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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-1 宵闇に踊る

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266.焼いて焼いて

「ええ、家族が料理に参加したいとかで……」

「招待客が料理に参加するのは、通常はあり得ないことですが……ですが、古くは宮廷料理人が割り込んだ先例も……」

「そんな例が?」


 イヴァンが小首を傾げる。


「それは確か、船上のパーティーでしたが。裁定では……そう、料理とは神に捧げる業のひとつであり、腕に覚えのある者はその業を披露するのが許されるとか……」


 ウォリスにはそのような先例も裁定も無かった気がする。

 イセルナーレには変な……というか、そんな先例まであるのか。


「ちなみに料理をしたいのは、この子なのですが大丈夫でしょうか」


 エミリアは腕の中のルルを軽く持ち上げた。


「きゅっ……っい!」


 普段よりも気合の入った挨拶だ。


 イヴァンが目をしばたたかせて、ルルを見つめる。


「ええと、その精霊ペンギンが……」

「ルルです」

「きゅーい!」


 どうやら話の対象がルルだとは思っていなかったらしい。


 エミリアもそうだと感じたので、今補足したわけだけれど。


「……精霊ペンギンが料理をしてはいけないというルールはそもそもありませんからね」

「精霊ペンギンが料理をしてはいけないというルールがないのでセーフですか」

「禁じられていなければ、イセルナーレではおおむねセーフです」


 イヴァンが肩をすくめる。


「法がしっかりしているということは、法で定められていないことはあえて自由。そうでなければ創造性もなくなりますからね」

「きゅい!」


 ルルがぐっと羽を掲げる。

 どうやらイヴァンの意見に厚く賛成らしい。


 いや、料理をしたいだけとも……。


 しかしこれもマナー的にはオッケーらしく。

 であるならば……。


 エミリアはルルを両腕で、アンドリアのおじさまの前に差し出した。


「どうか、ルルを宜しくお願いいたします」


 おじさまは背をまっすぐ伸ばし、両腕でルルを受け取った。


 ぬいぐるみの受け渡しみたいな。


「こちらこそ、ピットマスター様と働けますことを光栄に思います」

「きゅっ!」


 ということで、ルルはアンドリア焼き物コーナーで働くことになった。


 もちろんタダ働きではないとエミリアは知っている。

 前回のバーベキューでもルルは自分で焼いた一番良いところは自分で食べるのだ。


 網の近くに恭しく置かれたルルは早速、トングと刺し箸を構える。


「きゅー……きゅっ!」


 しゅしゅしゅ……。

 ルルが目をきらーんと光らせ、肉を引き上げる。


 そして代わりに別の肉をセット。


「きゅっ!」


 さらに別の串をひっくり返し……スライド移動しながら焼き物のお世話を始める。


 もちろん並んでいる人は全員、びっくりしていた。


「ペ、ペンギンがどうしてここに?」

「微弱だが魔力がある……精霊ペンギンだろう」

「いや、精霊ペンギンがどうして焼いてるんだ?」

 

 それはそう。

 でもルルは賢くて食べるのが大好きなだけなので……。


 ついでに列に並んで焼き物をゲットする。

 エミリアの後ろにいるイヴァンもたまに首を傾げていた。


 ドキドキしながらエミリアが問う。


「問題がありましたか?」

「まぁ……」


 振り返るとルルはすすーっと優雅なリズムで焼き物を支配していた。


 どことなくそのリズムは楽団の奏でる曲に似ているような。


(そ、その方面でも役に立つの……かしら?)


 ちょっと離れたところから眺めてみても、ルルはノリノリで働いていた。


 時折、串の焼き物をひょいぱくしながら。


「きゅ〜♪」


 ルルはとりあえず満足しているらしい。列の解消も早くなってきている。


 ルルの焼き物スピードはやはり速かった。


「ちゃんと効果は出ているようなので、問題はないかと……」

「ふぅ、それなら良かったわ」

「では私はそろそろこれで。またの機会がございましたら」

「ええ、どうも色々とありがとうございます」


 イヴァンが去り、エミリアはルルと自分の手にある焼き物の皿を交互に眺める。


(……これも良い経験になるということなのかしら)

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― 新着の感想 ―
>なぜペンギンが料理を? それはそう…
『精霊ペンギン』≦『エンターテイナー』。 華麗な舞を見せた後に、コレまた華麗な技を披露する。 ……お~い、誰かルル様の汗拭いて差し上げて〜〜
ペンギン精霊、ルルによるディナーショーの開催! 今夜も華麗なステップを踏みつつ手早く華麗にお肉を焼きます♪ ただし…時々ルルのお腹に消えるお肉もありますのでご了承くださいませ             …
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