220.黒髪に星が輝く
夜、きらきらと星が輝いている。
ロダンとフォードが部屋のお風呂(かなり豪華)に入り、その後にエミリアとルルがお風呂に入った。
「きゅ〜」
泡立つ石鹸でもっこもこになったルル、艷やかな黒髪のフォード。
「じゃあ、そろそろ寝よう〜」
「そうね。そうしましょう」
エミリアの部屋のベッドには枕が追加されている。
フロントから借りてきた枕だ。
(ルルがふたつ使うからね……)
昨夜と同じく、ルルは枕カバーに羽を突っ込み、足の間にも枕をセットする。
しかし今日は問題ない。
枕がひとつ増えたから。
一番体格の大きいロダンを真ん中にして、右側にエミリア、左側にルルとフォードが寝る。
「ふぁあ〜……んんん……」
フォードが大きなあくびをする。
眠気は限界に達しているようだ。
「おやふみー」
「きゅー」
ふたりは寝転がると、すぐに目を閉じて……すーすーと寝入る。
早い。爆速の入眠だった。
エミリアはロダンの隣でその様子を眺めて……ロダンが腕を伸ばしているのに気が付いた。
まさか腕枕……。
「え」
「さすがにその反応は傷つくぞ」
「いや、まさかそうでるとは思ってなくて」
ロダンが不意に視線を外す。
「……いらないのか」
「い、いるよ! いるから……!」
ということでエミリアはもぞもぞと動き、頭の位置を上にする。
(うっわぁ……なんか緊張する〜……)
今朝はやっぱり何かがおかしかったのだ。今は物凄く恥ずかしい。
エミリアは一度ロダンを見上げてから、彼の腕に頭を横たえる。
(……あ)
いつもクールなロダンの耳が、赤くなっていた。
彼も自分と同じだと思って、エミリアはドキドキしてくる。
お酒に頼らないで彼と触れ合うのが、こんなにも胸を熱くさせるだなんて。
「んしょ……」
ロダンの腕はしっかりと頼りがいがある。その腕に頭を横たえると、安心できる。
エミリアのさらさらの黒髪がふわりと広がった。
「こんなに甘えていいの?」
「俺は甘えられるほうが嬉しい」
ストレートな言葉に頬が熱くなる。
ううっ〜と悶えながらエミリアはロダンの瞳をじっと見つめた。
眠気よりも鼓動が勝って、簡単には寝られそうにない。
なのでささやき声で話すことにした。
「今日はありがとうね。ずっと一緒にいてくれて」
「気にするな。俺も楽しかった。君たちと1日ずっといられて……夢のようだった」
「……夢?」
楽しかったのはわかるが、夢のようというのは大げさな気がした。
「カーリック家の親戚で、俺に本を読んでと言える子はいない。俺は構わないし、そうしたいのだが」
「…………」
「立場というのは難しい」
エミリアにはロダンの言わんとしていることがわかった。
本当のところ、ロダンは世話焼きだ。不器用で冷たいように見えるけれど。
騎士団の仕事でも、今回のことでも。
でもそれを表に中々出せないし、周囲の人も彼を遠巻きにしている。
「そうね……。難しいものね」
ロダンの瞳とエミリアの視線が交差する。
愛おしく、熱く、溶ける。
この衝動に任せてしまいたい。
でも、彼にはまさに立ち場がある。
話を聞く限り、ロダンの母はすんなりとエミリアとの関係に頷かないかもしれない。
あるいは……イセルナーレでもっとも伝統と格式あるカーリック家のロダンとウォリス人で離婚歴のある子持ちのエミリア。
(……でも私は)
人が生きるには衝動がいる。
想いなしに人は生きていけない。
「あなたとなら、生きていける」
「エミリア……」
ロダンの顔がエミリアに近寄る。
もう覚悟はできていた。
フォードと一緒に、ロダンを抱えても生きていける。
赤い唇が重なり合う。
すぐにロダンの顔が離れた。
今はこれだけでいい。
これは証だ。
エミリアの背で星がまたたき、月がこうこうと輝いていた。
(*´꒳`* っ )つ三
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