125.キャビア
キャビア。それは海の宝石。
チョウザメ類の魚卵をほぐし、塩漬けしたもの。
前世において、当然だがキャビアは高級品である。
チョウザメの種類によって値段は上下するものの、チョウザメ類はすべてワシントン条約の対象であり、厳しい制限が課せられる。
では、養殖すればいいじゃないか。
その通り、世界に流通するキャビアの90%は養殖だ。
なのに、なぜあんなにキャビアは高価なのだろうか?
それはキャビアが採取できるまで、なんと10年近くチョウザメを生育しなければならないからだ。
(はぁ……お金がかかるわけよね)
ではイセルナーレのキャビア事情はどうだろうか。
実は……イセルナーレのキャビアはそこそこ安いのである。
少なくとも、前世の日本よりはずっとお手軽に手に入った。
もちろん、これが永久に続くかはわからないけれど……。
貴族用のキャビアは目玉が飛び出る値段だそうだが、庶民向けキャビアは――感覚的にはいくら程度だ。
1食がっつり食べると1000ナーレ=2000円くらい。
で、エミリアが今回買ってきたキャビア缶は3000ナーレ。
ちょっとお高めな6000円くらいのキャビアである。
「ウォリスではキャビアは高級品ですからね」
「……そうよね」
チョウザメ類は残念ながらウォリスには生息していない。
なのでキャビアが獲れることはなく、すべてが高級品だ。
さらにイセルナーレはキャビアの輸出を厳格に管理している。
キャビアが作れる国は多くないため、戦略的に稼いでいるのだ。
「実家でもキャビアは晴れの日にちょこんと出るくらいだったわ」
ウォリスにおけるキャビアの値段はイセルナーレの5倍以上。
さすがの上級貴族でも、おいそれとキャビア祭りは開催できない。
「でも今日は一仕事終わったし。セリスさんにもキャビアを食べてもらいたくて」
「エミリアさん……っ!!ご馳走になります!」
セリスが手を合わせて感動してくれる。
実にいいリアクションをしてくれるので、奢り甲斐があるというものだ。
「それで――ど、どどうやって食べるのですか?」
「ちゃんとその辺もリサーチしてあるわよ」
というわけで、イセルナーレの料理本から学んだキャビア料理を作っていく。
家庭でもできるレベルなので、そこまで大変じゃない。
まずは玉ねぎとネギを荒く刻む。
そして卵を割って、胡椒と塩で味付けしてよく混ぜる。
湯せんをしながらさらにまぜまぜ……。
「なめらかになってきましたね」
「この火加減が重要らしくて、うん……もういいかな?」
ムース状になったら引き上げて、生クリームを投入する。
黄色いマヨネーズみたいになってきた。
最後に刻んだ玉ねぎとネギを加え、こねこね……。
そしてお皿に盛り付け、上部にキャビアをトッピング。
「よし、これで完成よ!」
卵のムースとキャビアだ。
で、他にも色々と惣菜を用意する。
テイクアウトがあるのがイセルナーレのいいところだ。
カニやホタテを並べ、トッピング。
チーズやソースを織り交ぜるだけでこれらは美味しくなる。
で、キャビアを使った料理をもうひとつ。
冷凍済みのサーモンの刺身を叩き、そこにキャビア。
これはシンプルだけどきっと良いはず。
(ふっ、守りに入ってしまったわ)
食事の用意ができると夕方近くになっていた。
テーブルの上では本を読んでいるフォードが、ルルを縦から横にしている。
つまりルルを腹這いにしたのだけれど……。
なぜだか本とルルを見比べ、首を傾げていた。
何か引っかかったことがあるのだろうか。
まぁ、それは後でもいいとして――。
「夕食にしましょう! 今日はいっぱい食べるわよ!」
エミリアのその言葉にもっとも反応したのはルルだった。
羽をしゅっと動かし、振り向く。
早い。ペンギンらしからぬ高速回転だった。
「きゅー!」
その瞳には豪華な夕食の数々、カニやホタテ、キャビアが映り込んでいた。
キャビアと卵は非常に相性が良いのです!
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