表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-1 宵闇に踊る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

273/308

273.冬と春の狭間

 ロダンの腕と脚が伸び、ダンスに命の息吹が吹き込まれていく。


 いつもは冬の雪みたいに冷たいのに。

 彼の腕から、身体から、瞳から――魂から熱を感じる。


『それは春の訪れのように』


 あれ?

 音が増えた。


 ふっと反転際に楽団を見ると、演奏者が増えている。

 疑問に思っていると、ロダンが耳元で囁いた。


「俺たちの熱に当てられたのかもな」

「かもしれないわね」


 それは誇張ではないように思えた。


 他にダンスをする人たちも目を丸くして、この情熱的なダンスを見ている。


 音が増えると、より激しく精緻に踊りたくなる。


『春の息吹は次々に、雪と土に埋もれた芽を立ち上がらせる』


 星が見つめる中、ロダンと息を合わせて踊るのが本当に楽しい。


 でもこんなダンスは確かに、今でないとできないだろう。


 季節はまだ真冬なのに、心と身体は春を迎えたみたいだった。


 曲調が最高潮に達した瞬間、ふたりは密着して終わった。


 どこからともなく、拍手が巻き起こる。


「素晴らしい!」

「まさか延長戦でこんなダンスをお目にかかれるとは……!」


 はぁはぁと息を少し切らせて、エミリアとロダンは微笑み合う。


「きゅー!」

「凄かったぁ……!」


 テーブルではフォードとルルがぽにぽにと手を叩いてくれていた。


 エミリアは熱い息を吐きながら、ロダンに問う。


「まだ踊れるわよね?」

「ああ、まだ一曲目だ。何曲でも……君となら踊れる」


 次の曲が始まる。


 それはさらに熱を帯びた、激しい曲だった。


 身体を燃やすように――エミリアはロダンと次の曲を踊り始める。

 力尽きるまで、今夜は踊っていたかった。





 それから6曲ほど、全身全霊でダンスして……エミリアは本当に力尽きた。

 こんなにもひとりと踊ったのは初めてだった。


「はふ……」

「お母さん、お疲れ様ー! すっごく綺麗だったぁっ!」

「ありがとう、私も心から踊れたわ……」


 フォードとルルのいるテーブルに戻り、エミリアは椅子に深く腰掛けていた。


 ロダンはドリンクと締めのデザートを探しに行っている。

 彼も疲れているはずだが、現役の軍人と大学講師ではやはり体力が違った。


(貴族学院の頃は、ほとんど差がなかったはずなんだけどな……)


 ロダンとした決闘の数々を思い出す。


 今も23歳ではあるけれど、あの頃は……そう、子どもだった。

 何事にも全力で突っ走れる勢いがあったのだ。


「きゅぅ、きゅー」


 ルルはフォードの膝の上で横になっていた(ルルの縦横の比はほぼ同じでかなり丸め。なので頭と脚の位置で縦か横かを判断する)


「ルルも感動したって。お腹がいっぱいじゃなければ、もっと踊れたのにー……らしいよ」

「ふふっ、ありがとう。また機会があったら踊りましょう?」


 エミリアは手を伸ばしてふかふかのルルお腹を撫でる。


「きゅっ!」


 疲れた時にルルのお腹はとてもよく効く……。


「飲み物を持ってきたぞ」

「ありがとう」


 ロダンが持ってきたのは、爽やかな冷えた紅茶と小さなチョコレートジェラートだった。


 どちらも身体の熱を落ち着かせるのにはうってつけだ。


 甘さを含んだ紅茶を飲むと、喉から癒される。


 ミントを添えたチョコレートは……うーん、カカオの味は抑えめで、濃いめのミントだ。


 まさに全てが終わった後に食べる用のデザートである。


「もう少しダラダラしたら、帰りましょうか」

「うむ、そうだな」


 ロダンもチョコレートジェラートを結構なスピードで食べている。


 私と同じだ。

 音楽は止まず、身体と心の芯から楽しんだ。


 遠くの星空で星がまたたいたように見える――今夜のことは、身体の熱と血潮になって、ずっと忘れないだろう。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
! ペンギンという先入観で縦長だとばかり……! ルル。流石に同比率は危険だよ。レッツダイエット!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ