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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-2 ふたつの因縁

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289/308

289.西の大国ラ・セラリウムのケーキ

「しかも、あの子……かなりふわふわで、どことなくぬいぐるみっぽいし……」


 フローラが小首を傾げる。

 それについてはエミリアも異論はない。


 しかも冬期間は「スーパーウィンターモード」(増毛)により、さらにふわふわしていた。


「鳥の意匠の入ったもの以外だと、他にはあまりないかしら。一番はフォークのはず……」

「わかりました、ありがとうございます。助かりました」


 そうなると美味しいもの&フォークが無難だ。

 フォークならルルも使うので、問題ないし……。


「ちなみにウォリスでは何かあるのかしら」

「えー……そうですね……」


 エミリアの実家、セリド公爵家では古代の激ヤバ魔術師の製作したよくわからない杯からよくわからない液体を出して飲みます。たまにですが……。


 とは当然言えず、無難な答えを返す。


「地域によって山や川の幸を取り上げるくらいでしょうか。あまり統一的な品物はなかったように思います」


 イセルナーレでは王家、海、漁の象徴としてフォークが定着している。


 だが、ウォリスにはそのようなものがない。あとあるのは繋がりのある精霊とか……でもそれもローカルだ。


「なるほどね。やっぱり国によって違うのね〜」


 そこでフローラが頷いた。


「じゃあ、そろそろ私は戻るわね。エミリアさん、事務所は年末ギリギリまでやっているから、いつでも来てちょうだい」

「大学の精算分でまた来ますね」


 挨拶を交わし、エミリアは魔術ギルドの事務所から退出した。


 大通りも年末が近くなり、騒がしい。新商品の看板なども増えている。


 耳をすまさなくても、商品を呼ばわる声が聞こえた。


「チキン、年末にチキンはいかがかねー。ただいま予約受付中だよ。東の平原で育った、新品種だよー。美味しくて、大きいよー。秘伝のかまどとタレで美味しく焼き上げたチキンだよー」


 この世界ではチキンも大量飼育が始まっている。なので、庶民でも手が届く値段で美味しく肉を食べることができるわけだ。


 だが、エミリアが注目したのは配られているチラシのほうだった。


『ラ・セラリウ厶共和国から特別に職人を招待し、本場のケーキの販売を行います……。年末を祝うのにふさわしいケーキを、ぜひお見逃しなく』


 うーん、魅力的な文言だ。


 やはりケーキ類はラ・セラリウムが一番良いらしい。


(前にもらったモンブランケーキも美味しかったしね……)


 イセルナーレの西にあるラ・セラリウムは古くから大陸の強国であった。


 四季豊かな北部に位置し、平等と団結をモチーフに王政をも打倒したのだ。


 それからラ・セラリウムは共和制へと移行した。それが今から100年ほど前のこと。


 共和制がもたらした市民参加のパワーは、ラ・セラリウムを華やかな文化の国へ変えた。


 もとから大国であったのが、市民の参入と競争でさらなる発展により、いくつかの分野では世界一の名声を獲得するに至った。


 特にこの50年間、ラ・セラリウムは世界でもっともファッションと菓子に秀でた国となっている。


(……ケーキ……)


 じゅるり。いや、息子の誕生日ではあるのだけれど。


 しかし、甘い物は摂取したい。

 人間だもの……。


(でもこれも情操教育だし。世界最先端のケーキを……)


 エミリアにはひとつ迷いがあった。


 巨大なケーキをひとつ用意するべきか、いくつも色々なケーキを用意するべきか。


 どちらにももちろん価値がある。だが、体験という意味では多品種のケーキのほうが良い気がしてきた。


「輸入ものの場合、来年はどうなるかわからないしね」


 イセルナーレがラ・セラリウムの菓子に追いつくのには、20年以上かかると新聞の記事で読んだ。


 だとしたら、やはりこの機会は逃せない……。


 ということで、エミリアは帰りにラ・セラリウムのケーキを扱っている店へと立ち寄ることにしたのだった。

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― 新着の感想 ―
ありますよねー。お土産に〜とか言いつつも多く買って行くコト……。エミリアさん家はいざ知らず、ウチは自分が買って行く時は3対1で自分優勢です(*´ω`*)
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