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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-3 モーガンの杯

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194/308

194.荒れるシーズ

 エミリアたちが杯に到達する前日、シーズとソルミはイセルナーレを離れようとしていた。


 シーズは気絶したまま列車へと運ばれ、ウォリスへと送り返された。


 しかし、それにはもちろん一悶着があったわけで……。


 目を覚ますなり、シーズは走る列車の個室の中で感情を爆発させた。


「一体全体、どういうことよ!」


 シーズはギリギリとソルミの襟首を掴んで、締め上げていた。

 苦しさにソルミが顔を歪ませる。


「私に当身を食らわせて、あの女の言いなりになって! しかもこの旅も……あなたが仕組んだことなのね! あなたはどっちの味方なの!?」


 強烈な力でソルミの首元が締まっていく。


 これでは苦しくて答えようがないが、ソルミは黙ってシーズの言うがままにさせていた。


 激したシーズには逆らわないほうがいい。それがソルミの処世術だから。


「あ、あの場でふたりとやり合うのは、賢明じゃないよ」

「答えになっていないわ! ふざけないでっ!」


 シーズがそのままソルミの襟首を掴み、壁へと叩きつける。


 魔術師として鍛えているシーズの腕力は相当なもの。ソルミも容易には振り払えない。


 いや、そんなことをしたら、さらに手が付けられなくなる。


「……殺してやる!」


 血走った目で睨まれ、ソルミは薄れかける意識の中で自嘲した。


(それも悪くないかも。僕の行動はいつも裏目に出てばかりだ。僕が死んでシーズが冷静になってくれるのなら……)


 シーズから暴力を振るわれてもソルミは受け流してきた。


 なぜなら、それが一番だから。

 ソルミさえ我慢すれば嵐は過ぎ去る。


 今、怒りのままに行動するのは最悪だ。

 だったら――死んでも構わない。

 シーズに殺されるなら、それでも良かった。


 ソルミの意識が落ちる直前、列車が急速に減速する。


「なっ、なによ!?」


 まったく考えていなかった慣性力にシーズは体勢を崩し、ソルミへの拘束を緩める。


「まったく、何事……!?」


 シーズはソルミを床に投げ捨てる。

 床に崩れたソルミが身悶えし、息を整えた。


「げほっ、ぐっ、がはっ……」


『急ブレーキをおかけして、申し訳ございません。次の駅の近辺に精霊が現れました。しばらく徐行しながら――』


 シーズは怒りのままに怒鳴ろうとしたが、そこで踏みとどまる。


 車内アナウンスが精霊の到来を告げる。

 列車に影響するほどだから、相応に巨大な精霊だろう。


「こんなところで精霊……?」


 シーズがアナウンスに聞き耳を立てながら、考えを巡らせる。


 そしてややあって、シーズがにやぁっと口角を吊り上げた。


「ねぇ、代理人を通しての財産分与は明日よね?」

「げほっ……あ、ああ……」


 床に這いつくばるソルミがなんとか答える。


「もう品物は代理人が持っているから、あとは向こうに渡るのを待つだけだ……」

「そうね? でも、それはきちんと渡ればの話よね」


 シーズが天井に仰ぎ見る。


「あの女もここに来ている……。そう、もしかして不可抗力で取引が台無しになっても……それは私のせいじゃないわ」

「……シーズ、何を考えているんだ?」


 倒れているソルミの襟首をシーズがもう一度、きつく握った。


「運が回ってきたのよ!」

「正気じゃない……。何をしようと――」


 シーズは血走った目をソルミへと向ける。


「このままじゃ、絶対に済ませないわ!」


 自業自得ながら積み重なった怒り。それらのもはや止めようのない怒りがシーズを支配していた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


おもしろい、続きが読みたいと思って下さった方は、

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