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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-2 ふたつの因縁

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295.誕生日会③

「ううーん、美味しい〜……」

「きゅう〜……!」


 頬をもっちもちにさせ、フォードとルルがケーキを堪能している。


 セリスも幸せな表情を浮かべながら、サーモンのカルパッチョを取り皿に分けて、口に放り込む。


「オードブルもありますからね。ううん、酸味と脂がまた……」

「きゅい!」


 味の濃いケーキは食べ続けると舌が麻痺してくる。


 適度に食べるものを変えたほうがいいのは、その通り。


「ハムとチーズもあるよー、僕はハムからにしようかなー?」


 フォードとルルがオードブルからハムを取り分け、口に運ぶ。


 エミリアも子どもたちにならい、ハムをもぐもぐ……。


 アンドリア産のハムは力強く塩気がある。だが、塩気は表面だけ。

 噛むほどに熟成された肉の旨味が染み出て、口内を刺激する。


 この塩気が甘いケーキと対照になって、新鮮な心地を運んでくれる。


 さらに合わせるのはレモネードだ。


 今日はフォードが主役なので、アルコールは控えて……炭酸飲料で流し込む。


「んふー……」


 贅沢な晩餐。

 甘味を基盤にしてオードブルで適宜味を変え、レモネードを堪能する。


「きゅい」


 ルルがフォークでチーズをつまむ。

 水牛のチーズは濃すぎず、間に食べるものとしてぴったりだ。


「ハムと一緒に食べるといいの?」

「きゅ!」


 食べ続けるフォードとルルにロダンが優しい眼差しを向ける。


「ふむ……良い気分だ」

「まだオードブルはあるし、好きなだけ食べてね」

「君もな」


 ロダンの所作は優雅で、見惚れるくらいだ。


 彼の手は止まらず、オードブルもケーキも気に入ってくれたのだとわかる。


「ラ・セラリウムのこのケーキは驚くべきものだな。職人が来て作ったとか」

「ええ、そんな機会はめったにないみたいで。まぁ、相応のお値段ではあったけど……」


 この大きめのケーキで1万ナーレ。

 日本円にして2万円のケーキである。


 前世ならちょっとどころではなく手が届かないが……ギルドの仕事のおかけだ。


「俺からもプレゼントがある」

「えっ? なになに?」

「万年筆だ」


 ロダンが黒箱を取り出す。


 この世界では万年筆はまだまだ高級品である……。

 エミリアが生まれてから本格的な特許と製造が始まったくらいだ。


「あっ! ペンだ!」

「これで色々と書いてみるといい」

「うんっ! ありがとうー!」


 読書好きなフォードに読み書きを教えるのに、ぴったりだろう。


 で、セリスは小さめのクッションを取り出した。


「私からはふっかふかのクッションです……! どうぞ、お昼寝のおともに!」

「きゅいー!」


 自身の身体より少し大きい(ちゃんと測った)、濃い藍色のクッションをルルが抱きしめる。


 家にあるクッションは大きかったりなので、これはほぼルル専用クッションになる予定だ。


 ぽふぽふぽふ。

 ルルがクッションの感触を確かめて、頭をぐりぐりと押し付ける。


 どうやら気に入ったらしい。


「よかったね、ルル」

「きゅい〜〜」


 あとは皆で大いに食べて、飲んだ。

 ノンアルコールだけど。


「ふぃー……食べたー……」

「きゅぅー……」


 フォードとルルはくっついてごろんと寝ている。


 ほっぺぷにぷににフォードがぽよぽよお腹のルルに……。

 気持ち良さそうだった。


 セリスがパタパタと働き、エミリアにロダンを見送るよう勧める。


「片付けは私のほうでやっておきますので……!」

「い、いいの?」

「はい、どうぞどうぞ。片付けが終わりましたら、私もルルちゃんを愛でますので……」


 ルルの右側はフォードが占有している。左側に滑り込むつもりなのだ。


 とはいえ、セリスに気を遣わせてしまった気がする……。

 でも彼女のおかげでロダンといる時間が増えるのも確かだった。


 こうして誕生日会は終わり、エミリアはロダンを見送ることにした。


 ふたりして家から出ると陽は落ちかけており、夜が近付いている。


 もう少しで夜が来て、離れなければ。それが切なくも愛おしい。


ロダンがふっと微笑み、エミリアの胸が高鳴った。

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― 新着の感想 ―
うちに小さい子がいるからプレゼントに悩む親の気持ちはわかります。そしてこれは文化的な違い(うちは英語圏の国で子育てしてます)とか、本人の気質にもよるのでしょうが。 フォーク、万年筆、クッションとかプレ…
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