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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-1 秋の日々

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150/308

150.決闘終了

 決闘が終わり、エミリアは秋の日差しを存分に浴びてほわほわなルルを抱え、去っていった。


 残されたのは魔力を使い果たしたガネット。

 限界を迎えた彼を取り巻きの青年たちが介抱する。

 

「水、飲めるかー?」

「こんなになるまでやるなよー……」


 仰向けに変えられたガネットの口元に、水筒が寄せられる。

 正直、首から下が動かせない状態であった。


 もう見物人の大半が帰っている。

 心配する取り巻きたちを見て、ガネットがぽつりとこぼした。


「……悪かった」

「なんでお前が謝るんだよ! 別にいいって……」

「相手が悪かったよ、ありゃ」


 ガネットが短く息を吐いた。

 心臓が痛い。魔力を使いすぎたせいだ。


 そんなガネットたちの元に、キャレシーが近寄っていく。

 いつも通り、退屈そうな様子で。


「……あの臨時講師から伝言」

「あん?」

「『グループ分けの撤回は私が負けた時にします。それまでは指示に従うように。私は家族の夕食を作らなければいけないので帰ります』だってさ。一応、決闘の決着はついていないって見解らしいけど」

「戦えるわけねぇだろうが」


 とことんふざけた女だ、とガネットは思った。


 徹頭徹尾、エミリアは実力を隠して遊んでいたのだ。

 今のままでは何十回やってもエミリアには勝てそうもなかった。


「……俺は動けねぇ。好きにしろって伝えとけ」

「はいはい……」


 キャレシーが面倒そうだが了承したことにガネットは眉を吊り上げた。

 絶対に断られると思ったのに。


 ガネットが群れの獅子なら、キャレシーは孤高の狼だ。

 敷かれた序列なんて知ったこっちゃない同種の人間のはず。


 それが随分と素直な反応だった。

 しかもキャレシーはガネットの前から立ち去らない。

 

 同郷のガネットはキャレシーのことを知っている。

 この女は用がないのに居続けるような奴じゃなかった。


「まだ何かあんのかよ……」

「最後にあんたがやったアレ、なに?」

「…………」


 普段なら答えない質問だが、今は違った。

 自分だけの奥の手でないのを知ってしまったガネットが口を開く。


「秘密のルーンを拳に刻んで発動させただけだ。言っておくがよ、何でもいいってわけじゃない……。俺はアレしかできない」

「ふーん……じゃあ、あの講師がやったのも同じだね。ていうか、アレって奇襲以外の意味ってあるの?」

「あるわけねぇだろうが」


 キャレシーがこきりと首を鳴らした。


 やはり普通に考えれば、ルーンの装具を発現させればいいだけだ。

 

 魔力の消費量と効果は全然見合っていない。

 短時間でさえも莫大な魔力を消耗する――相手の意表を突く以外の用途がないというキャレシーの見立ては合っていた。


 それでも驚異的な技ではある。

 本物の殺し合いの中でなら、抜群の不意打ちだろう。


 しかし戦闘中の昂った精神で発現させ、維持するのは――途方もない鍛練が必要だ。素質があっても10年はかかる気がした。


 それに今までの決闘で、ガネットがあの技を使っているのをキャレシーは見たことがない。それほどまでに奥の手だったはずだ。


「思い出した……」


 ガネットが悔しさをにじませながら呟く。


「セリドって姓だったよな、あの講師。ウォリスのセリド公爵家の出身か……」

「……それがどうかしたの? てか、全然聞いたことがない家名なんだけど」


 キャレシーも歴史の授業や新聞などでそこそこ貴族名は知っている。

 記憶力も良いほうなので、教科書に一度出てくればなんとなく分かるはず。


 しかしセリド公爵家なんて聞いたことさえなかった。


「だろうな。政治に無縁で生粋の魔術師の家系だ。ウォリスでも数百年、表舞台には立ってねぇー」

「そんなのよく覚えてるね」

「300年前の一週間戦争は知ってるだろ?」


 ガネットの言葉にキャレシーが頷く。


 ウォリスとイセルナーレが最後に戦った、と言える戦争だ。

 とはいえ、戦争自体は一週間で終わった。


 局地戦でウォリスは優位に立ったものの、人口で圧倒するイセルナーレに抗戦を断念。イセルナーレ有利の講和が結ばれた戦争だ。


 そもそもの戦争期間が短いうえ、その講和内容も両国を揺るがすレベルの影響はなかったとされる。

 年号と概要だけ覚えればいいレベルの出来事に過ぎない。


 そんなことをなぜ今、ガネットは口にしたのか。

 キャレシーのそんな疑問はすぐに氷解した。


「ウチのご先祖様――クアレーン男爵が一週間戦争で殺されかけたんだよ。当時のセリド公爵家の当主にな」

「…………」

「悪魔のように強かったらしいぜ? イセルナーレの魔術師隊、数十人がたったひとりに敗走したんだってさ。この話はあんま信じてなかったけど、マジかも知れねぇな」

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― 新着の感想 ―
ふぅ。主婦行に忙しい魔王様なのでした。(°∀°)♪ ルルの声がどうしてもチョ○ボの音声で脳内再生されるです。可愛い(*´∀`*) ────── ピンヒールで頭踏みながら高笑いしてくれてもよかったの…
「きゅっ!」(サラバだ!)~~~~(`・ω・´)ゞ
この腕前のエミリアをよくいじめたあげく離婚したな。 子供まで害してたら精霊除けの結界ぶっ潰して領地ごと物理的に消えたんじゃないか
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