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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-1 秋の日々

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136/308

136.誕プレ

「きゅっきゅい、きゅーい♪」

 

 モンブランケーキが切り分けられる。

 それぞれの皿の前にケーキが並べられ……。


 るんるん気分のルルであった。


「では、早速いただきまーす」


 手を合わせて感謝を捧げ、ケーキを食べ始める。


 まずはフォークでさらにケーキをさくっとすくう。

 スポンジ部分はぎゅっと密度が濃い。

 マロンペーストが垂れ下がるも、切れない。


 顔にモンブランを近づけると、芳醇な栗の香りが漂う。

 フォードが目をぱちくりとさせた。


「これって栗なの?」

「ええ――フォード君、もしかして初めてでした?」

「うん、こんな麺みたいなケーキ……初めて食べる!」


 彼の瞳は好奇心がみなぎっていた。


 思えばモンブランはウォリスのケーキには珍しい。

 この世界でこういう、装飾されたケーキはラ・セラリウム共和国が本場だ。


 イセルナーレは国際貿易を重んじるので、入っては来るけれど。

 ウォリスではまだまだ他国発のケーキは普及していない。


「きゅいきゅーい」


 ルルも器用にフォークを構え、さくっとモンブランをすくっていた。

 ……結構大きめな一口の気がするけれど。


 エミリアが気を取り直し、モンブランを口に含む。

 強烈な甘み、それにほのかな渋みが口に広がる。


 甘みはマロンとカボチャペーストだ。

 そこにビターなチョコレートペーストが絡んでいる。


 スポンジ自体も濃厚で、マロンに負けていない。

 それぞれが主張しながらも、ぎりぎりのところで調和している。


 これこそまさに一流のケーキだった。


「はう……」


 思わずエミリアの口からため息が漏れる。

 甘みはどうして人を魅了するのか。


「うわぁ、美味しいね~」

「きゅい! きゅきゅきゅい!」

 

 たぷたぷたぷ。

 口いっぱいにモンブランを頬張ったルルが身体を上下させて頷く。


 隣にいるセリスもエミリアと同じ、ほっこり顔をしていた。


「はぁー……これは想像以上ですね」

「ええ、本当に」


 エミリアが用意していたレモネードに手を伸ばす。

 からっとしたレモネードがこってりした甘みをほどよく遠ざけ、リフレッシュさせてくれる。


「うーん、いいわね」


 このレモネードもセリスのチョイスだ。

 柑橘と生姜の風味がちょっと強めなのがレモネードによく合う。


「きゅい!」


 ルルがすすっとマロングラッセをフォークに刺す。

 次なる獲物を狙っている目だ。


 そこで突然、呼び鈴が鳴った。


「んんっ!?」


 エミリアはレモネードをごくんと飲み込み、玄関に向かう。

 昼の時間に来客とは珍しい。


「はいはーい……」

 

 言って、エミリアが玄関を開ける。

 そこにはロダンが立っていた。


「はえっ!?」

「なんだ、その声は……寝起きか?」

「い、いえ……そうじゃないんだけど」


 見るとロダンは桃色と銀の模様が入った紙袋を持っていた。


「……えっと」

「今日が誕生日だろう。祝いの品だ」

 

 ロダンは普段とまったく変わらず言って、袋をエミリアへ押しつける。


「えっと、ありがとう……」

「中身は高級缶詰だ」

「……缶詰」

「ルルとフォード君にはそのほうがいいだろう。イセルナーレの美味だ」


 エミリアは言外にルルを大きくさせたくない、というロダンの意志を感じた。

 実際、スイーツはもう食べている。


 となると低カロリーで美味しく、保存のきく物のほうが良い。

 とことん合理主義だった。


「あとは入浴剤も入れてある。気分転換にはなるだろう」

「わかった」


 ロダンは形の残るものをプレゼントしてくれたことがない。

 まぁ、それはいいのだけれど。


「じゃあ、俺はこれで」

「うん――忙しいところ、本当にありがとう」

「ああ、誕生日おめでとう」


 ロダンはそのまま玄関から上がらず、エミリアの家から去っていった。

 寂しい気持ちもあったが、仕方ない。


 彼は彼らしく祝ってくれたのだ。


 紙袋はずっしりと重い。

 ケーキに合いそうな缶詰はあるのだろうか……?


 そう考えながら、エミリアはリビングへ戻った。

きゅきゅきゅい! (*´꒳`* っ )つ三


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― 新着の感想 ―
仮にルルが大きくなったとしてルルの意思でエミリアの家に居座った場合はどうなるんだろう 食事を与えたりしたらダメなんだろうけど 精霊に本気だされたら自分の食事を守れずうばいとられちゃいます と、主張した…
 きっとノンオイルの缶詰セット(笑) …まるでルルの誕生日だな(笑)
太らせないためなら、せめてお花にしてあげて(笑)
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