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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-1 秋の日々

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148/308

148.決闘の初撃

 乾いた土の決闘場にエミリアが悠然と立ち入る。

 その隣には――やる気に満ちたルルがいた。


「きゅい……!!」


 しゅしゅしゅっ。

 羽でシャドーボクシングをするルル。

 

 あの日のケーキ、昨日の炭水化物、今日のチーズ。

 あとなんだか色々なカロリー……ルルはちょっと運動する気になっていた。


 見学する学生たちが決闘場をぐるりと取り囲んでいる。

 ざっと数百人はいそうだ。


(……思ったより見学者が多いような)


 せいぜい数十人と思っていたけれど――なぜか多い。

 しかも明らかに若くない、教員っぽい人も後ろにいるような気がした。


「準備は良いようだな」


 ガネットが目を怒らせ、決闘場に足を踏み入れる。

 黒のスーツ仕立ての装具を身につけて。


(確かに、かなり着慣れているようね)


 決闘に不慣れな場合、そもそも全身のルーンに気を取られるものだ。

 彼には全く、そんな気配がない。自分のモノにしている。


 ガネットが大股に距離を詰めてくる。


「ルールは?」

「どちらかが降参するまででいいんじゃないかしら」


 見学者がどよめく。


 決闘にも様々なオプションがある。


 一番安全とされているのは拳闘スタイルだ。

 これはその名の通り、足技や組技なしのボクシングに近いルールである。


 対してギブアップのみの決闘ルールは古式ゆかしい、もっとも危険なスタイルだった。それを躊躇なくエミリアが提案したのだ。


 ぎょっとする見学者が多いのも無理はない。


(……貴族学院での決闘はコレだけだったし、他のスタイルはあんまり知らないのよね)


「いいぜ。怪我してもあとでわめくなよ」

「――ええ。ところで、この子を参加させてもいい?」


 エミリアがルルを抱き上げる。

 ルルは抱き上げられながら、しゅしゅしゅっと羽を動かした。


 精霊魔術をほとんど知らないガネットが眉をひそめる。


 魔力のある精霊なら彼も難色を示しただろう。

 だが、目の前の精霊は魔力はほぼゼロ。無害そのもののように感じられた。


「なんだそりゃ……精霊か? 好きにしろよ」

「ありがとう。じゃあ、始めましょうか」

「なんでもアリだからな。こっちも使えるものは使わせてもらうぜ」


 きゅむ。

 エミリアがルルをそっと地面に置く。


 そしてふたりが前に進む。

 決闘は20歩ほどの距離から始めるのが習わしである。


 その距離まで近づき、手を合わせて礼をする。

 これも決闘の作法だが、ガネットもきちんと守った。


 同時に礼をしながら、エミリアは最大限に集中力を高める。

 この時間さえも無駄にしない――決闘の鉄則だ。


 だが、ガネットはまだ臨戦態勢ではない。

 この時間を浪費している。


 お互いに顔を上げた瞬間から、戦いが始まる。


 エミリアとガネットは顔を上げて、お互いを見つめ合った。

 彼がまとうルーンに魔力が満ちていく。


(言うだけはあるな)


 その速度は申し分ない。

 大学に入りたての学生の域を遥かに凌駕する。


 でも遅い。

 エミリアが手をかざす。


「あん?」


 エミリアの精霊魔術に導かれ、ルルがしゅっと高速で移動した。

 ガネットがあっと思った時には、ルルがすでに足元にいた。


「きゅいーーー!!」


 ぱっこーん!

 ルルのアッパーでガネットの身体が宙を舞う。


 見学の者たちが唖然とする。


 ガネットも防御は間に合ったが、踏ん張れなかったのだ。

 そのまま空中で一回転し、ガネットがべしゃりと地面に衝突する。


「ぐはっ、ぐぅぅっ……!」


 なんとか意識を切らないで済んだガネットが歯を剥き、エミリアを見上げる。

 その視線を遮るようにルルがガネットの顔の前に立った。


「……きゅい!」


 このままルルで連打すれば終わりだろう。

 そう思うエミリアだが……彼の性格的にそれでは納得しないと直感していた。


 勝つのが目的なのではない。

 折るのが目的なのだ。


 一撃はいいとして、そこから先は自分でやるべきだ。

 そう判断したエミリアはルルに呼びかける。


「もう大丈夫よ。ごめんなさいだけど、見学しててもらえる?」

「きゅっ!」


 頷いたルルがてっててーと決闘場の隅、芝生の柔らかそうな一角に走っていた。

 そしてそこでルルはごろんと横になる。


 対してガネットはその間に、なんとか立ち上がっていた。

 やはりルルの一撃ではノックアウトしなかったようだ。


「てめぇ……精霊魔術師だったのか」

「さっきまではね」


 エミリアが腰を少し低くして、構えた。


「ここから先はあなたの戦い方に合わせるわ」

きゅい…… (´꒳`*っ )3

(ルルは脂肪が燃えた気になっている!)


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― 新着の感想 ―
ルルかわいー!
>あの日のケーキ、昨日の炭水化物、今日のチーズ。 あとなんだか色々なカロリー……ルルはちょっと運動する気になっていた。 ルル……以前は夏に消費したカロリーを取り戻さなければとか何とか言ってたのに。 …
は〜〜〜も〜〜〜わくわくがとまりませんな
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