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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-1 宵闇に踊る

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235.お悩み相談

 相談に乗ることはやぶさかではない。それも大切な仕事だからだ。


 まして才能あるキャレシーからの相談なら。


 ぜひ乗りたいとエミリアは思う。


「ここだと人が来るかもだし。なんか静かなところ、ない?」


 だが、キャレシーは用心深く講義室での相談を拒否した。

 なので大学の応接室に移動する。


 ここを借りるには教員の許可が必要だし、応接室があるのは静かな区画だった。


 外で騒ぐ学生の声も、かなり小さく聞こえる。


 応接室は威厳よりも優しさに満ちた空間だった。

 淡い緑の壁紙に青々とした観葉植物の鉢植え。


 壁に飾られている小さな絵は、海の中で楽しそうに泳ぐ色とりどりの魚たちの絵だった。


 今のこの世界には、子どもたちの人権や教育学という考えもきちんとある。


 このような部屋で学生を迎えることができるのは、良いことだとエミリアは率直に感じた。


「さっ、どうぞ」

「……うん」


 エミリアが勧めるとキャレシーもソファーに座った。


(彼女が相談してくるなんて、どんな話なのかしら。ちゃんと応えてあげないと……っ!)


 貴族学院時代も、エミリアは先生からの指示で人を率いることが多かった。


 若い貴族にありがちな傲慢や浪費といった問題行動もなく、品行方正。


 座学も実技も抜群で学年首席、実技に至っては教員さえも超える実力。


 非の打ち所がない(決闘は違法ではないので)というのが学院からの評価だ。


 ドキドキしながら座っていると、キャレシーが顔を背けて身体を縮こませる。


「…………」


 どうやら相談に誘っておいて、言い出したくないことらしい。


(これは……もしかして)


 エミリアに直感が働く。

 さっきの家族の話振りからすると、家族関係ではないような気がする。


(悪くなさそうだったものね)

 

 だとしたら、アンドリアに帰った部分か――。


 キャレシーは将来有望だ。この場合の将来は様々な意味を含む。


 仕事、結婚相手など。


 イセルナーレ魔術大学を優秀な成績で卒業できた場合、引く手あまたなのは間違いない。


 様々な意味で。今からでも予約しておこうという動きはあるはずだ。


(…………婚約とか?)


「どんなことでも相談に乗るわよ。これでも色々な経験を経てきているから」

「……先生」


 キャレシーがちらりとエミリアを見る。


 理性では相談すべきだとわかっているが、口に出しづらいことなのだろう。


「納得できないことは、断ったほうがいいわ。自分の人生なんだもの」

「そういうわけにはいかない、かな」


 はぁーっと息を吐くキャレシー。

 重々しい。


 むむむっとエミリアは思う。


「ちょっと逃げられない」

「ど、どんなことなの?」

「……今月末なんだけど、呼ばれて。これがかなり厄介で」

「うん……うん?」

「第4王子様の夜会だって――めちゃくちゃ嫌だ」


 エミリアはそこでひっくり返りそうになった。


(それ! 私も出るんですけど!)


 顔に考えが出ないようにして、エミリアが聞く。


「それは――どういう経緯であなたが出席することになったの?」

「姉貴、アンドリアの警官なんだけど。この前の事件で、相当活躍したみたいで」

「ふんふん」

「で、功労賞とかなんとか。あー……第4王子の夜会って、法務省も連名で。家族の私が呼ばれた……」


 詳しく聞くと、どうやら招待されたのはキャレシーの姉だけらしい。


 ただ、招待はひとりでもパートナーを連れていけるのが普通だ。


 しかし招待された彼女は自分の夫ではなく、キャレシーを指名したのだとか。


「……なんでお姉さんの夫は来ないの?」

「姉貴の旦那さんは三流新聞社の下っ端記者。わかるよね?」


 うわ、とエミリアは思った。


 地方新聞社なら、ゴシップもやっていておかしくない。

 というか、多分貴族のゴシップで稼いでる類か。


 それは――王子様主催の夜会には出たくないだろうな。

 針山の上に登るようなものだ。


「で、姉貴も夜会とかには出たことなくて。親戚の全員が頭をこね回して考えたのが、私を連れ出すこと……だった。イセルナーレ魔術大学の学生なら、見栄えも良いだろうって」

 

 言葉に出してみて、やはり困ったことらしい。

 キャレシーの声のトーンが下がっていく。


 そこでエミリアはキャレシーの手を取った。


「大丈夫よ、任せて!」

「……本当に?」

「私もその夜会、出るから!」

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― 新着の感想 ―
それは…「赤信号、皆で渡れば怖くない」では? 大丈夫?
多分ペンギンが注目されて、他は目立たないかなあ(笑)
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