283.息子の誕生日が近付いて
ロダンとコルドゥラの会談後。
12月後半になってきた。
そろそろフォードの5歳の誕生日である。
フォードは膝の上にほわほわのルルを乗せている。
「きゅい」
「ふわふわだねー」
「きゅっ!」
ルルの冬毛は加速している――どうやらここからがほわほわ本番かもしれなかった。
(うーん、かなりの毛玉感……)
ルルの毛の海に手を沈めると……かなり沈む。心地良い。
エミリアがフォードの隣でご満悦にルルを撫でていると、フォードがルルのお腹を両腕でふにふにしながら尋ねてきた。
「ペンギンさんって、これが普通なの?」
「そうね。毎年、冬になるとふわふわになるわ」
確か日本のペンギンなどもそのはずだ……。ペンギンは換毛する。
フォードがルルをじーっと見る。
「だいぶ太ったよーな」
「きゅっ!? きゅきゅい!」
「えっ? 太ってない?」
フォードが納得しかねるように小首を傾げた。
「だいぶ増えてるよ……」
「きゅー、きゅっ!」
ルルが羽を振って、太ってませんアピールをする。
まぁ、ボリュームアップした冬毛を見るとそのような感想にもなるだろうか。
「……そうね、ルルのは太っているんじゃないわ。寒い冬は私たちも服を重ねるでしょ? そんな感じなのよ」
「じゃあ、毎年こうなるの?」
「冬にはね。春になると元に戻るわ」
「戻るんだ……。痛かったりしない?」
「きゅー」
全然大丈夫です。
髪を切っても痛くないでしょ?
と、ルルがふんふん頷いている。
「あー……そっかぁ、じゃあ大丈夫なんだね」
「きゅっ……!」
抜けた毛のお掃除はよろしく。
「それくらい、なんてことないわ」
ふわふわルルを愛でるのに比べれば、冬毛の後処理はなんでもない。
ということで、その日の午後――フォードとルルは日課のお昼寝タイムに入った。
ぽむぽむしながら、日差しの差すソファーに寝転がる。
「おやすみー……」
「きゅー」
エミリアはソファーのそばで講義の資料の読み込みだ。
「おやすみなさい、お母さんは仕事してるわね」
「うんー……」
むにゃむにゃとフォードが答える。
息子とルルの寝顔を横に見ながら、エミリアは資料をめくる。
12月末には、大学で半期末のテストがあるのだ。
なのでその準備に追われつつある。
過去の試験内容を確認し、難易度がズレないよう。
あとは……他の講義の試験内容にも抵触しないように。
これが中々の作業だ。
まぁ、もちろん手当はもらえるのだけど。
(イセルナーレの大学の試験は12月、5月……ね。日本の大学とは結構違うかも)
イセルナーレでは9月から12月までが前期。1月は冬季休みだ。
そして2月から5月までが後期。
6、7、8月は夏季休みになる。
フォードから寝息が聞こえてきた頃――ルルがひそかに彼の腕から抜け出そうとしていた。
「きゅ、きゅい……」
どうやら結構がっちりとホールドされているらしい。
フォードを起こさないよう、ルルは身体をたぷたぷ揺らして脱出しようとしている。
「ど、どうしたの……?」
「……きゅい」
詳しい話は後で。らしい。
エミリアは書類を置いて、ルルを掴む……そのまま左右に揺らしながら、すぽっとフォードの抱擁からルルを取り出した。
「きゅー」
「えっ? 内緒の話?」
ルルはそのまま、ぽてぽてとリビングから離れていく。
こんなことは初めてなので、エミリアはドキドキしてきた。
何の用だろうか。
ソファーからかなり離れたところで、ルルが止まる。
そこでルルはぴっと羽を掲げた。
「きゅい?」
フォードの誕生日、何をプレゼントすればいい?
ルルは羽をふにふにさせながら、首を可愛らしく傾げていた。
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