276.セリスとのまとめ
石けんと温水をしっかり使い、ルルを丸洗いする。
「きゅ……っ!」
つやつや、ふもふも。
タオルで拭くと完璧な毛並みになった。
「うーん……いい匂い……」
フォードがルルのぺたぺたな脚を拭きながら、ルルの頭に顔を埋める(ちなみにペンギンなことを差し引いてもルルの脚は結構短い……)
水槽の片付けをしながら、エミリアがルルを見つめる。
「さっぱりしたかしら?」
「きゅー……♪」
ルルも気持ちよさそうだった。
今日は仕事を入れていないので、ゆっくりできる。
遅めの朝食が終わってから、昼近く。
エミリアの家にセリスがやってきた。
「お邪魔しますねー」
「いらっしゃい、セリス」
ちなみにその時、フォードとルルは床でほふく運動をしていた。
フォードはさておき、ルルの運動である……やはり消化を意識しないといけないレベルで肉を食べた気がするのだ。
「きゅー!」
「こんにちは、セリスお姉ちゃん」
リビングに来てルルを見るなり、セリスがエミリアにこそっと耳打ちする。
「……やっぱり一日でややふとましさが……」
「うーん……そうよね……」
昨夜からずっといたエミリアとフォードには感じ取れない変化をセリスは感じ取っていた。
「少しの間、運動を重点的にしないとね……」
「そのほうがいいと思います……」
フォードとルルの運動を横に見ながら、エミリアは昨日のことをセリスに説明した。
これは情報共有の一環だ。
セリスもいつか、このようなイセルナーレの夜会に参加するかもしれない。
その時に今回の情報が役に立つかもなのだ。
「聞くと、ウォリスよりやはり自由なように感じますね」
「そうねー……終わり時間はきっちりしてたけど」
ウォリスではまぁまぁ、長引くのが普通だ。
でもそれを除くと会場の雰囲気は穏やかで、うっとおしくなるほどの礼式はない。
「貴族そのものの違い、ということなのでしょうね」
「ブルース殿下もですか」
前回、エミリアがブルースに会ったのは離婚調停のアレコレ。
あの時は……やり手で切れ者という印象が強かった。
しかし昨夜のブルースはどの招待客にもにこやかに、常に人に囲まれて談笑していたように思う。
「そうね……。ウォリスならもっと王族には慎重に接するところだわ。でもブルース殿下は……最後にルルのお腹をモミモミして去られたし」
「ルルちゃんのお腹を……!? そのセンス、侮れませんね……」
きゅっきゅっとルルはフォードに並んでほふく前進をしている。
ふたりが離れたところで、セリスがこそっと聞いてきた。
「……ところで彼との仲は……?」
「まぁ……ほどほどに……」
心の平静を保ちながら、エミリアは紅茶のグラスを傾ける。
昨日の最後。
ロダンとのダンスは夢と現実の狭間にいるようだった。
鮮やかな音楽と情熱的なダンス。
あんなにダンスに魂が踊ったのは、エミリアにとっても初めてだ。
実際は思い出すと嬉しいやら、恥ずかしいやらだけど。
そして心の深いところで、しっかりと彼との繋がりを確認できたと思う。
セリスが眼鏡をくいっとして、エミリアの顔を覗き込む。
「顔がすごーい、にまにましてますよ」
「……こほん、まぁまぁ……」
エミリアは自分の頬に手を当てて、表情を修正する。危ない危ない。
「でもそうなると、次のステップが来そうですね」
「そうね……」
昨夜、エミリアとロダンの関係は公のものになった。
噂好きはきっと昨夜のことをネタにするだろう。
ウォリスでの経験上、このような話は――尾ひれも背びれもついて出回るのが驚くほど早いものだ。
そしてエミリアもきちんと認識している。
なにせ公爵令嬢だったのだから。
「カーリック家から何が来ても、受けて立つ所存よ」
「おー……! 応援していますね!」
ロダンの両親とエミリアは会ったことがない。
多分、止めるつもりならとっくに何かあってもおかしくなかった。
それがないということは、今のところは黙認ではあるということだ。
(でもちゃんとした関係になるには、彼の父と母に――私がしっかり認めてもらわないとね)
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