275.帰宅して、翌朝
「……本当にルルのことを?」
「わからんが……。しかし興味を引かれたのかもしれん。大抵の相手なら、そもそも呼べばいい立場の御仁だが……ルルは違うからな」
それはそうだ。
ブルースはイセルナーレの王子である。用があれば呼びつければ済む。
しかしルルは精霊ペンギンである。
直接、呼ぶということはできない……だから遠回しに?
その辺りはわからない。
ロダンの出会いの為に、呼んだのかもしれないし。
そしてブルースも帰ったので、エミリアたちも本当に帰る時間になっていた。
「今夜は楽しかったわ。呼んでくれてありがとう」
「うん、ありがとうー! 美味しいものもたくさん食べれたよね?」
「きゅーっ、きゅい!」
またこのような機会があったら、たぷみを蓄えるために参加したい所存です。らしい。
「楽しんでもらえたら何よりだ。俺も……とても楽しかった」
ロダンの笑みは嘘ではない。
彼もエミリアと踊れて、楽しかったのだ。
ロダンの馬車で家まで送ってもらい、エミリアたちは寝支度をして、ベッドに横になった。
うつ伏せのフォードの顔の隣に、うつ伏せのルルがいる。
布団をかけるとルルの分、こんもりと盛り上がるような……。
フォードもルルのこんもり具合に気付いたようだった。
「……うーん」
「きゅ?」
「な、なんでもないよ?」
(そうね、ぽよぽよなのは仕方ないし……)
かくいうエミリアも満腹である。
酔いには余裕があるが。
エミリアはルルを挟んだ、フォードの反対側に――川の字になるようにベッドに入った。
それでもぐーっと腕を伸ばせば、フォードにまで届く。
「きゅ……」
「ふゆー……」
ふたりの身体を感じながら、エミリアもうつ伏せになった。
カーテンの閉まった窓からは夜の様子は伺えない。
それでもカーテンの向こう側には星がある。それを疑いはしない。
(ロダンも屋敷に戻った頃かしら?)
彼も今夜は早く寝るだろう。
光り輝く星を感じながら。
エミリアが目を閉じると、すぐに眠気がやってきた。
夜と星の揺らめき、フォードとルルを感じながら――エミリアは眠りに落ちた。
翌朝、まず洗顔などの次に行ったのがルルの丸洗いだった。
水槽を用意して、ルルを抱きかかえる。
「ふむ……」
エミリアがルルの背中に鼻をくっつけると、炭火の香りがする。
昨日、帰宅してから少し洗った程度では匂いが落ち切らなかった。
「きゅー」
ルルも自分の羽を顔の前に持ってきて、匂いを嗅ぐ。
「ルルも気になるんだよね? すぐ洗うからね〜」
「きゅっ……!」
フォードは石鹸を持って、準備万端だ。
エミリアがルルを水槽にセットしようとすると……むちっと水槽がパンパンになった。
(入るは入るけど……!)
少し余裕があったはずの水槽に、今朝のルルはかなりぎゅうぎゅう……な気がする。
やはり、これは……!
「きゅ?」
「水槽は小さくならないよー」
首を傾げるルルに、フォードがツッコむ。
「あなたが……その、ふとましくなっちゃったみたいね」
「……きゅ!」
ルルがはっとする。
「きゅー……」
「運動したら痩せるけど、運動してから食べた分は足されるだけだから……」
しかも昨日、ルルが食べまくったのは肉の串である。
たぷみへの貢献度は言うまでもない。
「大丈夫、僕も運動するから!」
「きゅー」
こうして水槽にみっちみちになったルルを、エミリアとフォードは丸洗いしていく。
「きゅー♪」
ちょっとこんもりしたルルが泡まみれになって。
ふとめのルルも可愛い……とエミリアは心の中で思いながら。
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