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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-2 新たなる仕事

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183/308

183.飲んで飲んで

「きゅい」

「ここの人なら、もっと近くで見ても気にならないだろうし……だって」


 確かにここの従業員は極めてレベルが高い。

 実際、ルル以外は全然気づくことはなかった。ロダンさえも気にしなかったくらいである。


「素晴らしきピットマスター様の技を拝見できるとあれば是非もありません。他の従業員にも見せたいほどでございますが……しかし、その前に」


 フロア支配人が指を鳴らすと、仰々しいボトルがワゴンに乗って運ばれてきた。


「ラ・セラリウム産のネレイアスコンテでございます。まずはこちらをお納めください」

「ネレイアスコンテ……!?」

 

 エミリアは目を見開き、ロダンさえも動きがすっと止まった。


 ネレイアスコンテは大陸でも名高い希少な赤ワインだ。

 ボトル1本あたり最低でも30万ナーレ、日本円で60万円は下らない。


 イセルナーレの富裕層でさえ、その珍しさから手に入れることが困難なワインでもある。


 首をわずかに傾けたロダンがひそひそとエミリアに囁く。


「……あのラベルなら45万ナーレはするだろうな」

「ごくっ……」


 飲みたい。

 飲みたい飲みたい飲みたい。


 今のエミリアは本気で思った。

 アルコールについて、これほどの欲求を感じたことはなかったのに。


 ルルの技はそんなに価値があるのだろうか……?


 ロダンも拒絶しているわけではない。エミリアたちの判断に従う姿勢だった。


「い、いいわよね?」

「うむ……」

「フォードは? 気になる?」

「んー? 全然。ルルのこれを見ていたいんだよね! わかるよー!」


 フォードはむしろルルが注目されて嬉しいようである。


 ごくり。エミリアがフロア支配人におずおずと申し出る。


「……じゃ、じゃあ……どうぞ?」

「寛大なる御言葉、誠にありがとうございます」


 ということでウェイターやウェイトレスが入れ替わりながら、ルルの業を観察していく。


 もちろん従業員も一流の者ばかり。

 適切な距離と気配を断ち切る技により、エミリアたちは少しも気にならなかった。


 というより用意されたワインのボトルに夢中になっていた。


 深く、コクのある酸味。

 そこに一片隠された甘さ……口に含むと華やかなダンスホールの中央で光を浴びながら踊っている気分になる。


 しかも飽きない。

 ソムリエが注ぐたび、新しい楽しさが見出だせるワインだ。


 確かにこのワインになら、45万ナーレも納得するしかない。


 焼き物はルルが完璧に仕上げてくれていた。その上、ボーナスの超高級ワインまで。


「はふ……」

「美味しいな、この上なく」


 ロダンさえもかなりのハイペースでボトルを空けていた。

 

「はぁー、お腹いっぱーい……」

「きゅー」

「休んでまた食べればいいって? そうだねー」


 背もたれ付きの長椅子でまったりするフォード。


 エミリアとロダンはその隣で競うようにワインを飲んでいた。


「ロダン、飲むの早くない?」

「……気のせいだ。君こそ無理はしなくていいんだぞ。余ったら俺が飲む」

「なーにー……余らせないわ、こんな素晴らしいワイン!」


 宿泊部屋はすぐ下にある。

 酔ってもフロア支配人がそばにいるし、問題は起きないだろう。


 ということでかつてないほど、エミリアは盛り上がりながらワインを飲みまくったのだった。





「……あー」


 気だるさに身体を支配され、エミリアがベッドの中をもぞもぞとする。


 昨夜は本当に飲んだ。

 酒に強いのも考えものである。飲めてしまうから。


 頭は痛くない。

 ただ、ゆるやかな倦怠感があるだけ。


 大丈夫。このベッドは宿泊部屋のベッドだった。

 ちゃんとエミリアはフォードとルルを連れてこの部屋まで帰ってきたのだ。


 そこまで覚えている。


「ん……?」


 腕の中の硬い感触にエミリアは首を傾げた。


 フォードにしてはあまりに筋肉質。

 ルルならもっと、ふわふわのはず。


 じゃあ、これは……。


(なに、これ?)


 動かない頭を軽く持ち上げて、エミリアが現状を認識する。


「はえ?」


 そこにはロダンが寝ていた。


「きゅいー」

「うーん……」


 ベッドの反対側では、フォードとルルがロダンに抱きついて寝ている。


「……えーと」


 そしてエミリアは肌着姿でロダンに思い切り抱きつきながら、寝ていたのだ。

あっあー……。


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― 新着の感想 ―
( ・∇・)朝チュン? ( ・∇・)朝チュンなの? (  ̄▽ ̄)くっつけ、くっつけ~♪
What's happen? 誰に尋ねる?  ルル(シラフ)  フォード(シラフ)  ロダン(ザル)  自力で思い出す エミリアの選択は?
>そしてエミリアは肌着姿でロダンに思い切り抱きつきながら、寝ていたのだ。 ……高いワイン代でしたね_| ̄|○ il||li 二人とも独身だから問題無いでしょうけど(^_^;)
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