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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-2 新たなる仕事

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160/308

160.中央駅

 3泊4日の旅なので、そこそこの荷物である。

 この世界にはもう旅行用鞄という概念があるが、まだキャリーケースはない……。なので、鞄もそこそこの荷物だった。


 エミリアの指輪を褒めたロダンは、エミリアから手を離して――そのまま彼女の足元にある旅行鞄を持つ。

 ごく自然な仕草で。


「いいの?」

「大した重さじゃない」


 当然、ロダン自身の荷物もあるわけだが……鍛えているロダンは両方の荷物を軽々と運ぶ。


ロダンの瞳が『フォードとルルから目を離さないようにな』と語る。

 少し心が痛むのだが、エミリアにはフォードとルルを見るという仕事があるのも確かだった。


 なので、素直に従うことにする。


 イセルナーレ中央駅は王宮からほど近い、丘の上にある駅だ。

 ここからイセルナーレを始めとして大陸各地に鉄道が走っている。

 

「人が多いねぇー……」

「きゅー」


 エミリアはフォードと手を繋ぎながら駅を歩く。

 人が少なめとはいえ、やはり心配だ。


「3番線だ」


 列車の手配もロダン側で行っているので、それについていく。


 エミリアたちにとってはイセルナーレに来た日以来の駅である。

 それも数か月前の話なので、駅の構造は全然わかってない。


 駅の壁は御影石などを使い、品良くまとめられている。

 あとは絵画や彫刻なども抜かりない――さすがにレプリカだが。

 土産物屋やレストランも併設されている。


「あれ? あそこ、工事してたかしら」


 区画に丸ごと幕がかかり、工事中になっている。

 ウォリスからイセルナーレへ来た日にはこうなっていなかったような。


「改築工事だ。利用客が増えているのでな」


 ロダンが天井を見回す。

 去年、取り付けられたようなきらびやかな魔力灯が輝いている。


「ほぼ毎年、どこかしらを工事している。需要に供給が追いつかん」

「景気が良くていいことじゃない?」

「まぁな、政府は鉄道をさらに伸ばすつもりだ。俺が死ぬ頃には、大陸のどの国へも鉄道で行けるようになるかもな」


 その推測は多分、正しい。

 なにせこの世界から百数十年後くらいが現代の日本になる。

 その時になっても鉄道は新設され、使われているのだから。


 ロダンと駅構内を進むと、周囲の視線が若干気になる。


(ロダン、注目されているなぁ……)


 流れるような銀髪、異性を惹きつけてやまない海色の瞳――ラフな格好だからこそ醸し出される色気。

 剥き出しの魔性ともいえる魅力が非常に目立ってしまう。


 いつもは騎士服が人避けになるのだが、今日はそれもない。

 留学時代と同じだった。


(……良かった、私は魅了されないで)


 なぜだか初対面の時から、エミリアはロダンの魅力を受け付けない。


 これは多分、ロダンの魅力が魔力を含めてのもので、エミリアはそれに対抗できるからだろうと認識していた。


 そんな感じで駅のホームまで行くと、すでに乗り込む特急列車が到着している。

 着飾った赤と黒の高級感ある外装だ。

 列車は今来たばかりのようで、続々と荷物を持った乗客が入っていく。

 

「先頭車両だ」


 ロダンに先導され先頭車両に向かって、エミリアは思わずのけぞった。

 

(レストラン付きの車両じゃない!?)


 どこかの新聞記事でエミリアも見たことがある。


 今年、運行開始されたばかりの超高級車両、スィートクラブ(甘美なる赤蟹)であった。

 車両に赤と黒に紛れて、雄々しい蟹のデザインが埋め込まれている。

 

 確か寝台付きで、5つ星ホテルにも劣らない。

 1泊してしまうと何十万もかかるとか。


 だけど、アンドリアへの旅はそんな大層なものではない――だって。


(……2時間もかからないのに!?)

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― 新着の感想 ―
>なぜだか初対面の時から、エミリアはロダンの魅力を受け付けない。 これは多分、ロダンの魅力が魔力を含めてのもので、エミリアはそれに対抗できるからだろうと認識していた。 いや、ただ単にエミリアが鈍感な…
九州の観光列車の報道を思い出す… あれも数十万だった… 乗ってみたいけど庶民にはなー(  ̄- ̄) さてさて、周りから一行はどう見えるだろう。 子連れ夫婦+αに見える…かな?
「きゅっきゅっきゅ〜♪」"⊂(・人・⊂)))) 訳「早く行こ〜♪」浮かれてるルル↑
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