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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-2 ふたつの因縁

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297.期末試験前

 ロダンを見送った後、エミリアは家へと戻った。


「きゅー」

「ふぁ〜……ねむむ……」


 フォードとルルはすでに眠気を感じているようだった。


 プレゼントのクッションにルルが乗って、そこにフォードがもたれかかっている。


 片付けはセリスの手で申し訳ないほど進められており、続きをエミリアが引き継いだ。


「今日はありがとう、色々と助かったわ……!」

「いえいえ。フォード君とルルちゃんのお祝いに参加できて、私も嬉しかったです」


 にこにこ顔のセリスに、手の付いていないハムやチーズをお土産として渡す。せめてものお駄賃だった。


 そうしてセリスも帰って……まだ空には夕焼けがほんの少し残っていた。


 普段ならまだ寝るには早いが、今日はエミリアも子どもたちと寝たい気分だった。


「じゃあ、そろそろおやすみする?」

「うんー……そうする」

「……きゅ」

「はみがきしないとー、ルルー」


 フォードがルルの羽と手繋ぎしながら洗面所に向かう。


 もちろんルルに歯はない。鳥だから。でも慣習として歯磨き行為はしていた。


 で、支度を整えてエミリアたちはベッドに入った。


 外は雨が降ったり止んだりのようで、結構寒い。


 ルーン式の暖房をつけて、ふかふかのベッドに……。

 ルルはもう半分というより、ベッドに入る前からかなり寝ていた。


「きゅい……」

「おやすみ、ルル」


 ルルから寝息が聞こえてくる。

 雨粒が窓に当たる音がする。


 エミリアの隣でフォードも目を閉じていた。


「お母さん、今日は楽しかった」

「良かったわ」

「……お母さんも楽しかった?」

「もちろんよ」


 フォードは鋭い。


 正直、元夫の家の時とは比べ物にならないほど、今日は楽しかった。


 ロダンがいて、セリスがいて。

 一緒に祝ってくれるのが嬉しい。


 それにフォードもルルも心から喜んでくれたから。


「明日はペンを使いたいな〜。どんなふうに書けるんだろ……」


 フォードは読書が大好きだけれど、何かを書くのも思ったより好きなのかも?


 にまにましながら、フォードもルルを抱いて眠りに落ちる。


「ふふっ……」


 ほわほわで幸せそうな子どもたち。エミリアもフォードの髪とルルのお腹を撫でながら、目を閉じた。





 フォードの誕生日から数日後。

 イセルナーレ魔術大学は期末試験の期間に入る。


 エミリアも準備にてんてこ舞いになったものの、試験内容にもオッケーが出て……その日、エミリアはいつも以上に気合を入れて、大学へ向かった。


 時刻はまだ朝の7時半。普段からするとかなりの早出である。


(これも試験だからよね……っ!)


 まだ学生が来る時間ではないが、構内にはたくさんの人がいる。


 教職員と警備員だ。


 この期間は学生がどっと集まる。

 混乱を避けるために、この両者は増員され、試験期間を乗り切らなければならない。


 実際、この期間の事件は数多い。


(……ウォリスでも試験期間は皆、気が立っていたしね)


 そう遠くない過去のことをエミリアは思い出す。


 試験内容に納得できず、講師に掴みかかった者。

 成績マウントの取り合いからシームレスに決闘へ移行した者。

 緊張から実技で精霊を大暴走させて、教室を半壊させた者……。


 ごくり……。

 魔術ある世界では教職員にも身の危険が及ぶ。


 教職員も年末の余裕顔ではなく、緊張した面持ちだった。


 その中に学部長のトリスターノを見つける。


 片眼鏡に青い髪。

 いつも威圧感があるオジサマだが、今日はさらに圧があった。


 同僚と話していた彼は輪から離れ、エミリアのほうへやってきた。


「セリドさん、初めての試験ですね」「ええ……思っていたよりも、物々しい雰囲気ですね」


 エミリアは気を引き締め直す。


「試験結果によっては人生も決まりかねない。学生も必死です」

「ですね……」


 なるほど、とエミリアは思った。


 ウォリスの貴族学院では大半の学生には貴族の家がある。


 試験が人生を左右しないわけではないが、大方の人生は変わらない。

 そのような感覚がエミリアにはあった。


 でもここでは――イセルナーレでは違うのだ。


 貴族の力が弱まったこの国では、自分の才覚を自分で示さないといけない。貴族の家であっても。


 だから学生の心構えが違ってくるのは、当たり前であった。

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― 新着の感想 ―
『成績マウントの取り合いからシームレスに決闘へ移行した者』。 ……コレって主人公サンとその相棒サン、巻き添え系で1年に1度は体験済みだったりしますかね、もしかして?
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