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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-2 ふたつの因縁

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308/308

308.次なる試験へ

 釘を刺したトリスターノは、オーマの騎乗姿と学生の態度の変化を確認して、去っていった。


 その後に試験も行われたのだが……問題は特になかった。


 オーマは試験の準備をきっちりと行い、確かに非の打ちどころがない。


(動物の世話はマメでないと務まらないしね)


「……わふわふ」

「にゃう……」


 犬ちゃんと猫ちゃんも騎乗するオーマを見てから背筋が伸びていた。


 どデカいスレイプニルを乗りこなしている姿は、やっぱりインパクトがあるようだ。


 ちなみに動物たちは試験でも活躍する……ふれあい実技として。


 試験の後半はふれあい実技だ。


「にゃうん!」


 ぺしーっ!

 たまに学生へ猫パンチが繰り出される。


 その時は物静かな女子学生の手を猫ちゃんが払いのけていた。


「わ、わたし……なにかダメでしたか!?」

「いえ……大丈夫よ」


 今のは猫ちゃんの気まぐれ猫パンチである。


 特に理由はない。

 理不尽な猫パンチ、猫暴力であった。


 エミリアにはそれがわかる。

 この猫ちゃんはそういうことをするのだ。可愛いやつめ……。


 スレイプニルについているオーマも頷いていた。


「その猫ちゃんは少し気まぐれなんだ。点数には響かないから」

「そ、そうなんですね!」


 そうなんです。

 猫ちゃんはふてぶてしい顔になっていた。


 ちなみにルルは試験の間、テーブルの上ですやぁ……としていた。


 ということで、試験が終わってエミリアは次の試験の手伝いに向かうことになった。


 試験用紙をまとめるオーマがエミリアに頭を下げる。


「今日は本当に助かった! ありがとう……っ!」

「そんな……私もスレイプニルに乗れて楽しかったですよ」

「そう言ってもらえれば、こいつも喜ぶ。また乗りに来てくれ」

「はい、ぜひ……!」


 スレイプニルがふんふんと頷いて尻尾を振る。


「ぶるるっ……」

「うん、また来るわね」


 ねむねむのルルをバッグに収納し、エミリアは試験会場をあとにした。


「きゅきゅいー」


 まったねー。

 ルルが羽をふにふにさせる。


 犬ちゃんはわふわふと吠え、猫ちゃんも尻尾をふりふり。

 スレイプニルもひづめを打ち鳴らして、可愛く挨拶してくれる。


 さて、次の試験は――精霊魔術の試験だ。


(ここにルルが必要ということ……? でもここの大学では精霊とは繋がらないはず)


 精霊魔術はウォリスが技術を秘匿している上、模倣も容易ではない。


 しかも精霊と繋がると莫大な力を解放することにもなりかねない。


 なのでイセルナーレ魔術大学でさえ、精霊と繋がる段階は教えないはずだ。


「なんだろうね、ルル」

「きゅい」


 精霊魔術の試験が行われるのは、動物学のすぐ近くの校舎だった。


 とことことこ。


「わー、ペンギン?」

「精霊だよね、かわいい〜」


 ルルが学生から注目を集める。

 それに対してルルは羽をちょいちょいと掲げてファンサしていた。


「きゅい……っ!」


 そうしているうちに眠気も落ち着いてきたようで、目つきがしゃっきりとしてきた。


 精霊魔術の試験が行われる会場は、校舎の中で一番広い講堂である。


 すでにエミリア以外の複数の補佐が来て、答案用紙の配置を始めていた。


「おう、来たのぅ。時間より早めじゃわ」


 杖を持ったガンツは講堂の奥で休んでいる。

 年齢的なところもあるので当然だった。


 本来ならとっくの昔に引退しているはずなのに。


「お手伝いに参りました。ええと、答案用紙の配置……などですかね?」

「……うむ」

 

 ガンツがヒゲを撫でつける。


「それは終わっておるのよ。わしがそなたを呼んだのは――精霊魔術を見てみたくなったからじゃ」

「私の……でしょうか?」

「そうじゃよ。わしの記憶通りか、どうか。あれから多くのことが変わったとは思うがな……」


 そこでガンツがかつんと杖を床について、立ち上がった。


「わしはもう50年、精霊魔術を使っておらん。それが祖国であるウォリスとの約束ゆえな」

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