった。


 学院首席以上の名声を博したとしても、中傷や嫉妬を買うだけ。

 まして当時のエミリアはすでに婚約者がいて、嫁ぐことが決まっていたのだから。


 それをシャレスはどうやってか、リサーチしていたらしい。

 あの閉鎖的なウォレスから情報を取っている。


(恐ろしい……っ!)


 シャレスが書類とエミリアを見比べ、ゆったりと言う。

 その口調はこれまでよりも優しかった。

 

「……当人確認はこれで大丈夫。魔力の隠匿を再開して結構」

「はい……!」


 軽く集中したエミリアが魔力を抑制した。

 それを見届けたブルースがよく通る声で宣言をする。

 

「では、エミリア・セリド殿の求める離婚調停について――首脳会議を実施する」

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― 新着の感想 ―
閉鎖的でありつつも驚くほどいい加減で古い統治体制の国なので、精霊避けの結界とは違って防諜方面はザルなのでは…?と思ってしまいますね。 周囲の国も見下して(つまり、舐めて)いるようですし。
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