335.ルルとの繋がり、精霊魔術
私とルールーは答案の山に向かいながら、採点作業を。
ガンツはルルとフォードに向かい合っていた。
まぁ、そのフォードも持ってきたお絵かきセットで絵を描いているのだけれど。
「ほーん、上手いもんだなぁ」
「ありがとうー!」
ちらっと見ると、フォードが描いていたのは氷山と海だった。
一面に白の氷と青の海。
それだけなのだが、エミリアにはわかっていた。
ここから絵の中央に動物が描かれる。
フォードは風景から描いて、あとから動物や建物を足す。
今回もそのような順番で書いているみたいだった。
「きゅー!」
ルルは白の色鉛筆で雲をちょんちょん足していた。
「絵も描けるんかぁ。偉いなぁ」
「きゅっ!」
ルルがふふんと胸を張る。
ガンツはふむふむと色々と考えながらフォードとルルの面倒を見てくれていた。
一方、エミリアとルールーは採点作業を鬼のような作業効率で進めていく。
各学生の答案用紙と模範解答と照合。
さらに実技の棒について、エミリア
製作の消去した品と比較……。
木と金属の棒の評価は5段階に分かれている。そのそれぞれに基準となる棒を用意しているので、さほど迷いはしないはず……だった。
手をぱぱぱーっと動かしながら、ルールーが微笑む。
「これだけしっかりしていれば、採点も早く進みますね。さすがです!」
「ありがとう。でもこれは教務課に言われたからで……」
「教務課にきちんと従えるのが、いいってことさ」
ガンツがヒゲを撫でつける。
「公平なら学生は結果に従う。ここは大学だから、結果に満たない学生はそう伝えないといけねぇ……その大切な公平さのひとつが教務課だ」
「そうですねぇ。模範解答を見ているとエミリアさんは事務作業能力が極めて高いとわかります」
それはまぁ、前世のおかげだ。
事務員としてのささやかな経験が段取りを良くしてくれている。
ルールーも採点の経験はあるようで、かなりスムーズだった。
ある程度進めたところで、本日の作業は終わりにした。
残りの時間はルルと精霊魔術についてだ。
「きゅいきゅ」
ルルはエミリアの膝の上にふにふにと座っている。
「この子は他の精霊とちと違う気がするのぉ……」
「きゅっ」
たぷん。
ルルが揺れる。
お腹の毛並みと脂肪が違いますよ。余裕のたぷみです。
そんな風なことを言っている気がする。
ルールーもガンツに頷いた。
「とても賢いように思います」
「きゅー?」
そうかなー?
そんなルルのお腹をフォードが撫でる。
「強い絆がある場合、そんなこともあるがの……うむ。ダイトも精霊と語らうのが上手かった」
エミリアの曽祖父、セリド公爵家のダイト。
ガンツの友人だったと言うが……彼も精霊との繋がりが強い人だったのか。
ガンツが手を伸ばし、ルルの頭を撫でる。
「では、見せてもらおうかの。君の精霊魔術を」
「はい」
エミリアはルルの身体の両側に手を添える。
ふにふに。
久し振りにルルと精霊魔術で繋がる。
意識を集中して、ゆっくりと息を吸って吐く。
全身に魔力を行き渡らせて……無の境地へ。
静かな大学内の音さえも遠ざかる――自分の外も中も。
フォードもエミリアの隣でぐっと息を呑み込んでいた。
周囲の音全てがなくなり、あるのはルルの存在だけだった。
ふにふに、ぽよぽよ。
たっぷり毛並みのルルが無の境界で揺れる。
「きゅーい」
何度も繋がった経験からか、ルルとの接触はスムーズに進んだ。
だが、そこでふっと……エミリアの意識が飛んだ。
気がつくとエミリアは山々に囲まれていた。
遥かなる悠久の山々の峰。
もしかすると手が届くと思えるほど近い雲。
そこには壮年の黒髪の男性が立っていた。どことなくエミリアに似ている男だった。
「きゅい」
その男性は目線を下げて、そばにいる存在を見つめた――そこにはぽよよのルルが立っていた。
エミリアの意識はふたりのそばで、山々を捉えている。
(――ドゥナガ山脈)
忘れることはない、ここはエミリアの生まれ育ったドゥナガ山脈だ。
【お願い】
お読みいただき、ありがとうございます!!
「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、
『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!
皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!
何卒、よろしくお願いいたします!







