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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-1 宵闇に踊る

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258.料理のテーブルへ

 降り続く雪のように途切れなく挨拶の人が続く。

 そこでエミリアはふと気が付いた。


(懸念していたより私への視線がないわね……)


 自分が美しいとか、そんなわけではなく――ウォリス人の元公爵令嬢にして子連れ。


 これがウォリスなら、多分かなり奇異の目を向けられると思うのだが。


 正直、もっと侮蔑的なこともあるかと予想していただけに……。そんなことは全然ない。

 拍子抜けなほどだ。


 人が途切れた時に、エミリアはそのことをロダンに聞いてみる。


「……それを言うなら、俺が来ることも相当珍しい」

「あー……」


 つまりロダンもレア枠ということか。


 それを自覚していながらロダンは夜会を嫌がっていたので、アレではあるが。


 まぁ、彼の複雑な出自を考えれば、貴族の付き合いの最たる夜会に出ないのは理解できる。


「それに君へ喧嘩を売るような人間はいないだろう」

「それって、どーいう意味?」

「…………」


 とぼけてみるエミリアにロダンが整った眉を寄せる。


 ……すごく何か言いたげだった。


 いや、もちろんガネットのことを指しているのだとわかる。


 エミリアは大学講師になるや、いきなり決闘で新入生をボコしたのだ。


 観客もたくさんいたし、あれを知る人間からしたらエミリアは……挑発するには危険すぎる相手ということになるだろう。


 とはいえ、エミリアにも言い分がある。


(あれはガネットがまず挑発してきたわけで、それをガツンとやるのが最善だと……)


 しかし、世間はエミリアをヤベー奴認定しているのかもしれない。


 ……ブルースからも釘を刺されたし。


「きゅ?」

「な、何でもないわ」


 ルルの瞳は人だかりへ、料理の置かれているテーブルへ向いていた。


「フォード、大丈夫?」

「うん、へーきだよ」


 答えはそうなのだが、フォードは慣れないだろう。

 まだ元気なようではあるけれど……。


(そろそろかしらね)


 フォードが疲れた様子を家族以外に見せるのは、本当に疲れた時だけだ。


 なので、その前にエミリアはロダンに声をかける。


「少し休みましょう」

「うむ、そうだな……。悪いが、精霊を連れているので少し休ませてもらう」


 これは作戦である。


 挨拶に来た人たちも、精霊のことを言われては中断するしかない。


「きゅー」


 実際のところ、疲れているのはフォードでルルではないのだが。


 しかしルルも察したもので調子を合わせてくれる――もとい、休憩にかこつけてご飯タイムを取るつもりであった。


 というわけで近くのテーブルへ近寄って、料理を求める列に並ぶ。


 もちろん列の間も軽い挨拶はあるが、動く列だ。

 本当に軽い挨拶のあと、料理の並ぶテーブルに辿り着く。


 エミリアはロダンから腕をほどき、両腕で優しくルルを抱える。


 赤子を抱きかかえるように。やや顔を傾けてルルから視線を外さないよう。


 ここまでが礼儀作法に含まれる。淑女の持ち方、ルル編であった。


「何が食べたい?」

「きゅー……」


 こちらのテーブルは野菜や魚料理中心だ。

 ルルの瞳がぱぱぱっと動いて……。


「きゅっ!」

「小エビとアンチョビのサラダね」

「ふむ、わかった」


 このレベルの会だと料理人に指示すれば皿に盛り付けてくれる。


 ロダン経由でまず一皿。

 ぷりぷりの小エビの身に、とろっとしたアンチョビ……。


 野菜はみずみずしく、ほんのわずかにパクチーの香りがする。

 あとは薄くスライスされたきゅうりも載っていた。


 小エビとアンチョビはイセルナーレ産で、野菜は他国産なのだろう。

 東方風サラダというやつだ。


「フォードは?」

「酸っぱいのが食べたいかも」


 うーん、我が子ながら渋いチョイスである。


「サーモンのレモンソテーがある。それも頂こう」

「あっ、それ食べたい」


 ではそれもひとつ。

 サラダとは違い、目の前の鉄板で調理されたレモンソテーを皿に盛り付けてもらう。


 出来立ての熱々だ。

 赤身を残しながらも、薄く細長いサーモンの身がソテーされている。


 そして気が付いたのだが、付け合わせに真っ赤なソースの小鉢が載っていた。


 細かな粒と粘度の高いソース……土台はチリペッパーっぽい。


 どうやら今回の会の料理は国際色を追求しているようだった。

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― 新着の感想 ―
つまり、また飲んでやらかし、、、
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