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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-1 宵闇に踊る

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228.次の講義の仕込み

 フォードとルルの服も近いうちに選ぶとして、エミリアはロダンと別れた。


(まずは私を連れてきて反応を見た、ということなのかしらね)


 レイティアの店がダメなら、多分ロダンはセカンドプランを提示してきたはずだ。


 その必要はなかったけれど。


 ロダンと別れて、エミリアは魔術ギルドへ仕事に向かう。


 工房に顔を出すとグロッサムが一休みをしていた。

 秋の味覚、ぶどうを摘んで食べている。


「すみません、中々工房に顔を出せなくて」

「そんなこと気にするな。職人は求められるところで働けばいいんだ」


 エミリアは今、大学講師をメインに仕事している。


 収入面もあるのだが、イセルナーレの教育制度を肌で知りたい……という現実的な話でもあった。


(フォードのためにも、学校をよく知っておかないとね)


 ウォリス人であるエミリアは、イセルナーレの教育制度を人づてや書物でしか知らない。


 いずれフォードが成長したら専門の教育が必要になるわけだが……ある程度の物差しをエミリアも持っておきたかった。


(コネとかは――期待できそうにないし)


 ウォリスではコネがまかり通っていた。


 貴族位と金があれば、ウォリスではどんな学校にも入ることができる。

 

 なので貴族学院にはとんでもないボンクラ、成績不良が存在した。


(どーやって学院に入ったの? ってのもいたしねー)


 イセルナーレでは貴族の力はそこまで強くない。


 家格と献金額よりも入試の成績が重視され、エミリアの接する範囲の学生は優秀である。

 ちゃんと入試制度が機能しているということだろう。


 グロッサムが眉を吊り上げる。


「悪ガキの相手は大変か?」

「え、ええ――まぁ、それほどでも」


 悪ガキと言われて、エミリアが思い浮かべるのはガネットとキャレシーだ。


 群れの先頭に立とうとするガネット。

 孤高に生きようとするキャレシー。


 どちらも魔術師としては極めて有望である。


 それゆえ教師からしたら、そこそこ厄介な子だろう。


(でも馬鹿正直に決闘しまくっていた私よりは……)


 学院時代、エミリアは講義を真面目に受けていた。校則も破らない。


 だが、あの頃の自分を振り返ると……売られた喧嘩を絶対に買う、しかも鬼のように強い魔術師が問題児ではなかったのかと問われると……。


 ふふりと心の中で過去を笑っておく。あの頃はやはり血気盛んだったのだ。


「今の学生は成長が早いからな。背も伸びやがるし」

「栄養状況が違いますしね」


 グロッサムの子どもの頃に比べれば、食べ物も教育も変わっている。


 50年前に比べれば、背も高くなっているだろう。


「ただ、教科書が良くなってもルーンは実践です。今日来たのは……教材を探すためで」

「ウチにあるのが教材になるのか?」

「教科書通りが嫌な学生もいるので」


 エミリアが臨時講師になって数か月。とりあえずエミリアの任期は春までだ。


 で、エミリアの見るところ学生たちに慣れが出てきてしまっていた。

 それも悪い方面に、である。


 それも仕方ないだろう。

 教科書をなぞり、講義内容自体は例年とほとんど変わらない。


 しかもエミリアの受け持つ講義――ルーンの基礎講座はすぐに効果が出るような講義でもない……。


 なにせルーンの消去と判別である。

 地味だ。大切なのだが、とても地味だ。

 

 これがルーンを刻む講義なら、手に持つ物に残るから励みや意外性もあるだろう。


 でもエミリアの講義にはそれがない。


(他に人気なのは精霊学とか動物学とか戦闘技術とか、ルーンの使用とか……)


 この辺りは実技も試せて、派手な講義も許容される。

 

 それに比べるとエミリアの講義は本当に予定調和の座学が多い。


 例外は初回、エミリアがガネットを決闘で叩きのめしたことくらいか。


「なので、ちょっと刺激を加えようかと。フローラさんにも許可は貰っています」

「ほーん……面白そうじゃねぇか。一体、何を考えているんだ?」

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