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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-1 宵闇に踊る

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272/308

272.夢と現実の狭間

 夜会のスタッフと極少数の招待客が残り、リラックスしていた。


 思い思いに残った食材を持ち寄り、適当に食べているようだ。

 楽団の人も食べる人と演奏する人に分かれていたが、音楽は続いていた。


 ロダンに手を取られて、エミリアが席を立つ。


「このほうがいいわね」

「人がいないからか?」

「あなたの踊りを見たら、皆が釘付けになってしまうもの。目立ちすぎるでしょう」

「大げさだな」


 ロダンはふっと笑うが、エミリアは結構真面目だった。


 輝くような銀髪と涼やかな海よりも澄んだ青の瞳。

 ともすると、まぶしすぎる美貌……慣れているエミリアでさえ、ずっとそう思って飽きないのだ。


 そんなロダンが本気のダンスをしたら、卒倒するご令嬢が出るかもしれない。


(……飛躍しているかしら?)


 もしかするとアルコールが結構効いているのかも。

 キャレシーを肴にしてぱかぱか飲むと美味しかったから……。


「お母さんが踊るんだって」

「きゅい」


 ルルも少し寝て、目が覚めたようだ。フォードの膝の上でぽにぽにしている。


「きゅー」

「お飲み物でございますね。ただいまお持ちいたします」


 ルルの欲しいものをすぐさま察知した白髪のおじさまがすっ飛んでいく。


 人がいなくなったおかげで、踊るところからでもフォードとルルはきちんと見えるし、大丈夫だろう。


 ゆったりとした旋律が馴染みのある曲へと変わっていった。

 冬の王の背中だ。


 エミリアとロダンがダンスの場に足を踏み入れた。


 何人かのスタッフが思い思いに踊っている。


「一番最初に踊るのには、ちょうどよい」

「ええ、その通りね」


 ふたりが踊り始めた。


 冬の王の背中は、ある意味では悲恋の曲である。


 時間や別れは容赦なく訪れる。

 それは冬が去るかのように。


 同時に運命は変転するという曲でもある。


 あらゆる悲哀と苦痛は冬が去るかのように、いずれ消えうる。


 最初は舞い散る粉雪のように。


 着飾ったロダンにリードされ、エミリアもステップを踏む。


 静かな大広間で音に彩られて。


 透き通る窓の外には星が散りばめられ、きらめいている。


 ふと見ると、ロダンの瞳の中に月の光がわずかに映り込んでいた。


 それがあまりにも美しく、エミリアは心奪われる。


 夢よりも現実感がないのに、身体は覚えた旋律通りに動く。


 ロダンの手がエミリアを引き込み、触れ合うくらいにまで近寄る。


 そして離れる――雪は溶けて、熱は大気へ混じっていく。


「きゅっ、きゅ……」


 遠くではルルがごくごくとオレンジジュースを飲んでいた。


 フォードは愛おしそうにルルを抱きながら、エミリアとロダンのダンスを見つめている。


「……凄いね」

「きゅー」


 身体が思い出した今なら、多分目を閉じてもこの曲を踊れる。


 やがて曲調がアップテンポに、冬から春へと移りゆく。


 腕を伸ばして、リズムを刻んで。


 冬の冷たさは嘘のように、春の暖かさに心が震える。


 もう白雪は消えてしまっただろうか。

 すでに春の小さな芽は出ただろうか。


 ロダンがエミリアを見つめている。

 

 人のいない今なら、思い切り踊れた。肩がぶつかることも足を踏む心配もないのだから。


 身体の奥の熱が愛おしい。

 もしかすると、意外と踊るのが好きなのかもしれない。


 キレの増すエミリアにロダンが微笑む。


「それが君の本気か」

「みたいね」

「なら、俺も少しテンポを上げよう」

 

 心の内に出す、ということをロダンはほぼしない。


 それはダンスでもそうだ。


 彼のダンスは基本に忠実、ある意味では機械的である。


 それが少しだけ変わった。

 より情熱的に、身体が近寄る。


 互いの熱を感じ取れるほどに。

 儀礼的なダンスではなく、愛する恋人たちが、そうするように。


 ロダンもダンスを少し変えてくれたのだ。

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― 新着の感想 ―
yes,完璧です、ロマンスをありがとうございます。
やっと踊る二人が見れた~~~!これが見たかったんですよ!すてき。
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