303.犬ちゃんと猫ちゃん
なぜだかルルは他の精霊や動物から敬意を持たれている……。
スレイプニルも同じようだった。
ひとしきり羽をもにもにさせると、ルルがエミリアを見上げる(首があまり動かないので軽く頭を上げる程度だが、エミリアには意味がよくわかる)
「きゅきゅい」
「他の子にも挨拶したい? 大丈夫ですよね?」
「ああ、よろしく頼む。ただ、そっちのは人の言うことをあんまり聞いてくれないんだが、気にしないでくれ」
スレイプニルの後ろにはハーネス付きの犬と猫がいた。
ふたりともリラックスして大テーブルの上に寝そべっている。
犬は茶色と白に毛がたくさん。中型犬で賢そうだ。
退屈そうに尻尾をパタパタさせている。
(前世だとラフコリーかしら……?)
猫のほうは丸めで茶色。耳が折れており、ふてぶてしくも愛らしい。
犬のほうにもたれかかり、べったりとくっくいていた。
(こちらはスコティッシュフォールド……に近いかな)
この子たちも大学で飼育されている子のはずだ。
エミリアがルルを持ち運び、大テーブルのそばに行く。
もっふ。
ルルがエミリアの手によって大テーブルに着地した。
「きゅー!!!」
おはようございます!!!
ルルが羽を広げ、元気よく挨拶する。
「わう……」
「にゃうん……」
突然の挨拶に犬と猫の反応は鈍い……スレイプニルとは違った。
が、おずおずと犬も猫もテーブルの上で頭をぺたりとつける。
(ふーむ、やっぱりルルに敬意を持っているぽいっわね)
さすがのエミリアも犬猫の言葉まではわからぬ。
ルルは犬と猫にふにふにと近づくと、その頭をもふもふと撫でた。
両方の羽で……犬と猫をそれぞれ。
(贅沢セット……!!)
さすがはルル。
美味しいところを持っていくのに躊躇がない。
「わふっ!」
「にゃうーん!」
「きゅいきゅい」
そのままルルは犬と猫の頭から背中へと歩きながら羽をスライド移動させていく。
「きゅきゅい……」
ほわほわ顔のルルによってブラッシングされ、犬と猫が気持ち良さそうに目を細める。
「わふふ〜♪」
「にゃううー♪」
他の動物の心を掴むのが上手い……。
「見事なもんだ。マイペースなやつらなんだが、すっかり魅了されちまってるな」
「この犬ちゃんと猫ちゃんは……」
「本当はスレイプニルや馬、牛なんかに慣れるべきなんだが色々と確保が難しい。だからまぁ、代理という形だ」
学生の数に対し、スレイプニルまで合わせて確保するのは――まぁ、困難だろう。
魔術大学ではメインは魔術。
動物学はメインではなく、そういったのは畜産大学が別にあるからだ。
「さて、そろそろ手伝ってもらおうかな。俺が色々と置いている間、この子たちを見てもらえないだろうか?」
「はい、お任せください!」
ということでスレイプニルのお世話を交代し、犬と猫のそばにエミリアは陣取った。
座りながら、スレイプニルのお腹や足を撫でる。
オーマはその間に、せっせと問題用紙と答案用紙をテーブルの上に並べていく。
エミリアは犬と猫に油断なく手を伸ばそうとしていた。
「いい子ねー」
「……わう」
犬が新参者のエミリアをじっと見る。
エミリアは魔力を抑え、凪のような状態を保つ。
これこそ動物たちの警戒心を解きほぐす奥義だ。
「きゅきゅ」
「わっふ」
ルルが羽をふにふにとさせる。
まずは犬ちゃんがのっそり動き、エミリアの膝の上へと移ってきた。
毛並みは長く、よく手入れされている。
「ふふふ〜……」
なでなで。手に絡む毛がとても心地よい。
一方、猫ちゃんは……面倒くさそうな顔をしたままだった。
マイペースな犬ちゃんと猫ちゃん、いいですよね……(突然の語り)
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