255.王宮の中へ
今回の夜会はロダン経由での参加だ。なので、まぁ……招待状などはロダンのものである。
「きゅぅーきゅー、きゅーきゅー」
フォードの膝の上でルルは左右に揺れながら楽しみにしていた。
「緊張しないの、ルル?」
「きゅっ!」
ルルは夜会をダンスとグルメの場だと心得ている……気がする。
「……ふぅ、そんなに頑張らなくてもいいのかな」
「きゅう……!」
フォードの頬をルルがぽむぽむと撫でる。
実際、フォードは必要なことは頭に全部入っている。
なので肩の力を抜いたほうが絶対いい。
ルルのスタンスくらいでフォードはちょうどいいのかもしれない。
馬車はかなりの速度で王都を駆け抜け、丘に登る。
「おおー……」
遠くから見ることはあっても、中に入るのはフォードにとって初めてだった。
王宮の門には多数の馬車が並び、ひとつひとつ招待客を確認して通している。
「なかなかの混み具合ね」
「王都にいる貴族、名士の大半が出席する見込みだからな」
このどこかにキャレシーがいるかも……とエミリアは少し首を伸ばす。
(大丈夫よね……)
彼女は姉の付き添いなので同行して来れなかった。
ドレス、礼儀作法……王族主催の最高レベルの夜会でも通用するところまでは到達しているはず。
(あとは夜会の会場で見つけたらフォローしてあげないと)
そんなことを考えている間に、門に並ぶ馬車の列が進む。
門衛がロダンの顔を見て、敬礼する。
「これはカーリック伯爵様。お早いご到着で」
「うむ……招待状を確認してくれ」
馬車の窓から招待状を渡すロダン。
門衛は招待状を確認し、手に持った書類に何やら書き込んでいる。
間違いなくウォリスならロダンは顔パスだろうが、イセルナーレではちゃんと確認を行うようだった。
「ええと、お連れ様が……ふたりと……」
「きゅっ!」
フォードにすすっと少し掲げられたルル。
ふにふにと羽で門衛に『客ですよ』アッピールをしている。
「……精霊様、でよろしいのですよね?」
「きゅい!」
ルルがふんふんと頷くのをロダンが補足する。
「ああ、精霊ペンギンだ」
「…………」
門衛は隣の人間にいくらか目配せし、書類に書き込む。
『精霊ペンギン✕1』と書き込まれているのだろうか。
「どうぞ、3番口よりお入りくださいませ」
「ありがとう」
招待状と門衛からの札を受け取り、馬車が進む。
いよいよ馬車が王宮の中へと進む。
夕陽近付く庭を馬車は進み、案内された出入り口へ。
ここは恐らく上級貴族用の出入り口だろう。
馬車から降りるとピシッとした執事が待ち構えていた。
「どうぞ控え室へ」
そのまま豪奢な廊下を案内され、エミリアたちは進む。
白い壁に絵画、品良き花瓶、種々の花……まさに世界の大国の威厳をこれでもかと表に出していた。
「ふぁー……」
フォードは色々と気になるのか、歩きながら壁の両面を見上げる。
ロダンもエミリアもフォードに合わせて、ややゆっくりめに歩く。
やがて一行は個室の控え室に辿り着いた。とはいえ、控え室でやることはあまりない。
すでに着替えてきているし、儀式の開始時間も迫っているからだ。
「最後に服装をチェックして――」
フォードとルルの服装を見て、エミリアも自分の黒のドレスをチェックする。
……特に問題なし。
壁時計を見ると午後4時になっていた。そろそろ開場だ。
王宮の奥のほうから、軽やかな音楽がわずかに聞こえてくる。
楽団の演奏が始まったのだ。
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