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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-3 モーガンの杯

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185/308

185. 3泊4日の2日目

 3泊4日の旅、その2日目。

 ロダンを見送ったエミリアはベッドにぽてっと倒れ込んだ。


「……なにやってるんだ、私」

「おはよう、お母さん……起きたんじゃないの?」


 目を擦るフォードにエミリアはもぞもぞと顔を向ける。

 

「起きたんだけど、いまさらになってちょっと失敗したなって……」

「きゅい」


 お酒は飲んでも飲まれるな。

 いにしえの時代から、そう言われています。


 ルルの言葉には反論のしようもない。やっぱりどうもおかしかったのだ。


 それからエミリアはシャワーを浴びて気分を一新させ――ついでに今朝のアレコレを記憶から洗い流して、待ち合わせの時間に備えた。


 ルルの目もぱっちぱちである。


(……ちょっと太ましくなったような気がするけど)


 エミリアとフォードの体型は変わっていないが、ルルは……かなり貯め込んでいる気がする。要注意だ。


 用意を済ませ、エミリアたちはエントランスに時間通り集合する。


 当然ながら、すでにロダンは待っていてコーヒーを余裕で飲んでいた。


「改めて、おはよう」

「おはよう、ロダンお兄ちゃん!」

「きゅい!」


 うむとロダンが頷いて、コーヒーを一口飲む。

 なんとなくだが、彼の飲み方的にかなり美味しいコーヒーなのではないかとエミリアは感じた。


「おはよう……ここのコーヒーはどう?」

「文句なく美味いな。水が違う」


 さっき水を飲んだ時にも思ったのだが、やはり合っていたようだ。


「……運んで成立するなら、そうしたいくらいだがな」

「水を? 難しいんじゃないかしら」

「まぁ、そうだろうな。残念だ。せめてここで心置きなく飲んでおくしかない」

 

 残ったコーヒーは少なかったらしく、ぐいっと飲み切ったロダンが立ち上がる。


「……さきほど使いが来て、シャレス殿も来られるそうだ。ただ、そう長時間は無理だということだが」

「それでも来てくれたのね。ありがたいわ」


 周囲にはエミリアたち以外いない。


「で、例の物があるのはどこなの?」

「……地下だ。この塔のな」





 時間通りにエミリアたちはエレベーターに乗り込み、地下1階に向かう。


 地下1階に辿り着いてエレベーターの扉が開くと……湿った空気と魔力の気配を感じた。


 しかも外から光を取り入れる塔の上層に比べ、そもそもが暗い。


「上とはまるで違うわね」


 エミリアのふっと漏らした感想に、闇の中から答えがあった。


「この塔元来の雰囲気はこちらのほうが近い――外の人向けに改装されていないからな」


 姿を現したのはシャレスであった。

 エミリアとロダンが貴族式の礼をとった。


「再びお会いできて光栄です」


 ちょっと遅れてフォードとルルも礼をした。

 ルルは羽をピコピコと掲げただけだったが……。


「こちらが私の子、フォードです。精霊はルルと申します」

「話は聞いている……」


 シャレスがじっとフォードを見た。


 この場に息子を連れてきても良い、というのはシャレスからの提案である。

 そのほうがありがたいのは確かだが、理由がよくわからなかった。


「……なぜ同席を許すか、不思議に思うかね?」

「率直に申し上げれば」

「モーガンの遺産は結局のところ、どれほど残っているかわからぬ。さらに残されたものが、どれほど危険なのかもわからぬ」


 シャレスがエミリアとロダンに目線を移す。


「私では遺産を探すことはできても破壊できない。信頼できる――遺産に心を奪われない後継者が必要なのだ」

「それがフォードですか?」


 シャレスの考えには賛同しても、それがフォードなのはあまりにも気が早すぎはしないだろうか。

 それにフォードに可能かどうかは……。


「もしくは彼の子か、孫かもしれぬ。モーガンの遺産がどれほど長く存在できるか、君も知っているはずだ」

「……そうですね、はい」


 ごくりとエミリアは息を呑んだ。


 嵐の杖も想像を絶するほど長い時間を生き抜いてきたのだった。

 役割を担うのはフォードではないのかもしれない――100年先の人間かもしれない。

 だからこそ信頼できるかもしれない者を同席させるのだ。


 シャレスの覚悟を改めて聞いたエミリアは、地下の奥へと誘われる。

 そこにまさに眠っているはずなのだ。モーガンの次なる遺産が。

【お願い】

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