表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-3 血によりて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/308

102.告発のルーン

 ロダンの姿を認めたセリスが優雅に席を立つ。


「私、作業に戻っておりますね」

「ごめんなさいね、セリスさん。私もロダンと話し終わったらすぐ行くわ」


 セリスが気を利かして席を外してくれた。

 その辺りの機微はさすがに抜かりない。


 ロダンがエミリアのすぐ隣に席を寄せ、座る。

 

「悪かったな。あまり連絡できなかった」

「あなたも忙しいんだから……そこは理解してる」


 必要なことがあれば、ロダンは絶対に報告してくるはずだ。

 それがないということは、進展もないということ。


(あと爆発事件は……刑事事件だしね)


 結局、あの爆発について続報はない。

 新聞が好きに書いている状態だ。


 いわく爆発物の保管ミスとかライバル会社の工作だとか……。


 ブラックパール船舶は自社のミスではないと公式声明は出したけれど。

 しかし、犯人がいたとして捕まったわけでもない。


「すまん。やはり刑事事件は色々と制約があってな。ただ、進展もあった」

「ふむふむ……」

 

 セリスは数十メートル離れた位置で、船の残骸の前に屈んでいる。

 会話が聞こえる心配はない。


「まずマルテからロンダート男爵に託されたという資料について、クオリッサ夫人は何も知らなかった。爆破事件に絡み、許可を得たうえで男爵家を捜索したが……そこでも何もなしだ」


 ……それは進展なのだろうか?

 エミリアの心の声が聞こえたのか、ロダンが補足する。


「これは新聞にも掲載されていないことだが、沈んだブラックパール号の資料の一部が消えている」

「……っ!」

「ロンダート男爵家と事務所を総ざらいした結果だ。ほぼ間違いない。誰かが資料を持ち去った」

「じゃあ、その持ち去った人間が……?」


 エミリアがごくりと喉を鳴らす。

 その人間がブラックパール船舶の倉庫爆発事件に関わった人間なのだろうか。


「恐らく。目星はついているが、君の知らない人間だ」

「そ、そう……」


 ロダンの瞳の青が濃くなった気がした。

 この雰囲気のロダンに問うても、答えは出ないだろう。


「この事件はまもなく終わるだろう」


 澄んだロダンの声。

 遠くでカモメが鳴いている。


「私のやるべきことは?」

「この船の解体業を継続してくれ。それが願いだ、全員のな」


 ロダンは水平線に目を向けた。

 遥か先でブラックパール船舶の船が航行している。


 いつの間にか、エミリアもブラックパール船舶の船なら見分けられるようになっていた。


「邪魔をした、俺もそろそろブラックパール船舶の事務所に寄らなくては」

「ええ……私も作業を頑張るわ」


 ロダンが立ち上がり、エミリアも続いた。


 足早に去るロダンを見送ったエミリアは、セリスの元に行く。

 彼女は真剣に作業をしているみたいだった。


「ふーむ? ふむむ……」

「待たせたわね、終わったわ」

「んひゃ! ああ……エミリアさんでしたか……」


 セリスが眼鏡をずらしそうな勢いで飛び上がる。


 そんなに驚かせたつもりはないのだが……とエミリアは思った。

 セリスは集中すると周りが見えなくなるのかもしれない。


 エミリアがセリスの屈んだ先に注目する。

 乱雑に歪んだルーンの中に、雰囲気の違うルーン文字があった。


「これは……」

「エミリアさんも気がつきましたか。どうも違う人のルーンのようで」


 セリスのすぐ隣にエミリアは屈み、船体に手を伸ばす。

 彼女が注目したのは小さくて弱いルーン文字だ。


(……船ができたのは40年前だっけ)


 多分、船体のルーンよりもずっと新しい。


 この手をかざしたルーン文字は……マルテとは違う。

 雪のような冷たさ、流麗さがない。書き殴ったようなルーンだ。


「暗号でもないし読めそうね……」


 単にルーンの文字が細かくて、さらに崩れているだけだ。

 エミリアが言って、ルーンに集中力を傾ける。

 

 …………。


 ルーンに刻まれているのは、戸惑いと怒りだった。

 このルーンを刻んだ人はよほど腹が立っていたのだろうか。


 刻印の際に抱いた感情はそのままルーンに残ることがある。


(さて、どんな内容なんだろう?)


 正直、マルテの刻んだルーンではないと判断したエミリアは油断していた。

 どうせ大した内容ではないと思ったのだ。


「えっ……?」

「もう読み取れたんですか?」


 セリスが瞳を輝かせる横で、エミリアの背にぶわっと汗が浮かぶ。

 船体に残されたルーンは予想だにしない内容だった。


『マルテが裏切った! あの女は売国奴だ!』

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
よし消そう! 作業は迅速的確に!
どきどき( ゜Д゜) スルリとサスペンダーじゃなくて、スリルとサスペンス!! 続きが楽しみです!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ