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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-2 ふたつの因縁

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293/308

293.誕生日会①

 見慣れて歩き慣れた道も、隣に歩く人が違うと大きく違う。


 ロダンのそばにいられるのが、嬉しい。


 そうしてアパートまで戻ると、フォードもロダンを見て顔を輝かせた。


「ロダンお兄ちゃん、こんにちは!」

「こんにちは。お邪魔する」

「きゅーい!」


 ルルも羽をパタパタと振る。


 エミリアは上着を脱いで、セリスに目線を送った。


「さて、ロダンにお茶を用意するわね。ついでに昼食も……」

「私も手伝います……!」


 こうしてセリスとともにエミリアはリビングを脱出し、誕生日会の準備をぱぱぱーっと進める。


 もとい、前日までに当然進めていたわけだが。


 買ってきたものを手早く仕分けて……プレゼントも……。


 リビングからフォードの声が聞こえてくる。


「なんだか大荷物じゃなかった?」

「……そうか?」

「うん、何を買ってきたの?」


 おおっと。

 さすがに普段より多すぎたか。


(ふぉぉ……フォードが疑ってる。ロダン、頼むわよ!)


 今、エミリアとセリスは手が離せない。

 全てロダンに任せるしかない。


「年末は色々な店が休みになるからな。色々と買い込む必要がある」

「へぇー……えっ? お店、休むの?」


 フォードが小首を傾げた。

 

 ウォリスでは屋敷暮らしで、休みという概念がなかった。

 せいぜい屋敷の人が交代で休むくらい……ゼロになることはない。


 そしてこちらに来てからも、イセルナーレは休むという概念は薄そうだった。


 観光都市でもあるイセルナーレの王都では、土日祝日に休む店は少ない。

 平日に休むことが多く、それさえも交代制で最小限にしようとしている。


(深夜はさすがに休みだけれど……)


 日が昇っている間、王都の店の旗やのぼりは常に太陽へ向けられている。


「うむ……年末はかなり静かになる。ほんの数日だがな」

「そうなんだ〜」

「きゅ〜い〜」


 ロダンは上手にフォードの興味をズラしていた。

 さすがに口が達者である。


 そうしてロダンがフォードとルルの話題を引っ張っている間、エミリアたちは誕生日会の準備を整えることができた。


 大きなお皿にお祝いのケーキ。

 さらに別のお皿にオードブルも。


「はい、お誕生おめでとう……!」


 エミリアがケーキの皿を持って登場すると、フォードが目をぱちぱちとさせた。


「うわっ、すっごー! お花だ〜!」


 ラ・セラリウムの生ケーキはその通り、花束を模したケーキだった。


 純白のクリームの上段には、バター多めのチョコクリームの花が咲く。


 濃い白、淡い青、薄い緑……ひとつひとつが手作りの甘味の花。


 こんなのはめったに見られるものじゃない。まさに職人芸のケーキだ。


 エミリアがケーキをテーブルの上に置く。

 ゆったりと食欲をそそる香りがリビングに満ちていった。


「きゅー」


 ルルがすでにうっとりとしている。


 そこにセリスがオードブルの皿を持ってきた。


 サーモンのカルパッチョ、ローストビーフ、ハム、チーズなどなど。


 どれも高級品を揃え、ケーキと一緒に食べても良い……はず。


「かなり豪華ですね。おかわりもありますよ!」


 フォードたちがオードブルを眺めている間に、エミリアがさっとドリンクも取ってくる。


 飲み物は瓶詰めのレモネードだ。甘めのしゅわしゅわ炭酸はオードブルにぴったりである。


「フォード、ルル。プレゼントもあるのよ」

「えっ、どんな?」

「きゅーい?」


 エミリアは後ろから小さな黒の箱を差し出した。


 グロッサムさんから教えてもらった例の物だ。


「どうぞ、開けてみて」

「うんっ! わぁ、綺麗なフォークだ!」


 黒箱の中にエミリアが用意したのは、子ども用の銀フォークだった。

 海鳥の彫刻が施され、ルーンの保護もついている。


 ルーンを刻んだのはロダンだ。

 彼の一流のルーンのおかげで、軽くて丈夫。


 それが2本。フォードとルルの分である。お揃いのフォークだ。


 フォードがフォークを取り、リビングの光にかざす。


「きらきらしてるね」

「きゅい!」


 ルルもフォークを羽に取って、掲げる。

 片目をつむって、ルルは大物グルメ屋感を出していた。


「これで食べていいの?」

「もちろんよ」

「やったぁ。じゃあ、ルル……一緒に食べようー!」

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― 新着の感想 ―
口が達者、て……エミリアさぁん!ソレは褒め言葉なのでございましょうか……ね……?
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