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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-3 血によりて

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113/308

113.氷華

 レッサムの隙をロダンは見逃さない。

 氷の刃が左の腕当てを狙う。


「ぐっ……!」

 

 素早く振り抜かれる、ロダンの一撃。

 レッサムは身体への剣撃を避けるため、腕当てを犠牲にせざるを得なかった。


 ロダンの氷の剣が寸分違わず、左の腕当て――そのルーンを強打する。


 その瞬間、凍てつく魔力が剣から腕当てを伝わった。

 腕当てのルーンに氷の魔力が浸透し、覆う。

 

 直後、腕当てから生える左の刃がよじれ、崩れた。

 レッサムの魔力を伝える部分のルーンが麻痺したのだ。


「……!!」

「まず、ひとつ」


 氷の剣にミスリルそのものを傷つける強度はない。

 だが、表面に刻まれたルーンは別だ。


 膨大な魔力で干渉すれば、ルーンは乱れて機能しなくなる。

 即席のルーン無効化術である。


 これはルーン魔術師というよりも精霊魔術師の戦闘術であった。

 

「イセルナーレ最新の装備だぞ、こんなにたやすく……っ」

「生憎だな。騎士は魔術師を殺すためにいる」


 ミスリルの刃と氷の刃が交錯し、()ぜる。

 レッサムは右の刃に集中していた。


 左腕当てのルーンが麻痺したといっても、ほんの数十秒のはず。

 何分間も機能停止に追い込めるはずはない。


 精霊カモメが空中で一回転し、今度は左側からレッサムの背中を狙う。

 今度はレッサムの反応が追いついた。


 あのエミリアという女は、やはり素人だ。

 こんな見え見えの攻撃を迎撃できないレッサムではない。


「二度も喰らうか!」


 右の刃でロダンの剣を防御しつつ、身体をひねって左腕で精霊カモメを撃ち落とす。

 軍用ルーンで強化された今なら、可能だ。


 レッサムの左手首がくねり、精霊カモメの急降下を狙う。


 捉えた――だが、精霊カモメはレッサムの一撃をすり抜ける。

 純粋な魔力の結晶である精霊に触れることができず、レッサムは驚愕する。


「なに!?」


 精霊カモメはそのまま、レッサムの左わき腹に激突する。


「ふっきゅー!」

「がっ……! な、なぜ!?」

「精霊と相対した経験がないのか。精霊を傷つけることは不可能――精霊の攻撃は迎撃できない」

「――ッ!!」


 精霊は通常、どんな人間でも触れられる。

 だが、その真の意味を知る者は少ない。


 精霊に触れるには、精霊の許しが必要なのだ。

 それゆえ、このような戦闘下では精霊は接触する物体を選べる。


 他の物体に重なるように精霊は実体化はできないが、自分を撃ち落とそうとする攻撃をすり抜けることは可能だ。

 今のようにレッサムの拳だけを避け、体当たりするのは精霊魔術の真骨頂である。

 

 レッサムは攻撃を受けながらも、叫ぶ。


「だが、非力だ! こんな精霊ではびくともしない!」


 精霊カモメの魔力自体は大したことがない。

 60メトロ以下の精霊カモメだ。


 いかに精霊魔術の誘導があろうが、ダメージはゼロ。

 衝撃に備えれば問題はない――レッサムはそう判断した。


「それは違う」


 ふたりから離れ、精霊カモメと意識を繋ぐエミリアが呟く。

 精霊魔術の深奥(しんおう)はそんな程度ではない。


 ロダンやレッサムのような軍人でなくても。

 エミリアもウォリスの貴族として、訓練は積んでいる。


『殺せ。ウォリスに敵対する者に容赦するな』


 貴族学院で習って、実戦で使う日が来るとは思っていなかった。

 だが、今は習っていて良かったと思う。


 ロダンを助けることができるから。


『精霊の裁きを』


 レッサムが背中に違和感を覚えた。

 おかしい。精霊カモメに直撃された箇所からルーンが起動できない。 


 膂力を強める、背中のルーンが働かなかった。

 途端に装具の重さがレッサムにのしかかる。


 ロダンと剣戟を繰り広げる、右腕の動きが鈍る。


「まさか……っ」

「強化された精霊に触れられても、ルーンは動かなくなる。これも知らなかったようだな」


 精霊カモメがレッサムの頭上を旋回する。

 マズい、あの精霊カモメの突進を受けるわけには――。


 レッサムのわずかな首の動きで、ロダンは彼の思考を見抜いた。

 後ろに下がろうとしたレッサムを追う形でロダンが剣を振りかぶる。


「――凍てつけ、氷華(ひょうか)


 ロダンが温存していた魔力を炸裂させる。 


 真夏の大気に吹雪が舞う。

 一面に文字通り、氷の華が咲く。

 

 レッサムの視界が純白に染まり、全身を霜と氷が覆う。

 それはほんの数瞬のこと。


 だが、その数瞬で決着はついていた。

 精霊カモメが今度は右の腕当てを狙い、急降下してくる。


 とっさに構えられたレッサムの刃。

 そこに精霊カモメとロダンの剣が交錯する。


 精霊カモメが右の腕当てに突撃し、ロダンの刃がミスリルの刃を横に薙ぐ。

 刃を生み出そうと思っても、精霊の干渉でそれはもはや不可能。


 ミスリルの刃が空高く弾き飛ばされ、レッサムは敗北を悟った。

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― 新着の感想 ―
精霊カモメさんのご褒美を何にするか考えても良いですかね? 勝利確定したかな?
⊂(・ω・*⊂)≡≡「ふっきゅー!」
(エミリアの指示付き)精霊カモメさんが思った以上に強くてビックリですΣ(゜Д゜) 鳴き声は気が抜けそうなのにね(^_^;)
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