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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-2 新たなる仕事

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152/308

152.後日談

 夕陽に照らされるイセルナーレ国立魔術大学。


 正門への道をエミリアとフォード(ルルin背中のバッグ)が歩いていた。

 学生はすでに帰っている人も多く、すでに人は少ない。


「ふっふふーん……♪」


 エミリアは上機嫌であった。

 これにはちゃんとした理由がある。


 ガネットとの決闘はボランティアではない。

 講義後の出来事なので、時間外手当がきちんと支払われるのだ。


 さらに教員規則には驚くべきボーナスも存在した。


 その名は決闘手当。

 なんと教員は学生と決闘すると、勝敗に関わらずお金が貰えるのだ!

 

(いわゆる特別指導ってことよね。ラッキー♪)


 時間外手当と決闘手当で合わせて2.5万ナーレ。

 日本円にして5万円ほど。


(毎日、講義後に決闘してもいいくらいよね)


 だからまぁ、10分も時間をかけてガネットに指導したのだ。

 エミリアが本気を出せば15秒で終わった決闘である。


 しかし、さすがのエミリアも鬼ではない。

 お金をもらう以上は教員らしく指導する気はあった。


「お母さん、なんだか楽しそうだね?」

「あ、うん……ちょっと運動してね」


 フォードの後ろにいるルルがふにっと頷く。

 

「きゅい……!」


 『とてもいい、運動でした』

 そんなことをルルが言っている。


「フォードは? 本は楽しかった?」

「うん……! これ、面白かったよ!」


 フォードが手に持った絵本を掲げた。


 表紙はジャングルの中で戦う銛の勇者ヘルスドット。

 大きな花の怪物と向かい合っている。


「今回はねー、ずーっと遠くの森の中での冒険なんだ! モーガンの手下たちと戦うんだよ!」


 もう明らかに舞台がイセルナーレではない。

 イセルナーレにこのようなジャングルはないからだ。

 シリーズ継続のための涙ぐましい努力と言えた。


 とはいえ、フォードは楽しんでいる。

 エミリアはにこにこしながら息子の話を聞いていた。


「そうだ、こんな大きな赤いお花って、本当にあるの?」


 フォードが広げたページには巨大なラフレシアが描いてあった。

 横幅1メートルほどの真っ赤な花弁。

 エミリアも前世の図鑑で見たことがある、ちゃんと同じだ。


「ええ、あるわよ。イセルナーレでは見られないかもだけど……」

「へぇー!! やっぱりあるんだぁ……」

「きゅい!」


 ルルが羽でちょんちょんとラフレシアを指す。


「うーん? どうだろう……。お母さん、ラフレシアの実ってやっぱり大きいの?」

「ラフレシアの実ね……」


 エミリアは前世の記憶を引っ張り出す。

 ラフレシアは寄生植物で、どうやって種が発芽するかもよく分かっていない。

 確か、実は小さかった気がするけれど。


 でもここで即答しなくてもいい気がした。

 帰りがてら、本屋でちょっと大人向けの植物図鑑を買えばいい。


「じゃあ、帰りにちょっと植物の本を買いましょうか?」

「……うん!!」


 多少高くても今日はボーナスがある。

 エミリアはフォードの手を握りながら、帰路を歩くのだった。

 




 その数日後。

 ロダンは自らの屋敷で珍しい客を出迎えていた。


「先生の顔を見られて嬉しいですよ。でも前回、お会いしてから間もない……訪問は嬉しい限りですが」

「ふっ……まぁ、世間話ですよ」


 来賓室のソファーに掛けていたのはトリスターノであった。

 彼は緊張する風でもなく、リラックスしている。


「ここはいい。静かで、虚飾がない」

「私の趣味は先生の趣味ですよ」


 ロダンが最高級のコーヒーを師に勧める。

 

 イセルナーレ国立魔術大学でロダンが学んでいた頃、彼の才能を見守って開花させたのがトリスターノであった。

 それゆえ、ロダンとトリスターノは今も定期的に会っていた。


 しかし今回はその定期外の訪問である。

 こんなことはめったになかった。


 ロダンがわずかに目を細める。


「何か、お困りごとでも?」

「いいえ、本当に大した用ではありません。そんな怖い顔をしなくても大丈夫。謎がひとつ解けたので、その答え合わせに来ただけで」

「……ほう?」

「あなたが留学時代、私にくれた手紙の中で『ウォリスで自分と互角の精霊魔術師と出会った』とあったでしょう」

「よく覚えていますね、もう何年も前のことなのに」


 言いながら、ロダンはコーヒーをすする。

 しかし悪い気はしなかった。


「名前まではなくて、ずっと気になっていたのですが……先日、偶然にも正解を知りましてね。エミリア・セリド嬢でしょう」

「ええ、その通りです。しかし、どのような経緯で?」


 ロダンは言いながら、大体のめどをつけていた。

 イセルナーレ魔術ギルド経由の何かで知ったのだろう。


「先日、彼女が国立魔術大学の臨時講師になりまして」

「ごほっ!」


 いついかなる時も優雅さを欠かさないロダンが、むせた。

 なんとか呼吸を整えると、ロダンが少し前のめりになる。


「彼女が講師……!? 絶対、向いていないと思いますが」

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― 新着の感想 ―
小さい時から拷問じみた特訓を受けてたから、 同格のロダンのときは遠慮がなかったんだろうな
>「彼女が講師……!? 絶対、向いていないと思いますが」 えっ、向いてないの!? 結構上手くやってたと思ったのですが……。 もしかして、昔酷い目に遭わされたのかロダンΣ(゜Д゜)
ああ… 先の新入生君たちと違ってロダンは手加減の必要ない相手だったんで超絶ハードモードだったんですね…w
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